皮膚障害が出るのは薬が効いている証拠。前向きにとらえてケアしよう タルセバによる皮膚障害は正しい治療とセルフケアで乗り越えよう

監修:金児玉青 聖路加国際病院皮膚科・形成外科外来アシスタントナースマネージャー
発行:2011年4月
更新:2013年4月

自分でできるスキンケア

治療とともに欠かせないのが、患者さん自身が行う日常のスキンケアです。

スキンケアの基本は保清、保湿、外的刺激からの保護の3つです。保清とは顔や手を清潔に保つため、よく洗うなどしてきれいにすること。きれいにした後は、皮膚から脂分が抜けるので保湿が大切です。また、皮膚は紫外線や衣類によるこすれ、室内の乾燥など外的刺激に弱いので、しっかりと保護することも大切です。日ごろ忙しかったり、症状がつらかったりすると、つい手を抜きがちですが、スキンケアは毎日欠かさずにきちんとやって、その上で必要な治療を受けてほしいと思います。

[スキンケアの基本]
図:スキンケアの基本

十分に泡立てやさしく洗う

保清で大事なのは「やさしく洗う」ことです。

皮膚にトラブルがあると、「洗わないほうがいいのではないか」「お風呂も入らないほうがいいのではないか」と思いがちですが、洗わないほうがいい皮膚のトラブルというのはほぼありません。

むしろ、皮膚のトラブルがあるときには雑菌がつきやすく、感染を起こしやすいので、洗うことが勧められます。

ただし、洗い過ぎると必要な皮脂を欠乏させるので、通常の洗い方で十分。せっけんを使った朝晩の洗顔、毎日もしくは隔日の入浴を励行します。

せっけんや洗浄剤はよく泡立て、泡で顔や体を洗うようにします。泡によって汚れが落ちるし、皮膚への刺激も少なくなります。洗うときは素手でもよく、ナイロンタオルは皮膚を傷めるので使わないようにします。

ただし、こすり過ぎはよくないので素手で泡立て、その手で泡をなすりつける感じで十分です。背中は乾燥が強い部分なので泡が流れるぐらいでいいでしょう。そのかわり毎日か1日置きにはお風呂に入ってください。

やさしく洗うのが基本ですが、おでこのあたりや鼻の脇、脇の下、乳房下、陰股部などは丁寧��観察しながら洗います。

かかとを軽石でこするのは細かな傷を作るだけでケアにはならないので行わないようにし、洗った後はよくすすいで、すすぎ残しがないようにします。

お風呂で使う洗浄剤は商品に記載のある適正な分量を守り、新しく洗浄剤を買うなら、現在の自分の皮膚の状態を考えて、「さっぱり系」か「しっとり系」を選ぶとよいでしょう。

洗った後は忘れず保湿

洗ってきれいにした後は保湿剤で必ず保湿します。

保湿剤は処方箋で出るものもありますが、市販品にも良いものがたくさんあります。低刺激性のスキンケア用品(医薬部外品)には、キュレルシリーズ(花王)、ミノンシリーズ(第一三共ヘルスケア)、コラージュシリーズ(持田ヘルスケア)、ザーネシリーズ( エーザイ)、2e(ドゥーエ)シリーズ(資生堂・マルホ)などがあります。

スキンケアと、軟こうなどの治療剤を塗る順番はどうしたらいいのでしょうか。

顔にステロイド外用剤を塗るときは、洗顔後に化粧水をつけ、次に保湿剤を塗ります。そして皮膚をよく観察しながら発疹部にステロイド外用剤を塗ります。つまり、洗顔→化粧水→保湿剤→ステロイド外用剤の順です。顔以外も同様にします。

また、皮膚を保護するために、紫外線を避ける、化学繊維や締めつけの強い衣服を避ける、低刺激性の化粧品を使用する、患部をかかない、いじらない──なども重要。必要に応じて手袋を着用するのもいいようです。

爪を守るためのセルフケア

爪囲炎へのケアで患者さん自身でできることとしては、保湿剤を塗るほか、指サックをしたり、靴下を履くなどして指先を保護することがあります。

爪囲炎を防ぐには爪の切り方も重要です。短く切り過ぎないようにして、丸く切らずにスクエア(四角)に切り、角はヤスリで丸くします。

爪の際が皮膚にささり込んでいるようなら、伸縮性のある布製のばんそうこうなどで爪が皮膚にささっている部分を少し引っぱり、皮膚に当たらないようにして痛みを軽減する方法もあります。

顔でも爪でも、保湿剤を塗るときは、よく肌や爪を観察してください。昨日は赤くなかったのに今日は赤いとか、ご自身の変化に気を付けておいて、それを主治医の先生に相談するといいでしょう。もちろん、悪いことばかりではなく、昨日よりもここが良くなっているなど、毎日観察して、良くなっていく自分を前向きにとらえることも大事です。

[爪囲炎をケアするためのテーピング法]
図:爪囲炎をケアするためのテーピング法

(「タルセバ錠 Rash Management」第3版より一部改変)

お化粧してもいいですよ

私は、化粧は一概に制限しません。患者さんの社会生活もあるし、また、紫外線の防御にもなるので「お化粧してもいいですよ」と言っています。そのかわり、治療薬や保湿剤を塗って、その上からお化粧をしてもらっています。使う化粧品は刺激が少ないオイルフリーのものにして、帰ったらすぐに落とすようにすればいいでしょう。

化粧は心の問題とも関係しています。「お化粧するのはよくないのでは」と我慢して気持ちが暗くなっている人もいますが、そこまで我慢することはありません。また、恥ずかしいからとマスクをし、前髪でわざと顔を隠して、下を向いて歩いている患者さんもいます。マスクは風邪予防にはよくても発疹にはよくない場合があるし、髪の毛が当たるのも皮膚にはマイナス。それよりお化粧もして、堂々と前を向いて歩いてほしいと思います。外へ出てやるべきことはやって、きちんと薬を使う。効かなかったら次に効きそうな薬を使う。そのために通院していただいているのですから。

こんな正しい治療とセルフケアをしていけば、皮膚障害に負けることなく、治療を乗り越えていけるでしょう。

(構成/町口 充)

1 2

同じカテゴリーの最新記事