最新ホルモン療法:Gn-RHアンタゴニストの新登場でホルモン療法はどう変わっていくか? 効かなくなっても、あきらめない。前立腺がんの最新ホルモン療法
副作用はどう違う?
LH-RHアゴニストもゴナックスも、男性ホルモンを低下させる治療なので副作用は共通しています。
あらわれやすい副作用としては、骨がもろくなって骨粗鬆症が起こりやすくなります。ほかにも、ホットフラッシュや、筋力が低下して力が出ない、皮下脂肪がつく、貧血気味になるなど、女性の更年期と似たような症状があらわれます。これに対しては「散歩など適度な運動を行い、骨に少しでも負荷をかけることをお勧めします」と市川さん。
また、抗アンドロゲン薬のカソデックスでは乳頭が張ったり、オダインの場合は重篤な肝機能障害の報告があります。「オダインを服用している場合、定期的な肝機能検査が欠かせません」と市川さんは話します。
効かなくなったらどうするか

ホルモン療法は、長く続けているとやがては効かなくなり、落ち着いていた病状がぶり返してしまいます。この状態を「去勢抵抗性」と呼んでいます。
「なぜ効かなくなるかというと、副腎から出ているステロイドホルモンをがん細胞自身が取り込んで、男性ホルモンに作り替えてしまうとか、アンドロゲン受容体の遺伝子の数が増えて、わずかなアンドロゲンにも反応するようになってしまうなどがいわれています」
ホルモン療法が効かなくなったかどうかはPSA値の変化で判断しますが、4週間以上あけて測定したPSA値が最低だったときの値より25%かつ2ng/ml以上上昇した場合、「病勢の進行」と判定され、多くの場合「去勢抵抗性」と判断されます。
その場合はまず、抗アンドロゲン薬をやめてみます。いったん中止することで、PSA値や症状が改善することがあるからです。それでも効果が続かないようなら、別の抗アンドロゲン薬に切り替える交替療法を行います。たとえば、カソデックスを使っていたのならオダインに変えるとか、あるいはその逆です。
こうした治療法を工夫しても、やはり効かなくなった場合は、抗がん薬のタキソテール*が使われます(図3)。海外の大規模な臨床試験の結果、タキソテールを使うことによって、生存期間を延長することが明らかになっていて、日本でも08年より去勢抵抗性の前立腺がんの患者さんに使われるようになっています。
*タキソテール=一般名ドセタキセル
続々登場する新薬に期待
(全生存率)

しかし、タキソテールもやがて効かなくなることがわかっています。そこで期待されているのが新薬の登場です。
アメリカでは昨年、タキソテールが効かなくなった去勢抵抗性前立腺がんの治療薬として、アビラテロンという男性ホルモンの合成を阻害する薬剤が承認されました(図4)。
タキソテールを使う前に用いても有効ではないかといわれており、日本でもすでに治験が行われています。
さらに抗アンドロゲン薬のエンザルタミド(一般名)という薬剤も、アメリカで承認されています。「男性ホルモンがアンドロゲン受容体に結合するのを阻止する力が非常に強い薬剤です」と市川さんも高く評価しており、抗がん薬を使ったあとだけでなく、LH-RHアゴニストと一緒に使う方法も考えられています(図5)。この薬剤もすでに日本での治験が行われています。

他にもオルテロネル(一般名)というアビラテロンと似た薬も開発されており、日本でも治験が行われています。
「これらの薬が日本で使えるようになるには、あと2、3年はかかるでしょう」と市川さん。患者さんにとっては、待ち望まれる新薬といえます。 たとえ薬が効かなくなっても、あきらめない――。前立腺がんの薬物療法はさらなる進化を遂げています。
同じカテゴリーの最新記事
- ホルモン療法中は骨折リスクに注意! アロマターゼ阻害薬服用時の骨粗鬆症治療
- がん治療中も後も、骨の健康が長生きの秘訣 ホルモン療法に合併する骨粗鬆症を軽視しない!
- 新薬続出で選択肢が広がった去勢抵抗性前立腺がん(CRPC) 「どの薬をどのタイミングで使うか」が見えてきた!
- ホルモン陽性・HER2陰性進行再発乳がんに新薬が今年中に承認予定!
- センチネルリンパ節転移陽性乳がんへの新しい治療対応
- 新薬登場でここまで変わった! 去勢抵抗性前立腺がん薬物療法の治療戦略
- ホルモン療法の副作用対策 抗がん薬とは異なる副作用が発現
- 去勢抵抗性前立腺がんの治療選択 個別化・適正化で患者の利益が求められる
- 総合的な対応が必要に HR陽性、HER2陰性・進行再発乳がん