がんに放射線を照射するのは、免疫の司令塔・樹状細胞の働きを高めるため 免疫療法の最先端を走る放射線免疫療法
抗がん剤治療に並行して放射線免疫療法を
症例4 60歳代前半・女性
卵巣がんで、卵巣の摘出手術を受けたが、再発した患者。腎臓と骨盤内のリンパ節に転移が見られた。
転移巣である腎臓に放射線照射を行い、樹状細胞を局所注射した。腎臓のがんは消失し、リンパ節のがんもほとんど消えている。腫瘍マーカーは、CA125が70から21に下がり、完全に正常域に入った。
症例5 50歳代後半・女性
卵巣がんで手術を受けたが、あまりにも進行しており、一部を切除することしかできなかったという。腹膜に種をまいたように転移する腹膜播種が見られ、肺転移と骨転移もあった。
パラプラチン(一般名カルボプラチン)とタキソテール(一般名ドセタキセル)を併用する抗がん剤治療を受け、それと並行して放射線免疫療法が行われた。
「どちらの効果かはっきりはしませんが、がんはきれいに消えました。PETによる検査も受けていますが、明らかになったがんはありませんでした」
治療からすでに10カ月が経過するが、今もいい状態が続いている。
症例6 30歳代半ば・男性
膀胱がんで膀胱の全摘手術を受けているが、再発した患者。3カ所のリンパ節に転移が見られた。
その3カ所転移巣のうち、1カ所に絞って放射線のピンポイント照射と、樹状細胞の局所注射を行った。この治療により、がんはすべて消えた。9カ月以上経過するが、再発は起きていない。

局所での治療成績は9割が完全寛解か部分寛解
ここに紹介した放射線免疫療法は、すでに70例の治療が行われている。治療を担当した岡本さんによれば、対象となった患者の年齢は、5歳から84歳までだという。身体的負担の軽い治療法なので、かなり高齢の人も対象となるようだ。
岡本さんは、120例のなかから、治療後4~5カ月以上が経過し、治療成績を評価できる18例をまとめ、今年4月に開催されたAACR(米国がん学会)で報告している。前に紹介した症例1~症例7は、その18例のなかから選び出したものだ。
18例の治療成績は、局所の反応と全身の反応に分けてまとめられている。それによると、局所の反応は、CR(完全寛解)が8例(44.4パーセント)、PR(部分寛解)が8例(44.4パーセント)、SD(安定)とPD(進行)がそれぞれ1例(5.5パーセント)となっている。CRとPRで、ほぼ9割を占めているわけだ。
全身の反応を見ると、CRが3例(16.7パーセント)、PRが5例(27.8パーセント)と治療成績は低下する。
まとめると、治療を加えた局所と周辺領域のリンパ節転移に対しては、かなりよい成績が得られているが、離れた転移巣では治療効果はやや弱いということになりそうだ。
「全体的に見ると、まあまあというところでしょうか。副作用は、ピシバニールによる発熱があります。非ステロイド性消炎鎮痛薬で治療し、熱が上がりすぎないように調節しています。あまり熱が出ないくらいのほうが、治療成績がいいように思えますね」
放射線免疫療法はまだ新しい治療法だが、今後に大きな期待が寄せられている。
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