今、最もホットな話題――開発が進む3つのタイプの抗体薬
第Ⅰ相試験で奏効率18%と好成績だった抗PD-1抗体
nivolumab(ニボルマブ:一般名)という、抗PD-1抗体も、第Ⅰ相試験で注目すべき成績を残している。第Ⅰ相試験は様々な種類のがんを対象にして行われ、どのがんに効果があるのかが調べられる。その結果、nivolumab(ニボルマブ)が効果的だったのは、非小細胞肺がん、メラノーマ、腎細胞がん、大腸がんなどだった。
「非小細胞肺がんに関しては、がんが半分以下に縮小した人が、76人中14人だったという結果が報告されています。奏効率は18%。通常、第Ⅰ相試験の奏効率は3~4%程度が普通ですから、18%というのは、ちょっと驚くべき数字です」
現在は第Ⅱ相試験が行われている。非小細胞肺がんの2次治療では、*タキソテールが標準的治療薬の1つである。そこで、タキソテール単独療法と、タキソテールとnivolumab(ニボルマブ)併用療法の比較試験が進行中だという。
また、抗PD-1抗体に関しては、別の臨床試験も始まっている。がん細胞が持つPD-L1の発現状態を確認し、PD-L1高発現の患者さんだけを対象に、抗PD-1抗体の効果を調べる第Ⅰ相試験だという。
「この試験が行われることになったのは、nivolumab(ニボルマブ)の第Ⅰ相試験の結果を解析したところ、興味深いことが明らかになったからです。がん細胞にPD-L1が発現している人と、発現していない人を比べたところ、発現しているほうが、よく効いた人が多かったのです」

次のようなデータが報告されている。PD-L1陰性の場合、効果があったのは17人中0人。それに対し、PD-L1陽性の場合は25人中9人に効果があった(図3)。そこで、PD-L1陽性の固形がんの患者さんだけを集めて、どのような効果が得られるかを調べることになったのである。
「抗PD-1抗体の場合、どのような人に効きやすいのかが明らかになってくる可能性があります。このような目印をバイオマーカーといいますが、バイオマーカーが明らかになれば、治療成績が向上しますし、無駄な治療も行わなくてすみます」
PD-L1陽性の人だけを対象にした国際的な臨床試験には、国立がん研究センターも参加しているという。
*タキソテール=��般名ドセタキセル
第Ⅰ相試験の結果で有望視される抗PD-L1抗体
抗PD-L1抗体も第Ⅰ相試験が終了している。いろいろな種類のがんに対して治療が行われたが、効果が高かったのは、非小細胞肺がんやメラノーマだったという。「がんが半分以下に縮小したのは、非小細胞肺がんの場合、49人中5人。奏効率は約10%でした。前にも述べた通り、第Ⅰ相試験の奏効率は3~4%が普通ですから、これもよく効くという印象です」試験の対象となった患者さんのがんが、どのように変化したのかも報告されている(図4)。

通常の臨床試験のように腫瘍が増悪した時点で試験を終了した患者さんもいるが、1度増悪しても中止せず継続する中で効果が得られた患者さんもいたのだ。
副作用は皮疹や下痢など マネージメントは可能
ここで紹介した新しい免疫療法薬は、どの薬も副作用は似ている。最もよく発現する副作用は皮疹で、次が下痢だという。また、点滴反応といって、点滴中や点滴後(24時間以内)にアレルギーのような症状が現れることがある。
「副作用はありますが、十分にマネージメントできる範囲のものが中心です。ただし、今後、抗CTLA-4抗体+抗PD-1抗体、あるいは抗CTLA-4抗体+抗PD-L1抗体といった併用療法の臨床試験が行われるようになると、激しい副作用が現れてくることも考えられます。CTLA-4やPD-1およびPD-L1は、免疫にブレーキをかける役割を担っています。そのブレーキの働きを阻害し過ぎることで、免疫の暴走が始まる危険性があるのです」十分に注意しなければならない点はあるが、抗CTLA-4抗体、抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体への期待は大きい。
「3タイプの薬がありますが、どれも有望です。それは、第Ⅰ相試験から始まって、第Ⅱ相試験、第Ⅲ相試験と順調に進んできていることからも明らかです。現在のところ、抗CTLA-4抗体のipilimumab(イピリムマブ)がアメリカでメラノーマの治療薬として承認されているだけですが、今後、日本でも承認されると考えられます。数年のうちには、非小細胞肺がんの治療薬としても、どれかが承認されることでしょう。また、バイオマーカーが見つかることも、望まれています」
バイオマーカーが発見されれば、実用化に向けてさらに一歩近づくことになるだろう。臨床試験の結果次第だが、新しい治療薬の登場はそう遠くはなさそうだ。
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