注目されるがんのリハビリテーション 幅広い症状を各専門職がカバー

取材・文●「がんサポート」編集部
発行:2014年9月
更新:2014年12月


基本動作は理学療法士、生活面は作業療法士、看護師、言語聴覚士など

辻さんは静岡県立静岡がんセンターでの体制作りが整ったあと、2007年に古巣の慶應病院に戻った。

慶應病院でのリハビリテーション科では、様々な疾患の患者さんのリハビリを行っているが、がん患者さんはそのうち、2~3割。リハビリ科の治療体制は、リハビリ専門医、理学療法士、作業療法士、言語療法士、リハビリを専門とする看護師など約30人からなる。

「病状や症状が多彩なので、それぞれに応じたリハビリをします。医師単独で対応できる科ではなく、職種がたくさんあることが特徴です。基本動作や歩行は理学療法士、上肢や日常生活動作のリハビリは作業療法士、生活面は食事や清潔、排泄行動など実生活にもとづき看護師、脳移転や頭頸部がんなどによって飲み込むことやしゃべることが難しくなったときは言語聴覚士など、それぞれ役割を分担しつつ、連携して行っていきます。全体のプログラムを立てるのがリハビリ専門医です」

リンパ浮腫のリハビリ 予防法の指導も

ストッキング類のストック棚

院内リンパ浮腫勉強会の様子

様々な症状の中から、リンパ浮腫のリハビリを見てみよう。乳がんや子宮のがん、腹部のリンパ節を郭清するような手術をしたあと、患者さんの2~3割に出る後遺症だ。

「大事なのは、手術前から患者さんに浮腫が出るかもしれないことを知ってもらうことです。予防の一部とも言えます。少しでもむくんだときには医療機関に来てくれることが期待されます。早期に治療すれば、腕や足がこん棒のように太くなるというようなことにはなりません」

早期発見・早期治療には、各診療科との連携も必要になる。「手術後に発症するまでは各科の看護師の役割が大きくなります。浮腫が出ないようにする予防法はあるのです」

腋窩(脇の下のくぼんだ箇所)のリンパ節を郭清したなら、そちらの腕で血圧を測ったり、採血をしたりしないように。
また生活面では、重いものを持たない、太りすぎないなどの指導が大事だという。下肢の状態はアセスメントシートという表を用いてチェックする。むくみが出現したらリハビリ科で対応する。

「複合的治療です。包帯やストッキングで圧迫した上での運動と日常生活指導、リンパドレナージを組み合わせて行います」辻さんは、各科、各専門職が協力した取り組みがあっての、がんのリハビリ治療であることを強調した。

こうしたリンパ浮腫に対する院内での認識を高めるために、各病棟の関連スタッフが集まり、年に1回「院内リンパ浮腫勉強会」が開催される。勉強会では、辻さんや形成外科医らがそれぞれの立場からリンパ浮腫についてレクチャーするとともに、病棟看護師からはリンパ浮腫に対する取り組みの現状報告があり、その後活発な質疑応答が行われる。また隔月で、関連部署のスタッフらによる検討会も開かれている。

院内リンパ浮腫勉強会での質疑応答

院内リンパ浮腫勉強会後の関連スタッフ集合写真
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