「がんの治療や副作用のケア」についてのアンケート調査結果 抗がん剤の副作用「倦怠感・疲れ」は患者のQOLを下げる

がん化学療法に伴う貧血を正しく理解して、積極的に相談を
抗がん剤治療に伴って生じ、患者さんが自覚される主な副作用は、調査結果にもあるように倦怠感や疲れ、吐き気・嘔吐、食欲不振などです。とくに倦怠感や疲れは思った以上につらいもので、階段の登り降りはもとより、続けて歩くことも困難になると、通院治療にも影響してきます。
この点で、患者さん自身とご家族の認識の間にいささかずれがあるようですが、自覚症状を他者が同等に把握することは難しいとともに、患者さんが家族を気遣ってつらいということをあまり言わないのではないかとも思われます。嘔吐や食欲不振などと比べ周囲にはわかりにくいつらさかもしれません。
倦怠感や疲れの原因はいろいろありますが、第1に考えられるのは「貧血」です。がんの化学療法では一般的に、白血球や血小板の減少が起こることがよく知られていますが、実は全ての血球を産生する骨髄の機能が抑制されるため、赤血球も減少します。これが「貧血」です。
患者さんの多くは貧血というと、脳貧血のイメージを持っておられ混同されやすいのですが、いわゆる立ちくらみの脳貧血は血圧の問題であって、本来の貧血とはまったく別のものです。
貧血とは血液中の赤血球が減った状態を指し、赤血球[に含まれる血色素(ヘモグロビン)]は酸素を運ぶ役割を担っていますから貧血になると全身が低酸素状態となり、倦怠感や疲ればかりでなく、動悸や息切れ、めまい、食欲不振、不眠など、生活の質を低下させる様々な症状を引き起こします。
化学療法に伴う貧血治療の新しい選択肢でQOLの維持向上へ
調査結果を見ると、倦怠感や疲れの原因が「化学療法に伴う貧血」にあることや、貧血の程度を示すご自分のヘモグロビン値をご存じの方が予想以上に少ないのです。化学療法をする場合は必ず定期的(一般的には、少なくとも週1回)に血液検査をしますし、そのデータは患者さんにお渡ししますから、もう少し気を付けてその変化をチェックしてみていただきたいと思います。
また医療側も化学療法の副作用として貧血がおこるという説明をしても、実際に貧血になるとこういう症状が出るというところまで説明していない可能性もあります。どうしてこうなるかという原因を理解するだけでも不安感は減少しますから、患者さんも我慢せずに医療側に症状を説明し、お互いに情報や知識を共有することが大切です。
貧血の改善は、がん治療に向かう患者さんの体調全般を底上げし、生活の質を維持しながら治療を継続する上で大変重要です。しかし、我が国では、今まではある程度我慢して、どうしても必要なときには輸血するという方法しかありませんでした。
現在、欧米ではがん化学療法に伴う貧血を明らかに改善する治療法としてエリスロポエチン(EPO)製剤が標準的な支持療法として使われ、米国、欧州の臨床腫瘍学会などによってガイドラインもつくられています。EPO製剤は、我が国でも臨床試験が進行しており、がん化学療法に伴う貧血に対する早期の治療・改善が期待できます。
いずれにせよ、患者さんはがん化学療法を受けていて不安な点や症状、希望・要望などは積極的に伝えるべきですし、医療側もそれに応えられるようにしなければならないということが、今回の調査結果からも感じられます。
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