効果と副作用を客観的に判断し、自分にとってのプラス要因の有無を考える 臨床試験とは何か。患者さんのためになるか

監修:佐藤恵子 京都大学大学院医学研究科助教授
齋藤裕子 静岡がんセンター臨床試験支援室
取材・文:常蔭純一
発行:2007年1月
更新:2019年7月

インフォームド・コンセントの例

インフォームド・コンセント(1)

[臨床試験の概要(卵巣がん術後補助化学療法の比較試験の概要)]
対  象 上皮卵巣がん,  卵管がん,  腹膜がんの術後の患者(ステージ2~4)
試験内容 パクリタキセル(PTX)とカルボプラチン(CBDCA)の2種類の投与方法の比較

3週投与法
 PTX 180mg/m2/1+CBDCA AUC 6.0/1
     3週間を1サイクルとし、6-9サイクル実施

毎週投与法
 PTX 80mg/m2/1,8,15+CBDCA AUC 6.0/1
     3週間を1サイクルとし、6-9サイクル実施

デザイン ランダム化比較試験
エンドポイント 無増悪生存期間、 生存期間
参加予定人数 400人
試験の形態 医師主導の多施設共同臨床試験
産婦人科の実際「卵巣がんの臨床試験におけるインフォームド・コンセント」第53巻第1号より

インフォームド・コンセント(2)

[臨床試験の説明の流れ]
患者の術後の病状 ・がん細胞が残存している可能性があること
化学療法の必要性 ・補助化学療法が必要であること
・補助化学療法により再発までの期間が延長できること
化学療法の現状・試験の必要性 ・標準的な治療法(3週投与法)
・よりよい治療法の開発が必要なこと
臨床試験を実施していること ・毎週投与法と3週投与法のどちらがよい治療法かをくらべること
・患者が適格なので試験参加を依頼されていること
治療法の内容 ・それぞれの投与法の内容や投与期間など
・2つの治療法の違い
治療法の割り付け ・2つの治療がランダムに割り付けられること
・ランダム割付けの必要性と具体的な割り付け方法
予想される副作用 ・副作用のでるしくみ
・個人差が大きいこと
・主な副作用の種類と頻度、日常生活への影響の度合い
・対処方法
・2つの治療法での副作用の違い
予想される利益 ・参加者本人に対して
・将来の患者に対して
参加の自由 ・参加しなくても不利益にならないこと
・不参加のときに受ける治療(3週間投与法か他の選択肢)
・はじまったあとでも中止できること
その他必要事項 ・プライバシーの保護
・試験責任者、問い合わせ先
産婦人科の実際「卵巣がんの臨床試験におけるインフォームド・コンセント」第53巻第1号より

インフォームド・コンセント(3)

[治療の手順]
試験で行う治療は、2種類の抗がん剤(パクリタキセルとカルボプラチン)を点滴注射するものです。パクリタキセルの投与を3週に1回行う方法を「3週投与法」、薬を分割して毎週1回投与する方法を「毎週投与法」といいます。パクリタキセルの1回当たりの投与量と回数が異なるだけで、全体の治療回数や検査の頻度などは変わりません。それぞれの治療法は下記のとおりです。

(1) 3週投与法
パクリタキセル(180mg/m2)とカルボプラチンを1日目に点滴します。3週間を1回分(1サイクル)とし、6~9サイクル繰り返します。点滴にかかる時間は約5時間です。

図:3週投与法

(2) 毎週投与法
パクリタキセル(80mg/m2)とカルボプラチンを1日目に点滴し、パクリタキセル(80mg/m2)のみを8日後と15日後にも点滴します。3週間を1回分(1サイクル)とし、6~9サイクル繰り返します。1日目の点滴時間は約3時間、その後の点滴時間は約1時間半です。

図:毎週投与法
産婦人科の実際「卵巣がんの臨床試験におけるインフォームド・コンセント」第53巻第1号より

インフォームド・コンセント(4)

[ランダム割り付けの説明]
この試験に参加することを同意していただいた場合は、パクリタキセル+カルボプラチン3週投与法と毎週投与法の2つの治療法のうち、どちらかを受けていただくことになります。あなたがどちらの治療法になるかは、患者さんご自身や担当医師が決めるのではなく、「ランダムに決める方法」で決めます。検査結果などをもとに、2つの治療を受ける患者さんのグループが均等になるように、5分5分の確率で決めることになります。結果的にこの試験に参加していただいた患者さん400人のうち半分の200人は「パクリタキセル+カルボプラチン3週投与法」を、もう半分は「毎週投与法」を受けていただくことになります。
図:ランダム割り付けの説明
産婦人科の実際「卵巣がんの臨床試験におけるインフォームド・コンセント」第53巻第1号より

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