免疫チェックポイント阻害薬の2剤併用療法が登場 肝細胞がんの最新動向と薬物療法最前線

監修●奥坂拓志 国立がん研究センター中央病院肝胆膵内科長
取材・文●柄川昭彦
発行:2024年10月
更新:2024年10月


2つの第1次治療はどのように選択するのですか?

進行肝細胞がんで薬物療法を行うことになった場合、1次治療として2つの選択肢があります。

「どちらの併用療法も、ネクサバール単剤療法に対して有意に生存期間を延ばしたという臨床試験結果が出ています。どのように使い分けたらいいのか、いろいろな意見がありますが、明確な根拠はありません」

現れる副作用に違いがあるので、それによって使い分ける場合もあります。

「テセントリク+アバスチン併用療法には、血管新生阻害薬のアバスチンが加わっているので、出血傾向のある患者さんには使いにくいと言えます。一方、免疫チェックポイント阻害薬を2剤併用するイミフィンジ+イジュド併用療法は、やはり免疫関連有害事象の頻度も程度も強く出るので、そこが問題になる場合があります。どんな副作用が現れるか、なかなか予測がつかないため、テセントリク+アバスチン併用療法のほうが使いやすいという意見もあります」

2次治療に何を使ったらよいかも、明確に示すことができるエビデンス(科学的根拠)はありません。1次治療の2つの選択肢のうち、使わなかったほうを2次治療で使うという方法が考えられます。また、かつて1次治療で使っていたネクサバール単剤あるいはレンビマ単剤を、2次治療以降で使うこともできます。また、かつて2次治療以降に使われていた薬剤もあります。薬がこれだけそろっているので、よく効いた場合には、薬物療法を長期間にわたって続けていくことも可能です。

また、薬物療法がよく効いた場合、肝動脈塞栓術に持ち込んで、完治を目指そうという動きもあります。

「かつてはそのようなことは考えられませんでしたが、薬物療法の効果が高まったことで、そのようなことも考えられるようになってきました。可能性があるのは、がんが肝臓内に止まっているが、数が多くて手術やラジオ波焼灼療法などの対象とならないケースです。薬物療法でがんが大幅に減ったところで、肝動脈塞栓療法を行うことにより、がんがすべて消えた状態になるケースも現れています。肝細胞がんは新たながんが出てくることがあるので、完治と言ってよいか疑問ですが、他のがん種なら完治���言える状態に持ち込めることはあります」

免疫チェックポイント阻害薬が使われるようになったことで、こうしたケースも現れ始めているのです。

肝細胞がんに対する薬物療法の今後は?

新たに承認されるのではと期待されている治療法があります。免疫チェックポイント阻害薬を2剤併用する治療です。抗PD-L1抗体のオプジーボ(一般名ニボルマブ)と、抗CTLA-4抗体のヤーボイ(一般名イピリムマブ)を併用する治療は、臨床試験で生存期間の延長が認められており、近い将来、承認される可能性が高いと考えられています。

「この併用療法は、イミフィンジとイジュドと同じように、PD-L1抗体薬とCTLA-4抗体薬の併用療法です。テセントリクとアバスチンの併用療法を含め、3つの治療法が第1選択となった場合、どのように使い分けるのか、ますます難しいことになりそうです」

薬物療法の新たな方向性としては、進行がんの治療だけでなく、手術後の補助療法として行われるようになる可能性があります。すでに臨床試験が始まっていて、テセントリクとアバスチンの併用療法は、再発を予防する一定の効果があることが示されています。

「承認されるに至っていないのは、再発は抑えたものの、生存期間を改善するところまで行かなかった、ということなのかもしれません。ただ、いずれ手術後の補助療法としても、薬物療法が行われるようになるだろうと考えられています」

さらに、CAR-T療法の臨床試験もすでに始まっているそうです。

「肝細胞がんは日本では減少傾向にありますが、とくに中国には多くの患者さんがいますし、世界的に見れば、すべてのがんの中で肝がんは年間罹患者数が6番目に多いがんで、少しずつ増えています。そうしたこともあって、この分野の研究開発は活性化していると言えます」

新たな治療薬、新たな治療法が登場してくることを期待したい。

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