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ホットフラッシュ、関節痛、倦怠感を抑えられるか?古くて新しい薬 ホルモン療法のつらい副作用を漢方で乗り切る
副作用の症状を見て処方を
ホットフラッシュ

女神散、加味逍遥散、桂枝茯苓丸などの漢方薬を用い、10例中9例で中等度以上の改善がありました(図6)。
「女神散、加味逍遥散、桂枝茯苓丸はいずれも駆瘀血作用、つまり瘀血を改善する働きを持った薬で、9例中8例でこの駆瘀血作用のある薬が有効でした。瘀血とは血流が滞っている状態であり、血流を改善する作用のある薬が効果的ということになります」
このうち例えば女神散は、当帰、川芎、香附子、蒼朮、桂皮、黄連、黄芩、人参、檳榔子、丁子、木香、甘草などの生薬を組み合わせたもの。当帰はセリ科の植物トウキの根の部分、川芎はやはりセリ科のセンキュウの根茎の部分を乾燥させたものです。
関節痛

5例のうち4例で中等度以上の改善を認められ、その4例中3例で、附子を含んだ薬剤が使われました(図7)。
「附子はトリカブトの根を減毒処理したもの。体を温める作用と鎮痛作用があるので、冷えると関節が痛いと訴える患者さんには、附子を使った薬を選択することがよくあります」
附子を含む薬剤は、桂枝加朮附湯、大防風湯など。薏苡仁湯は、それらの薬剤とは性格が異なり、関節や筋肉が腫れて熱を持ち、痛むという場合にしばしば有効です。
倦怠感

倦怠感を訴えた4例では漢方薬投与後、4例すべてで中等度以上の改善を示しました。用いた薬は大防風湯+牛車腎気丸、女神散+十全大補湯、加味逍遥散、柴胡桂枝湯+五苓散など。倦怠感に対して有効な漢方薬に、一定の傾向は認められなかったといいます(図8)。
うつ症状
ホルモン療法の副作用であらわれることのある症状の1つで、13例中1例で抑うつ気分に対して柴胡加竜骨牡蛎湯が使われています。柴胡はセリ科の生薬ですが、竜骨はゾウ・サイ・ウシ類など大型哺乳動物の骨の化石で、牡蛎は食用で馴染みのあるカキの貝殻。
ほかに、イライラを伴う抑うつ気分に対しては抑肝散、加味逍遥散、女神散などを使うことがあるし、元気がなくなって意欲や食欲の低下を起こしているときには十全大補湯を投与することもあるといいます。
西洋医学を補う漢方の力
また、ホルモン療法の副作用対策に漢方薬を用いることは、西洋医学と比べても優位な面を持っていることが明らかになりつつあります。
実は、ホルモン療法でホットフラッシュのような更年期障害に似た症状があらわれた場合、西洋医学で治すのはなかなか難しいのが現状です。普通の更年期障害ならホルモン補充療法といって、激減したエストロゲンを補充する治療法があり、それによってホルモンバランスを整え、症状を改善します。
ところが、ホルモン療法を行っている乳がんの患者さんの場合、エストロゲンを補充すると、かえってがんが元気になってしまい逆効果なので、エストロゲンの補充は基本的には行いません。
では、症状を改善するために、漢方薬を用いることは大丈夫なのでしょうか? これについて岡本さんは次のように語ります。
「まだ研究段階ですが、漢方薬に含まれるのはフィトエストロゲン(植物由来のエストロゲン)といって、がん化を促すのではなく、逆にがんを抑制する働きがあるのではないかといわれています」
漢方の専門家との相談を
なお、漢方薬にも稀に副作用が出ることがあります。1番多いのは甘草という薬剤によるもので、血圧上昇やむくみ、低カリウム血症などを起こすことがあるので、服用する漢方薬に含まれる甘草の量に注意が必要です。漢方薬といえども食物アレルギーと一緒で、体質的に合わないとかかゆみなどが出たりすることがあります。そのようなときは服用を中止し、漢方医に相談するとよいでしょう。
「漢方にも少ないですが、副作用はあります。そういった部分は注意が必要。だから漢方薬の処方を受ける際には、1度は漢方を専門に取り扱っている漢方医の診断を受けることをお勧めします」
岡本さんはそうアドバイスをくれた。
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