国立がん研究センター東病院が取得したCAP認定とは? 国際的な臨床試験が日本でもっと行われるために
CAP認定は臨床試験を誘致するのに有利
CAP認定のある病院は、どんな目的で認定を取得したのでしょうか。
「自分たちの病院で医療を受ける患者さんが、きちんとした精度の高い検査を受けられるようにしたい、というのが大きな理由です。ただ、それだけではなくて、国際的な臨床試験を誘致したいという理由がけっこう大きいのです。国立がん研究センター東病院を考えてみても、たとえばがん治療で有名な米国のメイヨークリニックと共同で研究を行おうということになった場合、CAPの認定がなければ、なかなか一緒に研究を進めていくのは難しいはずです。そういった点から考えても、日本でCAP認定を取る病院が増えるのは、とてもいいことだと思います。CAPの認定を取る病院が増えれば、もっと国際的な臨床試験が行えるようになるはずです」(コルビーさん)
最近のドラッグ・ラグの原因として、海外の製薬企業が日本で臨床試験を行うことをあまり望んでいないからだと言われることがあります。それは本当なのでしょうか。
「たしかにそういう傾向は見られます。日本の病院がCAP認定を取っていないというのも、その1つの理由でしょう。臨床試験の精度管理がきちんと行えないと考えられているのです。もう1つは言葉ですね。世界の臨床試験ではやはり英語が使われるので、言葉の壁も日本が敬遠される理由になっています。ただ、海外の製薬会社が日本での臨床試験を望んでいないという問題とは別に、日本の医師や大学教授が忙しすぎるという問題もあると思います。日本の医師はたくさんの患者さんを診ます。アメリカの2倍以上でしょう。看護師も、検査技師もみんな忙しくて、みんな頑張っています。臨床試験を行うことになればさまざまな作業が増えますから、なかなかそれを行うことができないのではないでしょうか。私の個人的な意見ですが、そういったことも関係しているように思えます」(コルビーさん)
認定を取るまでには2年ほどかかる
CAP認定の利点ははっきりしていますが、日本で取得する病院が少ないのには、CAPに関する誤解も関係しているらしい。
「これまで日本の病院がCAP認定をあまり取ってこなかったのは、間違った情報が広まっていたためでもあります。たとえば、この認定を取るためには、『すべて英語でやらなくてはいけない』という誤解があります。株式会社CGIがCAPの認定事業を日本に導入したのはもう30年以上も前で、私たちはCAPの外部精度管理調査の日本語版を提供してきました。
また、『CAP認定は非常に難関で、日本の病院ではまず取れない』という誤解もあります。たしかに簡単ではなくて、CAP認定を取るには2,000以上のルールをクリアしていかなければなりません。ただ、私たちが開発したDIY(Do it yourself)ソフトウェア(LEAP)があり、それを使うことで、CAP認定までのプロセスを進めていくことができます」(コルビーさん)

認定を取るまでに、どのくらいの期間が必要なのだろうか。
「国立がん研究センター東病院は2年でした。この2年間、私たちはほとんど毎日、いろいろな分野の会議や教育を行ってきました。CAP認定には2,000以上のルールがあるので、病院で働く多くの人に関わってきます。検査室の性能の向上や改善、検査技術の質の担保が大きな目的ですが、直接検査する人に対する検査技能だけでなく、医師、看護師、検体を扱う、管理する人など、場合によっては掃除する人なども教育の対象となります。検体受付から結果報告まで全ての行動が検査の精度に関わってくるからです。認定までには、どうしても長い期間が必要になります。
たとえば、遺伝子分野だけ行っているようなラボであれば、半年とか8カ月で認定されたことがありますが、国立がん研究センター東病院のように、多くの分野の検査をたくさん行っている病院ですと、2年くらいはかかると考えたほうがよいでしょう。
また、CAP認定を取れば終わりでななく、一番重要なその品質管理をきちんと継続維持しているかどうかの確認もあります」(コルビーさん)
CAP認定の取得は簡単ではないようですが、日本のがん医療の進歩のためにも、標準治療を終えた患者さんが新しい治療を受けられるためにも、国内でCAP認定を取得する病院が増え、国際的な臨床試験が盛んに行われるようになることを期待したい。
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