がん細胞が組織をつくるとNK細胞だけでは太刀打ちできない。免疫細胞を総動員して攻撃する必要性が これだけは知っておきたい免疫療法の基礎知識

監修:中山俊憲 千葉大学大学院医学研究院免疫発生学教授
取材・文:柄川昭彦
発行:2008年12月
更新:2013年4月

進行再発頭頸部がんでは腫瘍の縮小も見られた

頭頸部がんに対しても、進行再発がんを対象に臨床試験が行われた。このときは、NKT細胞を活性化する方法としては、第1の方法と第2の方法の両法が使われている。第1の方法の場合、樹状細胞を鼻の粘膜に注射するのだが、樹状細胞は頭頸部がんの所属リンパ節である首のリンパ節のみに行き、そこに存在するNKT細胞を活性化させる。それによって、近くにあるがん細胞を攻撃するのである。

一方、第2の方法では、がんに血液を送っている栄養血管に、活性化したNKT細胞を送り込むことで、がん細胞を攻撃する手法となる。

この2つの方法を組み合わせて行ったところ、がんが小さくなる例が10例中3例、小さくはならないが進行が止まった例が全体の3分の2程度あったことが確認された。

「肺がんでは小さくなる例はありませんでしたが、頭頸部がんでは見られました。栄養血管に直接入れる方法も行っているので、こうした違いが現われるのでしょう」

肺がんに対するNKT細胞療法は、近々先進医療に認められることになると見られている。そうなれば、この治療だけは自費になるが、他の部分は保険診療との併用で治療を受けることができ、患者さんにとって、医療費の負担軽減につながることになる。

また、頭頸部がんに対するNKT細胞療法の研究は、文部科学省の『がんTR事業』(基礎研究と将来の革新的な治療の橋渡しとなる研究)にも選ばれており、現在、臨床応用に向けて研究が進んでいるという。

[頭頸部がんに対するNKT細胞免疫療法]
図:頭頸部がんに対するNKT細胞免疫療法

免疫療法に過大な期待を持たないように

がんの免疫療法の研究は、日々進んでいると言っていいだろう。がんの患者さんの中には、免疫療法に期待を寄せている人も多いに違いない。そこで、免疫療法を受ける場合、どのような���に注意すべきかについて、中山さんに教えてもらった。

「免疫療法の研究をしてきた経験をもとに話をすれば、現在の段階では、免疫療法は限界がある治療法だと言わざるをえません。それは納得しておいたほうがいいと思います。たとえば、進行再発がんの場合、治療がうまくいって、生存期間が半年延びるとか、1年延びるということがあったとしても、免疫療法で進行期のがんが完全に治ってしまうということは、まれです。治療を受けることで何が期待できるのか、それを医師からよく説明してもらい、しっかり理解することが大切です。治療を受ける前に、セカンドオピニオンを受けることもすすめられますね」

免疫療法として巷で行われている治療法には、実にいろいろなレベルがあるのも事実である。自分にとってどの治療が適切なのか、慎重に検討してほしい。

「ただ、私たちの体は、もともと免疫の働きでがん細胞をやっつけているのですから、これを上手に治療に生かしていくことは、これからも考えていかなければなりません。いくつかの免疫療法を併用するとか、免疫療法と放射線療法を併用するといった治療も、可能性を秘めています」

免疫療法の研究は着実に進化しているという。将来に期待しながら、現時点における研究の成果を正しい形で享受したいものである。


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