分子標的薬と免疫療法薬との併用療法が高い効果 進行腎細胞がんの1次治療に新しい複合免疫療法が登場
新しい2つの複合免疫療法
進行腎細胞がんの1次治療として、新たに次のような2種類の複合免疫療法が登場してきた。
・オプジーボ(ICI)+カボメティクス(一般名カボザンチニブ)(TKI)併用療法
・キイトルーダ(ICI)+レンビマ(同レンバチニブ)併用療法
「最近になって2つの第Ⅲ相試験の結果が出たのですが、どちらも従来の複合免疫療法の成績を超えるような結果でした。来年にはこの2つの併用療法が加わり、進行腎細胞がんの1次治療には5種類の複合免疫療法がそろうことになりそうです」(植村さん)
2つの第Ⅲ相試験の結果を見てみよう。
「CheckMate-9ER試験」は、<オプジーボ+カボメティクス>と<スーテント単剤>の比較試験である。PFSは、併用療法群が17.0カ月、スーテント群が8.3カ月で、はっきりした差がついている。
「KEYNOTE-581試験」(CLEAR試験)は、A群<キイトルーダ+レンビマ>、B群<キイトルーダ+アフィニトール(一般名エベロリムス)>、C群<スーテント単剤>の3群による比較試験である。A群とC群、およびB群とC群の比較が行われているが、ここではA群とC群に絞って紹介する。PFSは、A群が23.9カ月、C群が9.2カ月で大きな差がついた。また、注目を集めたのはA群の完全奏効率で、16.1%という極めて高い値だった(表5、6)。

「この2つの第Ⅲ相試験の結果は、現在使われている<IO+インライタ>の複合免疫療法の成績を凌駕していると言っていいでしょう。ただ、数字だけ単純に比較するのは危険です。数字だけ見れば、<キイトルーダ+レンビマ>がすごくいいわけですが、患者背景は試験によって異なっているので、単純に比べることはできません」(植村さん)
<オプジーボ+カボメテックス>の併用療法では、カボメテックスの有害事象を適切にコントロールする必要があるという。そこがポイントになりそうだ。
「カボメテックスは進行腎細胞がんの治療に単剤でも使われる薬ですが、その場合の用量は1日60㎎となっています。私の経験では、ほとんどの患者さんで有害事象が出るので、日本人に60㎎を維持するのは困難ではないかと思います。下痢などの有害事象によって休薬や減量する必要があるのですが、うまくマネジメントできるかがポイントとなります。オプジーボ+カボメティクス併用療法の場合の用量は1日40㎎となっていますが、これでも減量する必要があると思いま��」
非常に効果の高い複合免疫療法だが、その効果を引き出すためには、減量を含めた適切な有害事象対策が必要となるようだ。有害事象をうまくマネジメントできるのであれば、臨床試験の結果を見る限り、非常に魅力的な治療法であることは間違いない。
「<キイトルーダ+レンビマ>に関しては、がんが消えてしまう患者さんが16%もいるということです。こんなに良い結果が出た臨床試験は過去に例がありません。<ヤーボイ+オプジーボ>の完全奏効率も高い(11%)のですが、中・高リスクを対象としていることもあって、ここまでではありません。もし、この16%という完全奏効率が、実臨床でも同じであれば、<キイトルーダ+インライタ>や<バベンチオ+インライタ>といった併用療法より、治療選択の優先順位が高くなるかもしれません」(植村さん)
新しい複合免疫療法についてはまだ第Ⅲ相試験の結果が出た段階だが、その結果からすれば、来年には承認されて実臨床で使用できるようになっている可能性が高い。5種類になった複合免疫療法が、どのように整理され、どのように使い分けられるのかは、実際に使われるようになってから、ということになりそうである。
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