適切な対策を知って副作用を和らげ生活の質を保とう 抗がん剤治療時のセルフケアと患者心得集

監修:飯野京子 国立看護大学校成人看護学教授
取材・文:池内加寿子
発行:2008年4月
更新:2013年6月

外来での投与当日の注意ポイント

(1)腕が出せる服装で

外来で抗がん剤治療を受ける場合、投与当日は腕を出しやすく、からだを締めつけない服装で行くのが理想的です。腕の関節から離れた平らな部分に点滴の針が入ることが多いので、袖のボタンを開ければ腕が出せるシャツや半そでのTシャツに、着脱しやすいゆったりしたジャケットやカーディガンなどの装いがよいでしょう。

(2)当日朝の食事は軽めに

抗がん剤投与前の食事は軽めにして、消化器の刺激になるものは避けます。昔は、吐き気が強く出ると予想されるシスプラチンなどの抗がん剤の場合、朝9時からの点滴スタートなら、抗がん剤の投与が昼ごろになるので「朝食半分、昼食は抜く」といわれていました。

また、胃の中に滞留する時間の長い脂肪や乳製品等より、おにぎりやパンなどのでんぷん質のほうが消化されやすいものです。

小さなおにぎりや菓子パンを持参して、抗がん剤投与中でもお昼に食べると気持ちが落ち着くという人もいます。

(3)リラックスできる小道具を

緊張すると吐き気が起こりやすいので、点滴中はリラックスできるように工夫しましょう。好みの本や携帯のMDやカセットテープなどを持参するのもよいでしょう。DVDなどの貸し出しを行っている病院もあります。のどが渇いたときに口を潤すための刺激のない飲み物もあると便利です。

(4)点滴の針が抜けないように注意

普通の注射なら、液が漏れても2、3日で吸収されますが、抗がん剤の場合は、ビシカントドラッグといって皮膚がただれたりするものがあります(表参照)。

これらの抗がん剤の点滴中は針が抜けないように、できるだけ腕を動かさないようにするほうがよいでしょう。点滴前にトイレを済ませ、本やナースコールなどを手元に整えておきます。点滴中にトイレに立つこともできますが、漏れると危険な抗がん剤を点滴している時間帯は避けるのがベターです。

[漏れたときの危険度別・露出性皮膚炎を起こしやすい抗がん剤]

種類 商品名(一般名、略語)
少量でも炎症を起こす
抗がん性抗生物質 アドリアシン(ドキソルビシン、DER)
ファルモルビシン(エピルビシン、EPI)
マイトマイシン(マイトマイシンC、MMC)
植物アルカロイド オンコビン(ビンクリスチン、VCR)
フィルデシン(ビンデシン、VDS)
エクザール(ビンブラスチン、VLT)
タキソール(パクリタキセル、PTL)
多量に漏れると炎症に 
アルキル化剤 パラプラチン(カルボプラチン、CBDCA)
ランダ、ブリプラチン(シスプラチン、CDDP)
エンドキサン(シクロホスファミド、CPA)
アクプラ(ネダプラチン、254-S)
代謝拮抗剤 5-FU(フルオロウラシル)
植物アルカロイド タキソテール(ドセタキセル、TXT)
トポテシン、カンプト(イリノテカン、CPT-11)
ラステット(エトポシド、VP-16)
ジェムザール(ゲムシタビン、GEM)
漏れても炎症を起こしにくい 
代謝拮抗剤 TS-1(テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム、TGF)など
メソトレキセート(メトトレキサート、MTX)
キロサイド(シタラビン、Ara-C)
(5)点滴中に痛くなったら、即連絡

抗がん剤の点滴中に、針の刺入部やその周辺が少しでも痛くなったら、針がうまく入っていなかったり、抗がん剤が漏れていたりする可能性があるので、すぐにナースコールで連絡します。ジェムザールという抗がん剤は、血管痛を起こす抗がん剤なので、さほど心配はいりませんが、まずは気兼ねせずに医療者に連絡すべし、です。

(6)初日は急性アレルギーに注意

抗がん剤の点滴初日に、ごくまれに急性のアレルギー反応(アナフィラキシーショック)を起こすことがあります。投与開始後5~10分、長くても30分以内に動悸や震えなどが起こったら、即刻医療者を呼んでください。投与を中止し、すみやかに対処しないと命に関わることもあります。

(7)副作用日記をつけよう

治療がスタートしたら、1コースが終わるまで、いつどんな副作用が出たか、そのときの生活や食事との関連などをメモしておくと、2コース目以降の対策が立てやすくなります。

白血球が減っている時期でも元気で暮らせたのは手洗いをしていたのがよかった、など、自分で振り返り評価して、次回の治療の参考にするのはとてもよいことです。

また、医療者やご家族は、正確な情報提供をすることに協力しつつ、患者さんの工夫を肯定的に受け止めて「それがよかったんだね」などと声をかけてあげてください。患者さんが副作用を乗り越えて前進する糧になりますから。

[外来投与当日の注意ポイント]

  • 腕が出せる服装で
  • 当日朝の食事は軽めに
  • リラックスできる小道具を
  • 点滴の針が抜けないように注意
  • 点滴中に痛くなったら、即連絡
  • 初日は急性アレルギーに注意
  • 副作用日記をつけよう

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