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骨粗鬆症など、骨関連事象の対処法と生活上の留意点 乳がんホルモン療法の副作用と対策
日常生活の改善も大切
しかし、薬物治療の前に、まずは生活上の注意を促したり、食事療法や運動療法を勧めることが基本だという。
「どうしても日本人はカルシウムの摂取量が少ないので、カルシウムの多い食事を指導します。ビタミンDの多い食事も大切だし、適度な日光浴も必要です。また、骨のためには運動がとても大事ですから、エクササイズやウォーキングなどの運動を勧めています。できれば1日6000~1万歩ぐらいは歩いてほしいですね」
さらに、転倒することが骨折につながるので、転倒に気をつけることも日常生活では大切だという。
食事 | カルシウムは1日600mg、できれば800mg摂取したい。カルシウムは乳製品や大豆製品、小魚、緑黄野菜、海草などに多く含まれており、良質のタンパク質やビタミンDを多く含む食品と一緒にとると、吸収がよくなる |
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運動 | 30分程度の散歩を続けたい。運動で骨が刺激されると、体内に入ったカルシウムが有効に使われ、骨量が増える。そうすれば、筋肉も強くなり、身のこなしがよくなるから、転倒による骨折の防止もできる |
日光浴 | 夏なら木陰で30分、冬なら手や顔に1時間ていどの日光浴を。紫外線を浴びるとビタミンDがつくられ、カルシウムの吸収をよくする |
薬物療法でよく使われるのがビスホスホネート製剤だ。アレンドロネート(商品名ボナロンなど)、リセドロネート(商品名ベネットなど)の2種類の薬は、骨量増加と骨折防止の効果が認められているという。経口剤で、週に1回服用する。海外では1カ月に1回飲めばいいタイプも登場しているが、日本ではまだ認められていない。
さらに、半年に1回の点滴で効果が持続するというビスホスホネート製剤もある。ゾメタ(一般名ゾレドロン酸水和物)��いう薬で、骨転移を抑制する薬だが、アロマターゼ阻害剤による骨量減少を抑える働きも認められている。ただ、日本ではゾメタは骨転移治療薬としての保険適応は認められているが、骨粗鬆症の治療薬としては承認されていない。
骨の吸収を抑える薬 | 女性ホルモン | 女性ホルモンの分泌が減る閉経期の女性が対象で、更年期症状を改善し骨量の減少を抑える |
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カルシトニン | 骨量の減少を抑え、背中や腰の痛みをやわらげる | |
ビスホスホネート | 骨量を明らかに増加させ、骨折を予防する | |
イプリフラボン | 骨量の減少を抑える | |
ラロキシフェン | 骨量を増加させ、骨折を予防する | |
骨の形成を助ける薬 | ビタミンK2 | 骨量の減少を抑え、骨の形成を助ける |
吸収と形成を調節する | ビタミンD3 | 腸からのカルシウムの吸収と骨の形成を助ける |
カルシウム剤 | 食事からカルシウムが十分とれない場合、長期に服用すれば骨量減少の防止になる |
ゾメタで驚くべき発表
なお、ゾメタについては今年のASCO(米国臨床腫瘍学会)で、オーストリアの研究グループから注目すべき発表が行われている。
ホルモン療法を受けている閉経前の早期乳がんに対して、骨転移の抑制効果だけでなく、ほかの部位についても、有意な再発抑制効果を示すことがわかったというのだ。この発表について、矢形さんも驚きの表情を隠さない。
「半年に1回の投与で再発率が抑制できるというのは今まで聞いたことがありません。もともと半年に1回でいいというのは、骨の作用を考えてのことであり、がん細胞に対して半年間も作用を及ぼし続けるというのは衝撃的です。直接的な抗腫瘍活性のほかにも、何らかの免疫賦活作用が長期的に効果を及ぼしていることも考えられますが、今後の解析や追試に期待したいと思います」

なお、ビスホスホネート製剤については、最近、経口・注射を問わず、顎の骨壊死の副作用が報告されており、長期間使用することによってリスクが増加することもいわれている。顎骨壊死の多くは、抜歯などの歯科治療の際に発現していることが多く、歯科または口腔外科で治療を受ける際は、ビスホスホネート製剤で治療を受けていることを伝えるなど、注意が必要だ。また、日ごろの口腔衛生が大切だという。
今後の課題について、矢形さんは次のように語っている。
「私のところでは、アロマターゼ阻害剤を使う人に対しては原則的に年1回、定期的に骨量の測定を行っています。しかし、本来はアロマターゼ阻害剤を使っているかどうかにかかわらず、すべての人に関係するのが骨粗鬆症です。病院ぐるみ、国ぐるみで、真剣に対策に取り組むべきときだと思います」
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