75歳以上でがんになったとき 治療選択など気をつけたいポイントは?

監修●長島文夫 杏林大学医学部付属病院腫瘍内科教授
取材・文●菊池亜希子
発行:2024年12月
更新:2024年12月


希望や思いを医療者に伝えてほしい

治療法を選択する上で大切なのが「患者さん自身が、希望や思いを医療者に伝えること」だと長島さんは強調します。

「これだけは手離しなくない、大事に思っているというようなことを、心の中に秘めるのでなく、ぜひ医療者に伝えてほしいのです。前述のように、『手術だけはしたくない』『ものを食べられなくなるのはイヤ』でもいいですし、『薬はあまり飲みたくない』『緩和ケアだけにしてほしい』『家族の手を煩わせたくない』『入院ではなく在宅療養にしたい』など、思いはさまざまです。医師に言いにくかったら、看護師や薬剤師、栄養士など、病院には多くの医療従事者がいますので、誰でもいいので伝えてください」

治療法を選ぶ際にも、日々の医療ケアにも、患者さん本人の希望や思いがどこにあるかが実は最も大切な要素。高齢患者さんの場合、とくにそれが大きいと長島さんは話します。

「私は、できるだけ早い段階で『これから、どこでどのように過ごしたいですか』と患者さん本人に聞くようにしています」

また、高齢になってからがん治療を始めるに際しては、治療とともに介護の可能性も合わせて考えていく必要があるといいます。

「介護保険をとにかく早く申請したほうがいいです」と長島さん。治療後、すぐ介護サポートが必要か否かは関係なく、申請だけは早めにしたほうがよいようです。

「介護認定されると、ケアマネージャーさんにさまざまな相談ができ、社会的孤立を防ぐことができます。現時点でサポートの必要はなくても、申請だけはしておいて、早めに地域と繋がっておくことが大切なのです。要介護でない場合でも、地域包括センターなどと接点を持つことで、ちょっとした相談に応じてくれたり、ご自身の状況に応じて参加できる地域活動を知ることもできるでしょう」

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