進行・再発肺がんは生存期間が延長、頭頸部がんは縮小 免疫システムを総動員してがんを叩くNKT細胞療法
よく効く人は生存期間が約30カ月以上に延長
さらに、患者さんの生存期間で見てみると、同じようにNKT細胞療法を行っても、よく効く人とそれほど効かない人に分かれることがわかりました。
投与した17人の患者さんを見てみると、治療前のNKT細胞の数は人によってまちまちです。投与後のNKT細胞の増え方もまちまちでした。また、INF-γを産生する能力が2倍以上に増えた人(A群)と、それ以下だった人(B群)とに分けると、A群は10人、B群は7人でした。
両群ともに、がんが小さくなった人はおらず、A群では、がんの大きさが80~120パーセントとあまり変わらなかった人(SD)が4人、120パーセント以上に大きくなった人(PD)は10人。B群ではSDは1人で、残り6人はPDでした。
問題は生存期間の長さです。
直接比べたわけではありませんが、これまでのデータでは、進行期や再発肺がんの生存期間中央値は4.6カ月という数値があります。これに対して、今回の17人の生存期間中央値は18.6カ月でした。ところが、B群の生存期間中央値が9.7カ月だったのに対して、A群の生存期間中央値は31.9カ月だったのです。
どうやら、INF-γの産生の違いは生存期間の延長に大きく関係しているようです。つまり、B群のように産生が少ない人への治療効果は少ししかないが、A群のように産生が2倍を超える人にはNKT細胞療法が効いて長生きする、ということが明らかになったのです。
「治療が効くか効かないかが事前にわかれば、患者さんも治療を受けやすくなります。私たちは、INF-γの産生能力の判定につながる遺伝子を見つけ、現在、その研究を行っているところです」

頭頸部がんが80パーセント以下に縮小

※がんの直径が登録時の48%に縮小した
次に、中山さんたちが千葉大学耳鼻咽喉科教授の岡本美孝さんらと共同で取り組んだのが、頭頸部がんに対するNKT細胞療法の臨床研究。
咽頭がんや口腔がん、上顎がんなどの頭頸部がんは、標準治療では予後不良で、手術でがんを摘出すると顔面の欠損を伴うことがあり、そうなると、患者さんのQOL(生活の質)は著しく低下してしまいます。
一方、がんの部位ががんに栄養を送る動脈の終末部になっているので、動脈からリンパ球を注入すると、ほとんどがそこに集積するという利点もあります。
そこで、局所再発の8例について、第1相、第2相臨床研究として、(1)αガラクトシルセラミドを添加した樹状細胞の投与と、(2)試験管の中でαガラクトシルセラミドを添加して活性化したNKT細胞の投与、という2つの方法を併用しました。
(2)の方法を採用したのは、動脈からの注入でもNKT細胞ががんに集積しやすいという頭頸部がんの特徴を利用するためです。
成分採血によってリンパ球を採取して、1週間後にαガラクトシルセラミドを添加した樹状細胞を投与し、2週間後に樹状細胞と活性化したNKT細胞の両方を投与しました。投与は、この1クールで終わりです。
「頭頸部がんの場合、樹状細胞の投与量は肺がんの場合の10分の1ほど。ツベルクリン注射と同じぐらいの0.2㏄程度なので、痛みもほとんどありません」
試験の結果は、がんが80パーセント以下に小さくなった(PR)が3例で、大きさはそのまま(SD)が4例。大きくなった(PD)というのは1例のみでした。
副作用が少なく1度の治療で効果が持続
肺がんでも頭頸部がんでも、副作用がほとんどないというのは特筆すべきでしょう。たとえば、頭頸部がんの場合、重篤な有害事象はゼロ。軽度の「発熱」「倦怠感」「リンパ球減少」などはありましたが、いずれも一過性のもの。やや重い「咽頭皮膚瘻」が1例見られましたが、これはがんの縮小によるもので痛みなどはなかったということです。
もう1つ注目すべきは、治療は肺がんでは4回に分けて2クール、頭頸部がんでは1クール行われますが、その1度限りで効果が保てること。なぜ1度の治療でいいのか、中山さんはこう語ります。
「1度の治療でその人の免疫システム全体が、がんを抑制するようにガラッと変わることが考えられます。そういう方向に誘導する働きがNKT細胞療法にはあるようです。治療を何度も続けて行うと、作用が強く出すぎてかえってよくないことは、動物実験でも明らかになっています」
研究の結果を踏まえ、千葉大学ではNKT細胞療法について先進医療の実施を申請中。
「これまで約100人の患者さんに臨床試験に協力してもらいました。私たちの臨床試験は研究費で行われているため、大学の倫理委員会で承認された厳格なプロトコール(手順)を遵守して行っており、対象(病期、がん種など)も限られています。NKT細胞療法の治療費は無料なのですが、希望者の1割程度しか対象にできないのが残念です。先進医療に承認されれば、もっと受けやすくなるでしょう」
将来的には、NKT細胞療法をがんの術後の再発・転移を防ぐ目的で活用したいそうです。また、肝がんや膵臓がんなどにも適応範囲を広げていく予定とのことです。
同じカテゴリーの最新記事
- 1人ひとりの遺伝子と免疫環境で治癒を目指す! がん免疫治療が進んでいる
- 自分の免疫細胞も活用してがんを攻撃 PRIME CAR-T細胞療法は固形がんに効く!
- 頭頸部がんに対する「光免疫療法」の第Ⅲ相試験開始 第Ⅱ相試験の好結果を受け、早期承認への期待高まる!
- 白血病に対する新しい薬物・免疫細胞療法 がん治療の画期的な治療法として注目を集めるCAR-T細胞療法
- 進行膵がんに対する TS-1+WT1ペプチドパルス樹状細胞ワクチン併用療法の医師主導治験開始
- がん患者を対象とした臨床試験で証明された、米ぬか多糖体(RBS)の免疫賦活作用
- 先進医療の結果次第で、大きく進展する可能性も! 進行・再発非小細胞肺がんに対するNKT細胞療法
- 現在3つのがん種で臨床試験を実施中 がんペプチドワクチン療法最前線
- 免疫力アップで照射部位から離れた病巣でもがんが縮小 アブスコパル効果が期待される免疫放射線療法