再発予防治療としてがんの完治をめざす樹状細胞ワクチン療法 がん個別化医療の基盤的治療として、期待高まる免疫細胞治療
免疫細胞治療でも重要な個別化医療
樹状細胞ワクチン療法では、樹状細胞からがんの目印を教え込まれたCTLが選択的にがん細胞を攻撃する。しかし、がん細胞はCTLからの攻撃を逃れるために、自らのがんの目印を巧妙に隠す場合がある。例えば胃がん患者では50パーセント以上、非小細胞肺がん患者では60パーセント以上にその傾向があったという報告(*2)もある。
その場合、樹状細胞ワクチン療法は期待通りの効果を上げられない。その場合、どうするか。神垣さんはこう話す。
「患者さん1人ひとりによって、がん細胞の状態は全く異なります。樹状細胞ワクチン療法の効果が期待できない患者さんには、違う作用でがんを攻撃する免疫細胞治療、例えばαβT細胞療法やγδT細胞療法などをお勧めしています。
樹状細胞ワクチン療法は確かに効果的ですが、それだけを勧めるわけではありません。結局は、患者さん1人ひとりに合わせた治療=個別化医療を提供するのが、最も効果的なのです」(図3)

個別化医療を実施するポイントは、患者さんそれぞれのがん細胞や遺伝子などを事前にしっかり検査すること。瀬田クリニックグループでは「免疫組織化学染色検査」(図4)など科学的な検査プロセスを実施し、更には治療歴や病状などを考慮の上で患者個々に最適な治療を決定していく。

*2=埼玉医大雑誌第28巻 第2外科/第47回肺癌学会総会 北海道大学1内・札幌医大1病理
手術後の免疫細胞治療でがんの完治をめざす
様々な種類がある免疫細胞治療だが基本的には採血→細胞加工→投与を1治療として数回繰り返す。一部のがんを除きほぼ全ての主要ながん種に適用でき、通院治療も可能。治療費は公的保険が適用されないこともあり、治療法にもよるが1治療あたり約20万~40万円かかる。細胞培養には専門施設や熟練の技術者が必要で、安全性や治療効果を確保するため���コストともいえる。現在、多くの患者さんから公的保険適用を望む声が上がっている。
免疫細胞治療を受けたい場合、「まずは主治医に相談してください」と神垣さんは言う。「おかかり中の主治医と我々が連携することで、よりよい協力体制を作ることができます。現在行っている標準治療と効果的に組みあわせたり、樹状細胞ワクチン療法のために手術で切除したがん細胞を確保する上でも大切です」
主治医に相談しづらい場合は、「免疫細胞治療施設に先に相談していただければ、主治医への相談方法を含め、ご相談を受けます」と話した。
「私は、なんとしてもがんを治したいと考えています。特に、手術や放射線で大きな塊を取り去ったあとに免疫細胞治療を実施することは、完治を目指す大きなチャンス。私の所には、再発予防目的で受診される方や、ある程度進行した状態で受診される方など様々な患者さんが来院されますが、そういった患者さん1人ひとりに合わせ、個々に最適な治療を提供することが、がんの克服に繋がると考えています」。1万人以上の治療実績を持つ専門施設で患者さんと向き合ってきた神垣さんは、そう熱く語ってくれた。
肝胆膵がんの再発予防の現状は?
数ある再発予防治療の1つとして期待できる免疫細胞治療
監修:國土典宏 東京大学大学院医学系研究科肝胆膵外科学・人工臓器移植外科学分野教授
肝胆膵がんは再発が多いので、再発予防治療の進展がとくに待たれる分野です。まず、肝臓がんの再発予防は、有力な方策としてはまずインターフェロン治療で、ほかにビタミンA誘導体のレチノイドや分子標的薬のネクサバールなどで再発予防の取り組みが行われていますが、どの方法が良いのか、まだ結果は出ていません。免疫細胞治療も重要な選択肢の1 つと考えており、東大病院でも免疫細胞治療の研究を始めたところです。
一方膵がんの再発予防については、ジェムザールが効果ありというデータが出ています。東大病院でもジェムザールを使用するようになって、成績が向上した実感を持っています。10年前の5年生存率は一般的に10数パーセントと大変低かったのに対し、現在では30~40パーセントまで上昇しているようです。こちらも、免疫細胞治療を上乗せすることで、さらに再発率が減少するのではないかと期待しています。
胆道がんに関しては再発予防のための決定打が出ていないのが現状ですが、免疫細胞治療に期待をかける患者さんが多いのも事実です。いずれにしても、免疫細胞治療は、がんを切除したあとに残った、顕微鏡で見えない小さながん細胞を叩く効果が望めます。そのため、がん切除後の再発予防を目的とした臨床研究が盛んに行われています。
また患者さんに気をつけてほしいことは、肝・胆・膵がんは専門施設とそうでない施設との技術や成績の差が大きいということです。最初に診てもらった病院で「切除できない」と言われた場合でも、専門施設なら切除できる場合があります。あきらめずに専門医を探してセカンドオピニオンを受けてください。
このように再発予防については、現在さまざまな研究が行われています。今後は新しい研究の進展に期待をかけてみましょう。
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