がんに放射線を照射するのは、免疫の司令塔・樹状細胞の働きを高めるため 免疫療法の最先端を走る放射線免疫療法

監修:岡本正人 セレンクリニック医師 武蔵野大学薬物療法学研究客員教授
取材・文:柄川昭彦
発行:2007年8月
更新:2013年4月

抗がん剤治療に並行して放射線免疫療法を

症例4 60歳代前半・女性

卵巣がんで、卵巣の摘出手術を受けたが、再発した患者。腎臓と骨盤内のリンパ節に転移が見られた。

転移巣である腎臓に放射線照射を行い、樹状細胞を局所注射した。腎臓のがんは消失し、リンパ節のがんもほとんど消えている。腫瘍マーカーは、CA125が70から21に下がり、完全に正常域に入った。

症例5 50歳代後半・女性

卵巣がんで手術を受けたが、あまりにも進行しており、一部を切除することしかできなかったという。腹膜に種をまいたように転移する腹膜播種が見られ、肺転移と骨転移もあった。

パラプラチン(一般名カルボプラチン)とタキソテール(一般名ドセタキセル)を併用する抗がん剤治療を受け、それと並行して放射線免疫療法が行われた。

「どちらの効果かはっきりはしませんが、がんはきれいに消えました。PETによる検査も受けていますが、明らかになったがんはありませんでした」

治療からすでに10カ月が経過するが、今もいい状態が続いている。

症例6 30歳代半ば・男性

膀胱がんで膀胱の全摘手術を受けているが、再発した患者。3カ所のリンパ節に転移が見られた。

その3カ所転移巣のうち、1カ所に絞って放射線のピンポイント照射と、樹状細胞の局所注射を行った。この治療により、がんはすべて消えた。9カ月以上経過するが、再発は起きていない。

[リンパ節転移した膀胱がんに対する治療効果]
治療前/治療後

膀胱がんが多発にリンパ節転移した患者さんに放射線免疫療法したら、リンパ節転移が消失した

局所での治療成績は9割が完全寛解か部分寛解

ここに紹介した放射線免疫療法は、すでに70例の治療が行われている。治療を担当した岡本さんによれば、対象となった患者の年齢は、5歳から84歳までだという。身体的負担の軽い治療法なので、かなり高齢の人も対象となるようだ。

岡本さんは、120例のなかから、治療後4~5カ月以上が経過し、治療成績を評価できる18例をまとめ、今年4月に開催されたAACR(米国がん学会)で報告している。前に紹介した症例1~症例7は、その18例のなかから選び出したものだ。

18例の治療成績は、局所の反応と全身の反応に分けてまとめられている。それによると、局所の反応は、CR(完全寛解)が8例(44.4パーセント)、PR(部分寛解)が8例(44.4パーセント)、SD(安定)とPD(進行)がそれぞれ1例(5.5パーセント)となっている。CRとPRで、ほぼ9割を占めているわけだ。

全身の反応を見ると、CRが3例(16.7パーセント)、PRが5例(27.8パーセント)と治療成績は低下する。

まとめると、治療を加えた局所と周辺領域のリンパ節転移に対しては、かなりよい成績が得られているが、離れた転移巣では治療効果はやや弱いということになりそうだ。

「全体的に見ると、まあまあというところでしょうか。副作用は、ピシバニールによる発熱があります。非ステロイド性消炎鎮痛薬で治療し、熱が上がりすぎないように調節しています。あまり熱が出ないくらいのほうが、治療成績がいいように思えますね」

放射線免疫療法はまだ新しい治療法だが、今後に大きな期待が寄せられている。


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