「免疫栄養法」で、手術後の感染症発生率が減少 話題のイムノ・ニュートリションとは?」
腸管免疫と免疫栄養2つの効果
「免疫栄養法の特徴として忘れてはいけないのが、“腸を使って栄養を補給する”ということのメリットです」と福島さん。
腸管は消化吸収という役目を果たしているだけでなく、ヒトでは体中のリンパ球など免疫細胞の約半数が集まる最大級の免疫臓器といわれています。
「手術前後や入院中は、点滴で血液中に栄養を補給する高カロリー輸液が行われていますが、腸管を使わずにいると免疫機能も落ちてしまいます。腸を活性化させると、粘膜のバリア機能が保たれ、サイトカイン産生や好中球の活性化などにも有利に働き、免疫機能が高まります」
腸を使った経腸栄養と点滴による高カロリー輸液を比べると、経腸栄養のほうが感染症の発生率が少ないというデータが出ているそうです。
外科手術前5~7日間、1日1000ミリリットルを目標に
さて、免疫増強栄養剤を摂取すると、術後の感染症はどの程度防げるのでしょうか。
「欧米のメタアナリシスによると、外科手術予定の患者さんに、術前5~7日間1日1000ミリリットル程度を摂取してもらい、術後早期にも経腸栄養を行うことで、術後の感染症が約50パーセント減少します。なお、栄養障害がない場合は、術前だけの摂取でも、同等の効果が期待できるという報告もあります」
日本での臨床研究において、術前の免疫栄養法を行った場合と行わなかった場合とを比較検討したところ、感染症発生率は、この栄養法を行ったほうが低く、欧米とほぼ同様の結果が得られました(表1)。
「免疫栄養法は、消化器外科の手術、たとえば食道がんや胃がん、膵臓がん、大腸がん、肝臓がんなど、感染症や合併症が懸念される手術に対してよい方法と考えられます。海外では、この栄養法によって縫合不全が減少するというデータもあります。なお、合併症や感染症の発生率が低い手術には、あまり意味がないかもしれません」
手術 | 術後感染症発生率 | |
---|---|---|
インパクト® 投与 | インパクト® 非投与 | |
食道がん手術 | 7/54(13%) | 34/160(21%) |
胃がん手術 | 10/37(27%) | 16/41(39%) |
大腸がん手術 | 3/34(9%) | 10/47(21%) |
その他の手術 | 0/50(0%) | 15/46(33%) |
計 | 20/175(11%) | 75/294(26%) |
*p<0.001
感染症が防ぐことができれば、患者さんも苦しむことなく、治療費の負担も軽くなり、医療機関にとっても入院日数や医薬品・処置料・人件費などの削減が可能となり、経済効果も期待できます。
これから手術を受ける方は、主治医に相談してみるとよいでしょう。病院によっては、医師や看護師、栄養サポートチームなどの指導で入院中の食事に取り入れたり、推奨したりしているところもあります。免疫増強栄養剤は食品なので、医師の処方箋がなくても購入できますが、公的な健康保険は適用されません。手術日まで自宅待機するときや通院の場合は、病院の売店や宅配便などで入手して、家庭で飲むこともできます。
「1日1000ミリリットルを目標に、手術前1週間から5日前からスタートして、手術前日まで飲むとよいでしょう」
先に食事を食べると満腹になって飲みきれないので、1日3~4回、先に免疫増強栄養剤を250ミリリットル飲んでから、不足分を食事で補うのがよいそうです。
免疫増強栄養剤は、抗がん剤治療中の白血球減少時などにも効果が期待できそうですが……。
「抗がん剤治療中についても、白血球減少を防いだりするなど、良い効果が期待できないかと興味深いところですが、今のところ十分なデータがないのでなんともいえません。吐き気などの副作用が強くて口から何も食べられないときなど、経鼻チューブなどで胃腸から栄養補給するのはよいでしょう」
この栄養法は、外科だけでなく、救命救急や内科を含めたICUの重症患者さんなどにも行われていますが、非常に重症な患者さんの場合は効果にややばらつきがみられ、なかには逆効果になると懸念される場合もあるそうです。
「重症の敗血症などの場合は、過剰な免疫反応によって、細菌だけでなく自分自身の組織を傷つけてしまう可能性もあるので注意が必要です。この場合アルギニンのとりすぎに注意すべきという意見もあります。糖尿病の方などはカロリーオーバーになる懸念があります。腸閉塞の場合はこの方法は使えません」
長期使用についてのデータはありませんが、「通常の栄養補助食品と比べると栄養成分にやや偏りがあるので、腎臓や肝臓の悪い方は担当医と相談してください」と福島さんはアドバイスしています。
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