緩和ケア施設と一体化した緩和ケアチーム
週1回の症例カンファレンスで患者さんの状況を把握

毎週水曜の朝9時、緩和ケアチームの症例カンファレンスで、病棟回診前の患者さん情報の共有を行う。
これらの情報は、患者さんからのスクリーニングシート回答や、各病棟の担当看護師から得られた患者さん情報、井田病院で独自開発された「IDAS」と呼ばれる患者さんの毎日のQOL(生活の質)を多方面から評価した情報などを、がん看護専門看護師の武見綾子さんが一覧表にまとめたもの。患者さんのがん種、容体、目立った症状や行動、訴えごとなどが武見さんから事細かく伝えられる。
これに対し、緩和ケア医で腫瘍内科医でもある西智弘さんが的確に判断を下し、対応を提示する。また精神面での症状に対しては、精神科医の徳納健二さんが意見を述べる。
病棟回診(ラウンド)で患者さんの状況把握と対処法を提示

9時45分、いよいよ病棟回診の開始。症例カンファレンスで報告された20人近くの問題を抱える患者さんの病室を順番に回って、症状の確認と患者さんや家族の訴えを聞きながら対処法を示していくのだ。まず7階の病棟へ上がり、2時間強をかけて3階病棟まで順次下っていく。
まずは、各階のスタッフ(ナース)ステーションに立ち寄り、該当する患者さんの情報を再確認する。その後、各病室を回り、患者さんに痛みやつらさなどの状態を聞き出す。病室には家族が付き添っている場合もあり、家族からの相談事にも対応する。
こうして各病棟をくまなく回診し、身体的、精神的な痛みやつらさを訴える患者さんに適切な対応を行っていく。回診後、病棟ごとにスタッフステーションに戻り、患者さんの所見データの再確認や時には主治医から治療内容の確認や進言を行うこともある。
この日は、午後1時から、隣接する井田病院かわさき総合ケアセンタ―では、週2回開催の緩和ケア病棟(ホスピス、全個室20床)で専門的な緩和ケアに従事するスタッフによる症例カンファレンスが開かれた。問題点や対応策が協議され、同センター所長の宮森正さんから対処策が提案され、チームで議論・共有される。


一貫した緩和ケアのサポート体制で地域医療の重要な役目を担う
井田病院の緩和ケアの特徴は、先にも記した通り、外来、在宅ケア(往診、訪問看護、��アマネジメント等)、緩和ケア病棟(ホスピス)など一貫したサポート体制が提供されている点。これに加えて、がんサポートチームが、がんの告知の段階から身体的・精神的支援に入り、がん治療中の全人的苦痛の緩和を行っている。
このように外来診断、治療、入院、ケア病棟への転床、在宅緩和ケアへ、必要なら在宅看取りの一貫した流れを作ることにより、地域医療の重要な役目を担っている。
同院のもう1つの強みは、がん以外の疾患の治療体制が整っている点。がん患者さんは、がん以外にも合併症をもっているケースが多いことや、またがん治療中に脳梗塞などの急激な病態変化を来すことがある。こうした状況に対応するためには、他領域の治療体制が整っていることは心強い。
