ワクチンと抗がん剤の併用によって効果アップ ここまで進んだがんの「テーラーメード型ワクチン療法」
抗がん剤との併用で生存期間延長
この結果から、あらためて前立腺がんのワクチン療法とエストラサイトの半量を組み合わせた併用療法の臨床研究が行われました。
その結果、生存期間の中央値がお皿のタイプがA2の人(27人)では25カ月という高い効果が得られたのです。
「ふつう、ホルモン療法も抗がん剤も効かなくなると、積極的治療は行わずベストサポーティブケア(無治療)の対象になります。生存期間の中央値は10~12カ月ぐらいです。それに比べて、併用療法の25カ月というのは非常に高い効果です。がんワクチン単独ではここまでの成績は出ていないのです」と山田さんは評価しています。
中には、すでに4年以上がんワクチン療法を続けて元気に暮らしている人もいるといいます。「病状はPSA(前立腺がんの特異的腫瘍マーカー)で追っているのですが、最初は1000ぐらいあった人もいます。このぐらい高いとふつう余命は2~3カ月。それが3~4ぐらいに低下して長期間維持している患者さんが多いのです」と山田さん。多くの患者さんは骨転移を起こしていますが、それも治療で一部が消えることもあるそうです。
前立腺がんでは、タキソテール(一般名ドセタキセル)とプレドニン(一般名プレドゾロン)の併用化学療法が間もなく認可される見込みです。これを受けて、今後はタキソテールとワクチンの併用も検討しているそうです。
膵臓がんやスキルス胃がんでも併用が効果
さらに、膵臓がんや大腸がん、スキルス胃がんでも、抗がん剤との併用療法の臨床研究が行われています。
膵臓がんでは、転移した高度進行膵臓がんの患者さん20人を対象に第1相と第2相の臨床試験が行われています。この人たちにジェムザール(一般名塩酸ゲムシタビン)とがんワクチン療法で3~4種類のペプチドを投与したところ、奏効率は25パーセント、1年生存率は33パーセントで生存期間の中央値は8.5カ月という結果でした。ここまで進行した膵臓がんでも、併用療法の効果がかなり期待できるのです。
一方、大腸がんとスキルス胃がんでは、やはり転移があり、すでに化学療法が効かなくなった患者さん11人が参加して、TS-1という抗がん剤とがんワクチン療法の併用試験が行われました��その結果、4人(3人はスキルス胃がん)で8~25カ月にわたってがんの増大が停止しました。
「TS-1との組み合わせは大変相性がよく、常用量で免疫の抑制がなく、逆にワクチンと併用すると相乗効果があるのです」と山田さん。
進行大腸がんでは、がんワクチン単独に比べ5-FUとがんワクチンの併用で、生存期間が延長するという結果も出ています。
他のがんでも可能性はありますが、「抗がん剤によって免疫抑制の強いものもあれば、抑制もしないけれど相乗効果もないものもあります。抗がん剤の適応もありますから、なかなか併用療法に適した抗がん剤を各がんで探してくるのが大変なのです」と山田さんは話しています。

夢物語だったワクチン療法が現実のものに

こうした研究成果をもとに、久留米大学ではワクチンの医薬品としての承認申請に向けて活動を始めました。2003年、大学発ベンチャー企業「グリーンペプタイド」(会長・免疫学教室教授伊東恭悟さん)を設立。ホルモン療法が効かない再燃前立腺がんと初期治療が効かなかった脳腫瘍(グリオブラストーマ)を対象に、安全性の確認を中心とした第1相臨床試験(治験)を行ったのです。
用意した14種類のペプチドの中から血液検査で患者さんにあったものを4種類選び、1回の投与量を1ミリグラム、3ミリグラム、5ミリグラムと3段階設定してそれぞれ6人ずつの患者さんに投与するというものです。
ワクチンは、前立腺がんでは足に4カ所、脳腫瘍では背中に皮下注射で投与します。結局、前立腺がんで、投与量が第3段階に達したところで、注射した部位の皮膚の炎症がひどくなって、試験は中止されました。第2段階、つまり1回3ミリグラムが、最大投与量という結果だったのです。
といっても、これは「大学の臨床研究で使っていた量」。予想どおりの結果だったそうです。がんワクチン療法は、副作用が少ないのも患者さんにとって大きなメリットです。
「副作用は、がんワクチンを注射した部位の皮膚の炎症が主で、打った翌日だるい、微熱が出るという人が少しいるぐらいです」と山田さん。
いずれも軽度です。これまで、500例近くの患者さんにがんワクチン療法が実施されましたが、重い副作用はないそうです。外来通院で治療が受けられるのも大きなメリットです。
投与部の皮膚炎症反応 | 80% | グレード1-2 |
発熱 | 5% | グレード1-2 |
帯状疱疹 | 1% | グレード2 |
じんましん | 0.6% | グレード1-2 |

投与後24カ月後

投与後36カ月後
「今回、臨床研究で積み重ねてきたデータが臨床試験でも確認されたことは大きな成果。
前立腺がんでは、試験終了後も効果のある患者さんでは治療が続いています。大学にもこれまでのデータの蓄積がたくさんあります。そこで、第2相試験は飛ばして、次はがんペプチドワクチンを投与した人と投与しない人数100人で生存期間をみる第3相比較試験に入りたいと思っています」と山田さんは語っています。
夢物語だったがんワクチン療法も、いよいよ現実のものとなりつつあるのです。
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