ホルモン陽性・HER2陰性進行再発乳がんに新薬が今年中に承認予定!
フェソロデックスが使われる場合もある
アロマターゼ阻害薬による治療が効かなくなった場合、2次治療の標準治療となっているのはアフィニトール+アロマシン併用療法である。しかし、2次治療として*フェソロデックスが選択されることもあるという。
「アフィニトールとアロマシンの併用療法は非常に強力な治療法ですが、最初のアロマターゼ阻害薬による治療が長く効いた人や、がんの進行が遅い人では、少し緩やかな治療ということで、フェソロデックスを選択することがあるのです」
フェソロデックスは、がん細胞の表面にあるホルモン受容体に作用し、その数を減らす働きをする薬である。
「さらに、1次治療において、アロマターゼ阻害薬のアリミデックスとフェソロデックスを比較した臨床試験も行われ、フェソロデックスのほうが少しよかったという結果が出ています。以前は、フェソロデックスは1次治療では使えませんでしたが、2017年に適応拡大となり、1次治療からフェソロデックスを使用することが可能になっています」
これにより、現在の段階では、ホルモン陽性・HER2陰性乳がんの治療は、次の図のように進められるようになっているという(図2)。ただ、近い将来、新しい薬が登場することが予想されており、それによって治療戦略はさらに大きく変わると考えられている。
*フェソロデックス=一般名フルベストラント *ノルバデックス=一般名タモキシフェン *フェアストン=一般名トレミフェン

併用で効果を発揮するイブランス
今年中にも登場してくると期待されているのは、*イブランスという新しいタイプの薬である。
「細胞周期に関わるCDK4/6という分子の働きを抑え、治療効果を発揮するといわれています。Paloma-2とPaloma-3という2つの臨床試験が行われ、この薬の有用性が証明されました」
Paloma-2では、1次治療で、フェマーラ単独群とイブランス+フェマーラ併用群を比較している。無増悪生存期間は、フェマーラ単独群が14.5カ月、イブランス併用群が24.8カ月だった。
Poloma-3では、アロマターゼ阻害薬を使った後の2次治療として、フェソロデックス単独群とイブランス+フェソロデックス併��群を比較している。無増悪生存期間は、フェソロデックス単独群が3.8カ月、イブランス併用群が9.2カ月だった。
「これらの臨床試験によって、イブランスを併用する治療が有用だということが明らかになりました。2次治療での無増悪生存期間は、アフィニトールとアロマシンの併用療法の場合と似た数値になっています。もちろん比較はできませんが、どちらも同じように有効だと考えられます」
イブランスが承認された場合、ホルモン陽性・HER2陰性の乳がんの治療は、次の図のようになると考えられている(図3)。
「新しい薬が登場し、治療の選択肢がますます増えていきます。このような時代になると、その薬を使うとどのような利点があり、どのようなマイナスがあるのかをよく知った上で、医師と患者さんがよく話し合い、自分に合った治療を選択していく必要が生じてきます。そこまで患者さんが選ぶのは難しい場合には、患者さんの気持ちをよく理解して、医師が治療をお勧めしていくことも必要になるかもしれません」
ホルモン陽性・HER2陰性乳がんの治療は、自分に合った治療を選択していく時代になろうとしている。それぞれの薬についてよく知ることが、ますます重要になってきそうである。
*イブランス=一般名パルボシクリブ

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