多職種で移植の様々な局面をカバー 退院後のフォローアップも大切に
「移植後長期フォローアップ外来」の役割
移植におけるチーム医療の一環として、2012年に生まれたのが、移植後長期フォローアップ(*LTFU)外来だ。移植を受けた患者さんや家族が退院後の生活で悩んでいること、苦しんでいることについて専門の看護師がじっくりと聞き、医師や薬剤師、栄養士らと情報共有・協力の上、QOL(生活の質)向上のための諸策を提供するのが役割だ(図)。

福田さんは「移植後の外来では、医師だけは外来診察時間内に相談に乗り切れないことも多いのですが、LTFUなら腰を落ち着けて看護師とじっくり話ができる上、決められたポイントでのチェックを通じて2次がんや成人病予防の指導も行うことができます。LTFUの活動の積み重ねで、完治率も上げてQOLも高めることを目指しています」とLTFUについて重要な位置づけであることを強調する。
LTFUは月曜から木曜の9時から13時まで外来を実施している。がん看護専門看護師2人と日本造血細胞移植学会の研修を修了した移植分野のベテラン看護師4人が交代で対応する。予約が基本で、1回の受診時間は45分がめど。タイミングは移植後3カ月、6カ月、1年目以降1年ごとなどの通常の節目受診に加え、医師が必要とした場合や患者の希望にも応じる。
同病院通院治療センター看護師長で、がん看護専門看護師の塚越真由美さんは「移植後の患者さんは、抗がん薬による副作用とともに、移植片に含まれるドナー由来のリンパ球が患者さんの体を攻撃してしまうGVHDとも闘わなければならないので、長期にわたったフォローアップが必要なのです」と話す。
*LTFU=Long Term Follow-up

▲LTFU外来での相談。専門看護師が担当する
患者さんの受け止め方も変わる
同外来の守備範囲は多岐にわたる。食事や生活を通じた感染予防、皮膚や爪、味覚などに関する症状対応、GVHDによる皮膚や口腔内、目などの症状対応、さらに社会復帰や心のケア、また家族の心のケアの相談にも応じている。昨年はのべ349人が受診した。
同外来で相談・指導内容を分析した結果、数が多かったのはGVHD関連で、皮膚症状の���防・対処、口内炎(口腔粘膜障害)対策が目立った。リハビリや日常生活における感染予防、食事に関する相談も多かった。
相談に応えることに加え、爪や肌の手入れの仕方や、体の洗い方、軟膏の塗り方を指導し、皮膚に負担をかけない便利グッズやドライアイ用のメガネなどを紹介することもある。相談内容によっては、栄養士による栄養相談や味覚検査につなげたり、服薬の仕方や内容について薬剤師から説明を受けられたりするような連携も密に取っている。
あるとき、50代の男性が同外来を訪れ、「GVHDの症状がつらくて耐えられない」と訴えた。爪や目の症状に加えてだるさや息苦しさもひどかったが、病状的に免疫抑制薬を増やせない状態だった。爪の丁寧なケアの仕方や生活の工夫を指導したが、どうしてもすぐに効果が出ないという理由で自己流に戻ってしまい状態が良くならない。
そんな状況でも、塚越さんらが根気よく指導を続けたところ、男性の受け止め方が次第に変わっていった。現在の病気や合併症を受け入れた上で、専門家の助言も受け入れようと、心の持ち方が変わったという。気の持ち方と共に症状の回復も進んだ。
「ここがよくなった、できるようになったと、患者さんの取り組みの成果をきちんと見てあげることが大切です。一方的な指導で納得できないまま取り組むのではなく、それぞれの生活に合わせて取り入れてもらえるように、コミュニケーションを密にしています」
今後の課題については、「症状が出ているのに、気が進まずに来院しない患者さんも多くいます。気軽に相談にきてもらえるようなアイディアを練っています」と、LTFU外来の認知度向上と親しみやすさを挙げた。