免疫チェックポイント阻害薬が薬物療法に変革をもたらした! 食道がん、キイトルーダが1次治療に加わる見込み
術後補助療法にもオプジーボ?!
ここからは、手術可能な場合の術前化学療法、そして術後補助療法としての薬物療法について見ていこう。
術後補助療法としては、現在、化学療法が行われているが、ここにも免疫チェックポイント阻害薬が登場する見通し。第Ⅲ相試験CHECKMATE-577の結果を受けて、現在、術後のオプジーボ1年間投与が申請されている。
ただし、CHECKMATE-577は海外がメインの臨床試験で、そもそもの治療計画が「術前化学放射線療法」を行った上で手術、その後、がんが消えてなくなっていない人に対して術後補助療法としてオプジーボ投与というものだった。ところが、日本で術前の標準治療とされているのは「術前化学療法」であり、化学放射線治療はあまり行われていない。現在、日本ではCHECKMATE-577の結果を受けて術後のオプジーボ投与が申請されているものの、その点がどう判断されるかがわからないという。
「これまでは臨床試験での治療計画に合わせて承認されることがほとんどなので、今回の申請結果によっては、今後、日本でも術前化学療法でなく術前化学放射線療法へシフトする可能性もあるでしょう。現時点では、術後のオプジーボ投与に際して術前化学療法でのエビデンス(科学的根拠)はないので、もし日本が現状の術前化学療法のままならば、追加の試験が必要になるかもしれません」と加藤さんは指摘した。いずれにせよ、どのような承認の形になるかが注目だ。
食道がん、薬物療法の進化は止まらない
オプジーボの術後補助療法としての承認方法によっては術前療法にも変化があるかもしれないが、それを見越してか、すでに術前療法として化学療法がよいのか、放射線と抗がん薬の併用療法(化学放射線療法)がよいのかを比較する第Ⅲ相試験JCOG1109が行われている。化学療法については、現在の標準治療であるCF療法と、CF療法にタキソテール(一般名ドセタキセル)を加えたDCF療法も比較対象になっているので、CF療法、DCF療法、そしてCF療法+放射線治療の3療法を対象とした比較試験だ。
「全生存期間を見る結果が今年の末ごろに出る予定なので、その結果と、先のCHECKMATE-577の承認結果を併せて検討した上で、今後、術後補助療法にオプジーボが入るかどうか、そして、入るとしたら術前療法は何を標準治療とするかが決まることになるでしょう」と加藤さんは語った。
この30年間の停滞を取り戻すようなスピードで進展し続ける食道がんの薬物療法。現在申請中、もしくは今後申請される見込みの薬剤が承認されたら、食道がんの薬物療法はこれまでにない大きな変化を遂げるだろう。それは再発・進行の薬物療法だけでなく、手術を行う際の術前療法、術後療法に至るまで、すべての薬物療法における進化になる(図3)。

難治とされてきた食道がん治療に今、光が射していることは間違いない。免疫チェックポイント阻害薬での治療(免疫療法)という確かな手応えが、今後、多くの患者さんに届くことを願ってやまない。
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