新たな薬剤の登場で予後は大きく改善! 進行腎がんの薬物療法最前線

監修●高橋俊二 がん研有明病院化学療法部総合腫瘍科部長
取材・文●伊波達也
発行:2017年5月
更新:2017年5月


専門家でも意見が分かれる2次治療の選択肢

通常、1次治療の有効性の評価は、治療開始から約3カ月で判断する。効果がないと判断された場合には2次治療に入るが、昨年(2016年)免疫チェックポイント阻害薬のオプジーボが承認されたことで、どの薬を使うかという点ではまさに議論の最中であり、エビデンス(科学的根拠)として確立されていないのが現状だという。

1次治療でスーテントやヴォトリエントを使用した場合、2次治療ではインライタを考えるが、同じチロシンキナーゼ阻害薬を2次治療として使用することでどれ程の効果があるのか議論が残るところであり、別の治療として免疫チェックポイント阻害薬のオプジーボを使うべきだという考え方も、専門家の間では出ているそうだ。

オプジーボは2次治療以降の患者を対象に、アフィニトールとの比較試験を行ったところ、有意に予後を改善することが証明され、進行腎がんの治療薬として保険承認された。

この試験の対象は、前治療としてチロシンキナーゼ阻害薬をすでに行った人であり、全生存期間(OS)の中央値は、オプジーボ群25.0カ月、アフィニトール群19.6カ月という結果だった。

「現在、悩ましいところは、スーテント、ヴォトリエントでの1次治療で増悪したとき、2次治療としてオプジーボを使用するのか、インライタを使用するのかという点です。スーテントの効果がなくなったとしても、インライタで腫瘍が縮小するという報告がある一方で、基本的にチロシンキナーゼ阻害薬が効かなくなったということで、免疫チェックポイント阻害薬に切り替えるべきだという意見もあり、専門家によっても見解が分かれています」

図5に示したEAU(欧州泌尿器学会議)のガイドラインでは、1次治療としてスーテント、ヴォトリエントを使用した場合、2次治療では、予後改善が期待されるとして、まずはオプジーボを使用することが推奨されている(図に示されているカボザンチニブは日本では未承認)。予後改善には至らないものの次の選択肢としてインライタが、そして他の治療法が選択できない場合に、アフィニトールがオプションとしてあげられている。

「オプジーボがどういう人に効果があるのか、事前に明らかになれば良いのですが、それもまだはっきりとはわかっていません。非小細胞肺がんの場合、PD-L1の発現率によって免疫チェックポイント阻害薬の効果が期待��きる人とできない人との差がはっきりと表れましたが、腎がんの場合、少なくとも現時点での臨床試験結果からは、まだ明確なことはわかってはいません」

専門家の間でも、オプジーボは2次、3次治療のどちらかで使用すべきだろうということで意見は一致してはいるが、確固とした使用順序については今まさに議論がなされている状況だという。

カボザンチニブ=一般名。国内未承認

図5 腎細胞がん(淡明細胞型)に対するEAUガイドライン

免疫チェックポイント阻害薬と分子標的薬との併用にも期待

分子標的薬として6剤、さらに新たに免疫チェックポイント阻害薬のオプジーボが加わったことで、進行腎がんの予後は今後も改善されることが期待されている。

「サイトカイン療法時代から、分子標的薬の時代に入り、予後は明らかに伸びており、倍くらいになった印象があります。さらに今後、オプジーボを使用することで、予後がどれくらい延びるのか、まさに今そういった状況です」

新たな薬剤の開発も進んでいる。

分子標的薬としては、カボザンチニブや、甲状腺がんの治療薬として承認されているレンビマがアフィニトールとの併用で、現在腎がんに対する適応拡大に向けて臨床試験が行われているところだという。

他にも、新たな免疫チェックポイント阻害薬の開発、さらには免疫チェックポイント阻害薬と分子標的薬の併用など、様々な薬剤との組み合わせによる臨床試験も進行中だ。

「腎がんの領域では、抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体単独だけではなく、分子標的薬との組み合わせで、どこまで治療効果があるのかが注目されており、現在様々な臨床試験が進行中です。1次治療、さらには手術と組み合わせて行う補助化学療法に対する臨床試験も行われていますので、進行腎がんはもちろんのこと、腎がんの薬物療法全体が、さらに進化を遂げていき、患者さんの福音になると考えています」

レンビマ=一般名レンバチニブ

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