闘病中や回復期、症状が安定していれば、健康な人以上に栄養を摂ることが重要
必要な栄養管理のギアチェンジ
ところで、私たちの身体は栄養が不足し、飢餓状態になると、セーブモードに切り替わる。エネルギーの消費を抑え、体力を温存するためだ。しかし、がんがあると、飢餓状態になってもセーブモードにならず、大量のエネルギーを消費し続ける。このため、がん患者は、それに見合う十分な栄養を摂る必要がある。
ただ、がんが進行し、末期症状の「悪液質(あくえきしつ)」に至ると、身体が栄養や水分を受け入れられなくなり、エネルギー消費量が徐々に低下する(図1)。この段階で栄養を補給すると、過剰な負荷がかかり、患者はかえって苦しくなる。そこで、エネルギーや水分の投与量を、通常の1/3~1/2に減らす。これを栄養管理の〝ギアチェンジ〟と呼ぶ。
もちろん、個人差があるため、いつギアチェンジするかは、慎重に見極める必要がある。東口さんの施設では、主治医を含む専門スタッフ3人以上が「栄養補給しても改善しない」と判断した場合、あるいはコントロール不能な全身の浮腫(ふしゅ)や胸水、腹水が出した際に踏み切るという。
もっとも、これは悪液質が進み、不可逆的な状態になったケースでのこと。
「闘病中や回復期、症状が安定しているがん患者さんでは、健康な人以上にたっぷり栄養を摂ることが重要」と東口さんは話している。
図1 エネルギー消費量とがんの進展

東口髙志,他.外科治療2007;96:934-41より引用改変
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