活発な議論が出来るカンファレンス 診療科をつなぐ接着剤

取材・文●「がんサポート」編集部
発行:2015年9月
更新:2016年9月


CLSって知っていますか?

チームのメンバーには、CLSと略称されるスタッフもいる。「チャイルド・ライフ・スペシャリスト」のことで、日本ではあまり普及しておらず、米国での資格制度しかない。しかし、その役割は小児科ならではのとても重要な分野だ。 子どもたちのストレスを減らして、治療に対するモチベーションを上げてもらうのがミッション。それは、子どもへの病気の説明であったり、教育的なかかわりであったりと繊細なエリアに踏み込む。

プレパレーション(心の準備)として、検査をどこで、どのようにやるかを説明したり、〝手術ツアー〟を行って手術台を実際に見てもらったりというように、子ども目線で治療への理解を深めてもらう。模型と人形を使って、検査や手術の様子をわかりやすく説明するなど、細やかな対応をしている。病院全体で3人のCLSが対応している。

発足メンバーの1人であるソーシャルワーカーの鈴木 彩さんは、心理・社会的な面から小児がん治療をサポートしている。チーム発足以前から保育士や臨床心理士らと連携する組織を作っていたが、こどもサポートチームが出来てからは「こどもサポートチームの中の組織」として、全体のカンファレンスとは別に、心理社会的支援を検討するためのミーティングを持っている。

「診断時にはこれからの生活をどう乗り切るか、そして退院前には元の生活に戻るための支援を考えなくてはなりません。病気が治って生活に影響がない人もいますが、障害が残ってしまう子どもさんもいます。さらに、治療の影響によって出てくる症状があったり、その影響が就職や結婚にも関連してくることがあるので、長期的に支援ができる体制を強化していきたいです」

例えば、長期入院で友だちと同じ生活ができなかったことが患者さんの負い目になることもある。遠足も行っていないし、運動会も参加していない。その距離感を少しでも縮めることも検討する。「これまでの生活とのつながりはできるだけ持っていたほうがいいと思います。学校には通えなくても、学校の様子がわかるお便りを届けてもらうだけでもいいのです」(鈴木さん)

実際に幼稚園や学校に戻るタイミングでは、学校の先生などとも話し合う機会を持っている。

プレパレーションで用いられる木製の画像診断装置

院内に設置さ��た分教室

多職種がかかわることで生まれるメリット

塩田さんは相乗効果を話した。

「イベントをやろうという機運が盛り上がっています。今は、バイキング企画。栄養士と保育士が中心で、ほかのメンバーはサポート役です。いつもはプレートに乗っている食事を取っている子どもたちに、バイキング形式で親御さんたちと一緒に好きなものを食べてもらおうという企画です」

医師や看護師だけではできない企画だ。

「チームが出来てから、在宅医療に移行できる子どもさんがとても増えたと感じます」と、木須さんは活動の効果に対する現場の実感を話した。

在宅療養になるにしても、地域の医療機関との連絡が必須だが、それに対してもチーム内で素早く対応できる体制が整いつつある。

「チームがまとまることでのメリットの大きさを実感しました。今後は、ほかの分野の病気で緩和医療を求めている子どもたちにも、少しずつ広がっていけばいいと思います」と活動の発展を目指している。

ナースステーション前で一堂に会した「こどもサポートチーム」スタッフ(前列2番目中央が小児がんセンター長の松本さん)
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