補完代替医療を使用する前には よく考えることが重要
利用前の確認。情報の集め方と注意点
住吉さんが。とくにじっくり読んで欲しいと勧めるのは、活用編の「4.補完代替医療を利用する前に確認すべきこと」と「5.補完代替医療に関する情報の集め方と注意点」という項目だ。
「ここは、補完代替医療を利用するにあたってきちんと考えるべきことが、チェックできるようになっています。一つひとつをていねいにチェックしながら読んでいくといいでしょう。例えば、資料の出典についての確実性といったことは、一般の方々にはなかなか難しい問題でしょう。そういう判断に困るチェック項目は医師に相談して判断してもらうといいと思います」
「4.補完代替医療を利用する前に確認すべきこと」では、「1.あなたが興味ある補完代替医療について、主治医や看護師、薬剤師、栄養士などに次のような相談をしてみましょう」、「2.補完代替医療を始める前にリストを作り、次のようなことを調べましょう」、「3.補完代替医療を行うと決めたら、専門家に次のことを相談してみましょう」、「4.最後に、あなた自身に問いかけてみましょう」といった項目ごとにチェックポイントがある。
「5.補完代替医療に関する情報の集め方と注意点」では、政府・公共機関、ウェブサイト、書籍・雑誌のそれぞれでの情報の集め方についてのチェックポイントが紹介されている。
利用を考えた時期に 繰り返し読んで決める
「多くの患者さんが補完代替医療を利用しようと思うのは、がんの治療後、がんが再発してしまったとき、緩和ケアを考えたときなどです。そのような利用を考えた時期ごとに繰り返しこのチェックポイントを読んでください。そして自分の気持ちを再確認して、主治医などに相談して治療をするかどうか決めるといいでしょう」
そして、医療従事者と患者と家族それぞれが、補完代替医療についての理解を深めることが重要だと住吉さん。
治療は患者さん自身が決めるべき
補完代替医療を試してみるきっかけは、多くの場合、家族や周囲の親しい人からの勧めによる場合が多いという(表2)。
一方、医療従事者は、補完代替医療に対して頭ごなしに否定したり、止めるように勧告したりする傾向にある。
「患者さんは、そんな中で板挟みになっていることがあります。でも治療に関しては、本来、患者さん自身で決めるべきです。家族や周囲の人が無責任なことを言ってはいけません。最初は高価なサプリメントなどを買ってきて勧めますが、2回目以降は買ってくれないことも多いです。そして、勧める理由も知人からの口コミやテレビ・雑誌などの根拠のない、あるいは根拠の薄い情報に基づいています。
ホームページからダウンロードが可能

これらの点を解決する意味でも、同ガイドブックは患者とその家族双方で読んでほしいと住吉さんは強調する。しかし、同冊子を読んでいる人はまだまだ少なく、存在する知らない人が多いのも現状だ。
国立病院機構四国がんセンターのホームページで、「患者・家族総合支援センター」をクリック→「冊子・DVD」をクリックするとダウンロードできるようになっているので、ぜひアクセスしたい。
医療従事者向けのパンフレットも作成
一方、医療従事者、とくにがん治療に携わる医師は、補完代替医療について否定的な見解を持つ人が多いが、まずは患者さんの話に耳を傾けて、メリット、デメリットをきちんと説明する姿勢を持つべきだと住吉さんは言う。
ガイドブックの改訂3版と同時に、医療従事者向けに、「がん補完代替医療(CAM)−診療手引き 補完代替医療の利用について患者に確認しましょう」というパンフレットも作成した。
ここには、「補完代替医療とは?」「補完代替医療の利用実態」「なぜ、患者に確認しなければならないのか?」「いつ、どのように患者に確認すればいいのか?」「参考となる情報源」などがコンパクトにまとめられた手引きとなっている。
「残念ながら、多くの医師は補完代替医療に対して関心が薄いのですが、理解を深めてもらい、がん治療を正しく安全に行っていただきたいのです。医師以外にも、看護師、薬剤師、栄養士などコ・メディカル(がんのチーム医療従事者)の皆さんにも同様に理解を深めてもらい、患者さんとのコミュニケーションに役立ててもらいたいです」
患者とのコミュニケーションが希薄だと、治療において支障を来す場合もある。例えば、主治医に黙って、患者が補完代替医療を利用していることに気づかずに、抗がん薬治療を実施すると、薬の相互作用により、効き目が悪くなったり、副作用が強くなるなどの影響を及ぼしてしまう場合もあるからだ。
信頼度に基づいた情報評価を行う
資料編の中にある「補完代替医療の科学的検証」という項目も、正しく安全ながん治療を受けるためには重要だ。
「例えば、新聞などで、センセーショナルに新しい治療法として記事になっていても、それは動物実験や試験管の中での結果に過ぎないことも多いのです。また、大学医学部の教授が認める治療と言っても、実際に臨床現場で治療に携わっていないことも多いので、そういう意見は信頼度が低いことになります」
住吉さんがそう説明する通り、研究方法の信頼度についてきちんと理解して情報を評価することが重要なのだ。
「その点でいえば、補完代替医療については、残念ながら、がんの予防や治療、副作用軽減について、確実に有効性が証明されているものはありません。ただし、現時点で有効性が証明されていないというだけで、今後、臨床試験が実施され、その有効性が認められる治療が出現する可能性はあります」
さらに、資料編には、アガリクス、プロポリス、AHCC、などについて、現時点での臨床試験の結果が掲載されているので、先の科学的信頼度の度合いと照らし合わせて理解しておくべきだ。
補完代替医療のみは絶対に避ける
今後はさらに様々な治療法について検証がなされることが重要だが、有効性を確実に証明するランダム(無差別)化比較試験は、膨大な費用と時間を費やさなければならず、なかなか実施が困難なのが現状だ。
「現時点で言えることは、補完代替医療については、〝がんを治す〟という点では、明らかにエビデンスがないため、この治療だけに頼るのは絶対に止めて欲しいということです。文字通り、がんの3大治療を補うための治療として、正しい方法で利用するべきだということを肝に銘じてください。その判断を下すにはとても参考になる冊子です」そう住吉さんは結んだ。
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