悪性黒色腫、乳がん、卵巣がんなどで最新知見発表 遺伝子の解明により、患者により適切な治療薬が増える

取材・文:中西美荷 医学ライター
発行:2011年10月
更新:2013年9月


日本のがん患者へメッセージ

個別化のアプローチでより安全で効果的な治療が実現

ジョージ・スレッジさん

2010~2011年会長のジョージ・スレッジさん

ASCOの第47回年次集会のテーマ「患者、経路、進歩」。今回、どのような思いをこのテーマに込めたのか──。2010~2011年会長のジョージ・スレッジさんに話をうかがうとともに、日本の患者さんへのメッセージを紹介する。

「がんに携わる医師の組織」として大きな責任を担うASCO

ASCO(米国臨床腫瘍学会)は、日本の医師を含め、120カ国で、がんに携わる医師による、世界でもっとも大きな組織です。世界には、"がん"に焦点を当てた素晴らしい学会はいくつもありますが、なかでもASCOは、「がんに携わる医師の組織として、とくに患者さんに対して大きな責任を担っている」と考えています。これが、今年の学術集会のテーマとして、最初に"患者"という言葉を選んだ理由です。

次の"経路"というのは、がんの増殖や広がりを推進する分子経路を指しますが、それと同時に、患者さんが疾患の進行に立ち向かっていく過程、つまり"臨床的な経路"という意味も持たせたつもりです。

そしてASCOが組織として強力に支援するがん研究の成果が、最後の"進歩"ということになります。

個別化アプローチがより安全で効果的な治療を実現

今年はがん研究への多大な新規投資につながった法令・ナショナルキャンサーアクトが署名されてから40周年に当たるわけですが、この40年間は、腫瘍学において、「がんという疾患は単一の疾患ではなく、それぞれが独特の生物学を有する多くの疾患から成る、多様性に富む疾患である」ということが理解されてきた40年だったと思います。この理解によって、特定の疾患タイプに焦点を当てた新たな治療が、次々と導き出されてきました。

こうした個別化のアプローチは今後、さらに安全で、より効果的な治療の実現につながっていくでしょう。

日本でがんと闘う患者の皆さんへ

まず、この"がん"という疾患と闘ってらっしゃるすべての患者さんに、われわれASCOとして、ご多幸をお祈りします。とくに、ご自身のがんとの闘いに加えて、地震、津波という大きな自然災害に立ち向かっていらっしゃる皆さん、ご幸運を心より���っています。

どうか、あなたの医師、そして科学者たちは、皆さん方がこの疾患と闘う上で、貴重な、そして重要な援軍のような存在だということを心に留めておいてください。

この援軍が皆さん方とともに闘うことによって、がん治療において、今後も絶え間ない進歩が得られることを、私どもASCOは確信しています。


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