25年ぶりに生存率改善。 悪性リンパ腫の抗がん剤投与間隔短縮療法


発行:2005年3月
更新:2013年4月

強くなるはずの毒性が軽減された

――高齢患者さんを対象にした短縮CHOP療法と従来CHOP療法とで、毒性に差はみられましたか。

教授 いいえ。G-CSFを追加することで、投与間隔を短縮すれば強くなるはずの毒性が完全に抑えられました。実際、短縮CHOP療法のほうは全治療期間が18週間ではなく12週間で済むため、患者さんのQOLが改善しました。特に、高齢患者さんにとって、治療期間が長いのは心理的にもうんざりしてしまうようです。

――2週間療法と3週間療法との間に、投与量の減量または治療延期の必要性について差はありましたか?

教授 いいえ。まったく差はありませんでした。これはとても重要なことです。私たちの試験では、投与量は減量しませんでした。白血球数が2500、血小板が10万を下回った場合には、3日おいてもう1度検査し、そのままの用量で投与を続けることができました。

――投与間隔を短縮する抗がん剤治療のほうが、単に投与量を増大させるよりもよい理由は何でしょうか?

教授 個人的な考えですが、がん細胞が急速に増殖しているときに治療間隔を長くあけると、その間に増殖の速いがん細胞が活動する機会を得るため、増殖が再開してしまうのではないかと考えられます。間接的な証拠ですが、血液中の乳酸脱水素酵素であるLDHの値が高い患者さんには、治療間隔を狭めることによって最善の効果がもたらされていることが挙げられます。LDHはがんが急速に増殖していることを示す指標となります。

ドイツでは内科学会ガイドラインに

[図2 予後因子とリスク別の分類]

IPI=International Prognostic Indexの略。国際予後指標
PS(パフォーマンス・ステータス)=全身状態を表し、
0~4の段階に分けて評価される

――投与間隔短縮の抗がん剤治療は、どの中高悪性度リンパ腫の患者さんにも適応になりますか。

教授 高齢患者さんには短縮CHOP療法を新しい標準治療とすべきだという結論に達しています。若年で低リスクの患者さんには従来のCHOP療法にエトポシドという抗がん剤を追加した治療法が適しています。若年で高リスクの患者さんにはまだデータはありません。どの患者さんにもG-CSFを用いたほうがいいでしょう。(図2)

――ドイツでは、中高悪性度リンパ腫の患者さんにこの投与間隔短縮の抗がん剤治療が用いられているのでしょうか?

教授 ドイツでは、先ほどの臨床試験の成績にみな色めき立っています。なにしろ、過去20年以上のなかで初めて生存率の改善をみたわけですから。短縮CHOP療法はすでにドイツ内科学会ガイドライン(German Society for Internal Medicine Guideline)に掲載されており、ほとんどの医療施設で短縮CHOP療法が採用されています。

――2週間療法(短縮CHOP療法)を実施するに当たり、患者さんに説明しておくことはありますか?

教授 患者さんには、3週間療法よりも2週間療法のほうが治療効果の点で好ましく、治療が終わるのも早くなり、G-CSFの投与により副作用も軽減されると伝えています。

――新しい投与間隔短縮療法の利用を検討している日本の医師に対して何かアドバイスがありましたら……。

教授 とにかく、2週間療法(短縮CHOP療法)を実施するときは、正しく行うこと。あとは、G-CSFを必ず投与すること、投与量を減量しないことです。このことが大切です。

日本においても同様の試験が実施されましたが、ドイツのように短縮CHOP療法に優位性は見出されませんでした。このことから日本においては、短縮CHOP療法が標準治療になっていないのが現実です。また抗がん剤の用法・用量もこの投与スケジュールでは保険適応がとれていません。しかし今回のインタビューでわかるように、前回(「知っておきたい抗がん剤治療講座Part1―乳がん術後補助療法編―」)同様、中高悪性度非ホジキンリンパ腫の治療においても、きちんと抗がん剤の投与スケジュールと投与量を守ることが重要であるといえるでしょう。


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