副作用はこうして乗り切ろう!「抗がん薬治療中の脱毛」
まだない脱毛対策の決定打
さらに、髪の毛が抜けたことによって好奇の目で見られることが何より耐えられない、と多くの患者さんが話されます。脱毛は見た目に明らかなために、がんという病気を推察できてしまうところが、患者さんにとって非常につらいようです。
また、小さいお子さんのいるお母さんは、子どもにがんという病気のことを話していない方が多いため、「脱毛したら子どもがショックを受けるのではないか」と、悩まれます。髪の毛がなくなっていく母親を、子どもがどう思うだろうか……と。脱毛という副作用の本当の苦しみは、こうした心の痛みにあるのです。
しかし、残念ながら、脱毛を防ぐ対策については、頭皮冷却法など試されてはいますが、決定打はないのです。
シャンプーは夜しましょう

ここで、脱毛中のヘアケアについて触れておきましょう(表3)。
毛髪がなくても頭皮は汚れますので、低刺激性のシャンプーを十分に泡立て、擦らず、優しく揉むように洗ってください。そのときは、ぬるま湯ですすぎ、乾かすときは、温風ではなく冷風を使うようにします。温めると血行が促進され、抗がん薬をさらに毛母細胞に集めてしまい、脱毛が促されかねないからです。
繰り返しになりますが、抗がん薬治療が終われば、毛母細胞は再生して毛髪は生えてきますし、たとえ治療が長期間続いても、毛母細胞が徐々に抗がん薬に耐えられるようになり、発毛し始めます。
発毛し始めたときのケア
では、そのとき、どんなケアをしたらよいのでしょうか。
何より、頭皮をよい状態に維持してあげることが大切。よい頭皮からはよい毛髪が生えてきます。まずは、清潔と保湿を心掛けましょう。
髪の毛は、夜10時から夜中の2時頃の間に血流によって栄養が運ばれ、明け方3時から9時頃の間に育ちます。その時間帯に頭皮が汚れていると、いい毛髪は生えてきません。ですから、シャンプーは夜に行い、毛穴の汚れや皮脂を揉み出すように、頭皮を指の腹で優しく洗ってください。その際、シャンプーを残さないように、すすぎを十分に。保湿のためにリンスもしましょう。
最初は、柔らかい産毛のような毛髪が生えてきます。髪の毛も体の一部。ミネラル(野菜、海藻、貝類)や良質なタンパク質(豆類、魚、肉)をしっかり摂って、毛髪と頭皮を強化してください。さらに、皮膚を頭頂部に集めるようにマッサージをすると、頭皮がしっかりしてきて、毛質も徐々に強くなっていきます。こんなときは、ヘアダイなどで毛を染めるのは、やめましょう。
残念ながら効果的な脱毛対策はあまりありません。ですから患者さんには、まず、病気を治すためだから今は仕方がない、と現実を受け入れて、厳しい状況に折り合いをつけながら、ウイッグなどを使って、うまく乗り切っていただきたいのです。
そして、私たち看護師も、脱毛になっても抗がん薬治療を遂行できるように、患者さんをサポートしていきたいと思っています。
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