保湿ケアと早めの休薬・減量で症状は改善 早めの対策が治療継続につながる!手足症候群の予防と対策
グレード2以上では休薬・減量を検討

手足症候群の症状がグレード2以上に進んだ場合、保湿ケアやステロイドによる治療と並行して、抗がん剤治療を休むか、減量するかの検討が必要です。患者さん自身が症状をチェックして、痛みが出たら主治医に伝えましょう。
「グレード2(中等度)の段階であれば、通常の休薬期間を少し早めたり、減量したりするとグレード1(軽度)以下に戻しやすいのですが、日常生活が困難な状態(重度)まで症状が進んでしまうと、グレード1以下に戻すのに非常に時間がかかります。無理をして服用を続けるよりも主治医に症状を相談しながら、それぞれの抗がん剤のフローチャートに沿って休薬や減量を行い、早く改善させて抗がん剤治療を再開させるのが原則です。それが治療を長く継続させることにもつながります」
ゼローダの場合、A法、B法、C法などの投与法があります。国内の臨床試験で手足症候群が発現してから回復するまでの期間を調べた結果、1番投与量が多いB法では、グレード1~3全体では回復するまでの中央値(各患者さんの回復までの日数を小さい順に並べた時の真ん中の値)は32日であるのに対して、グレード3だけで見ると、83.5日でした。つまり、痛くなったら休薬して、早目に皮膚治療に専念したほうが早く改善して、早く抗がん剤治療を再開でき、治療効率が良いのです。
ドキシル点滴中、手首足首を冷却

千葉県がんセンターでは、卵巣がんの患者さんがドキシルで治療する場合、手足症候群の予防を目的として、抗がん剤の点滴中に市販の保冷剤(ベルトつきアイスノン)を手首と足首に巻き付けて、冷却する方法を採り入れています。
「冷却した先は血管が収縮して、抗がん剤が流れ込みにくくなると考えられるためです。海外のデータでは、ドキシルを投与した53 人について手足症候群の状態を、局所冷却をした28人と冷却しない25 人で比べたところ、冷却群のほうがグレード2~4の中等度以上の症状が少なかったと報告されています」
千葉県がんセンターでは、ドキシルを投与する全ての患者さんにこの冷却法を採り入れており、手足症候群の症状が出ても、重篤なケースはほとんど見られないと言います。
日焼けと、圧迫に注意ビタミンB6にも期待
- 手足を清潔に保ちましょう
弱酸性など、低刺激の石鹸を使用する - 皮膚の保湿に努めましょう
こまめにクリームや軟膏などを使用し、乾燥や傷から皮膚を守る - 手袋を着用しましょう
手や足は常に外的な刺激を受け、症状が悪化しやすいので、手袋や靴下を着用して保護する - できるだけ安静にしましょう
歩いた後などは、なるべく足を上げるなど安静を保つ - 手足を温めすぎることは避けましょう
長時間の入浴は控え、また、40度以上の熱いお湯は手足を乾燥させるので、食器洗いやシャワーは注意する - 日焼けを避けましょう
外出時は帽子や日傘、長袖の上着、UV加工の手袋を使用するとよい - 皮膚の圧迫や傷に気をつけましょう
指輪、過度に締め付ける下着・靴下、ハイヒールは、皮膚を圧迫したり傷つける原因となるので避ける - 過度の運動は控えましょう
足底に負担をかける激しい運動(ジョギング、長時間の歩行など)は控える
一部改変
手足症候群の予防や軽減に、皮膚ビタミンともいわれるビタミンB6が役立つ可能性もある、と浅子さんは言います。
「ゼローダで治療した乳がんの患者さんを対象に、保湿ケアとビタミンB6を併用した群と、何もしない群で手足症候群の発現率を比較したら、併用群のほうがグレード2と3の発現率が少なかったという報告があります。ビタミンB6は副作用の心配がないので、保湿ケアと併用するのも悪くないと思います。このほか、日常生活の面では、紫外線対策が欠かせません。紫外線は皮膚の細胞を痛めつけますので、外出時にはSPF15以上の日焼け止めクリームを手足にも塗って、紫外線の攻撃から皮膚を守りましょう」
浅子さんは日常生活について、次のような点にも注意を喚起しています。
- ●ヒールのあるパンプスや先の細い靴、きつい靴は避け、圧力が分散しやすいフラットな靴やクッション性のあるサンダルをはきます。ソフトな中敷きを敷くのもお勧めです。
- ●入浴時は熱い湯や長時間の入浴を避け、40度程度のぬるめのお湯に入りましょう。
- ●包丁を使うときはタオルなどをあてて、圧力を分散させるようにします。堅いカボチャなどは切らないようにします。
- ●症状が改善するまでは、ジョギングやエアロビクスなど、足底に負担をかける運動は控えましょう。
- ●水仕事をするときは、綿の手袋の上にゴム手袋をして、刺激を避けます。
- ●家事の合間にハンドクリームや保湿剤をこまめに塗りましょう。
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