進行した胆道がんでも、化学療法後に手術ができるケースも!
手術後に再発しないまま 長期生存している人もいる
この人たちが、最初の段階で手術できないと判断された理由は、遠隔臓器への転移が5例、静脈への広範囲の浸潤が2例、胆管への広範囲の浸潤が1例だった。それが、6カ月の化学療法で、少なくともこの間の進行を防ぎ切除可能と判断されたわけである。CT画像は、化学療法でがんが縮小した様子を示している(図3)。

「8例の中の1例ですが、10㎝ほどある大きな肝内胆管がんでした。がんが下大静脈や肝静脈に食い込んでいたのですが、化学療法によってそれ以上の進行は長期間認めず、切除手術が有効な可能性があると判断しました」
この8例はもともとかなり進行していた胆道がんなので、手術は比較的大掛かりなものになったという。平均手術時間は12時間35分、平均出血量は1,436gで、通常の胆道がんの手術より時間がかかり、出血量も多くなっている。
切除した組織の病理検査の結果、1例は切除断面にがんが見つかる断端陽性だったが、7例は陰性だった。つまり、7例は治癒的切除ができていたことになる。
「手術をした後、再発した患者さんもいますし、再発がないままの人もいます。8例の手術後の無再発生存期間(RFS)は平均で21カ月、手術からの生存期間は平均で28カ月となっています」

切除不能と判断された46例を、化学療法後に手術を行ったグループと、化学療法を行ったが手術しなかったグループに分け、治療開始からの累積生存率を比較したデータもまとめられている(図4)。
「手術できなかったグループの生存期間中央値は9.5カ月です。それに比べると、手術できたグループは明らかに生存期間(3年生存率62.5%、5年生存率62.5%)が長いと言えます。また手術できた8例のうち3例は、現在のところ無再発です。この人たちには、治癒の可能性も残されています」
化学療法が効いて 手術できるケースがあることを知って欲しい
この研究で明らかになったのは、��れまで切除不能と言われていた進行胆道がんの患者さんの中には、化学療法を行うことで、手術が可能になる人がいるということである。そして、その人たちに手術を行った場合、手術をしなかった人たちに比べ、より長期の生存が可能になると考えられているのだ。
「症例数が少ないので、はっきりしたことは言えませんが、手術不能とされた進行胆道がんに対する新しい治療戦略を提示できたと考えています。これまでの常識では手術ができず、化学療法しか治療法がなかった人でも、化学療法がよく効いた場合には、手術を行うことによって、生存期間が延びたり、治癒したりする可能性があるということが明らかになったわけです」
切除不能と判断されて化学療法を受けている患者さんの中には、抗がん薬がよく効き、がんが縮小したり、がんの進行が抑えられたりすることがある。しかし、こうした人たちにも、そのまま化学療法を続けていくのが現在の治療の常識なのである。
「化学療法が効いていたら、手術に持ち込むことで、よい結果が得られることがあるということを、化学療法を行う多くの医師に知っておいていただきたいと思います。そういうケースが増えることで、この治療法が認められていく可能性があると考えています」
新しい抗がん薬の登場が期待されている
この治療において、手術できる人の割合をさらに増やすには、化学療法の進歩が期待されるという。
「現在主流となっている化学療法はGC療法ですが、手術に持ち込める人をもっと増やすには、より強力な抗がん薬治療が登場してこないと難しいでしょう。例えば、動脈などにがんが浸潤している症例では、化学療法でもがんが縮小せず、手術に持ち込むことができませんでした」
化学療法が進歩し、切除不能と判断された人の中から、手術可能になる人が増えることを期待したい。切除手術が唯一の根治的治療である以上、手術できる人を増やすことが重要なのである。
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