プレアルブミン値が合併症発生の有力な予測因子に 胃切除手術前の栄養状態が術後合併症の発生に影響

監修●井田 智 がん研究会有明病院消化器センター消化器外科胃外科副医長
取材・文●柄川昭彦
発行:2017年10月
更新:2019年7月


チューブの改善で胃液の吸引も

この研究によって、胃切除手術の前にはプレアルブミン値を調べ、その値が15mg/dl未満だった場合には、栄養補給を行うとよいことが明らかになってきた。

「検査に関しては、血液検査の検査項目にプレアルブミンを追加するだけでよく、患者さんに身体的な負担をかけることはありません。ただ、経腸栄養剤を投与するため、10日間余り、鼻からチューブを入れたままの状態にするので、それは患者さんにとって決して楽ではないでしょう。術後合併症の影響について、栄養を投与する意義について、十分に理解してもらう必要があります」(井田)

術後合併症が起きた人は、予後が悪いことが明らかになっている。合併症の治療のために入院期間が長くなるのはもちろんだが、それだけでなく、生存期間や生存率にも影響することが明らかになっているのである。

「手術後に合併症が起きると、生命予後が悪化することがわかっています。つまり手術が5年後、10年後の患者さんの人生に影響を与えてしまうことがあるのです。だからこそ、できるだけ術後合併症を減らすことが大切なのです。」(井田)

鼻にチューブを入れたままにするのは大変だが、最近はW-EDチューブという二重構造のチューブがよく使われるようになっている(図3)。内側のチューブは栄養剤を送り込むためのもの。外側のチューブには小さな孔がたくさんあいていて、溜まった胃液を抜くために使われる。

術前に可能な限りENを行うための工夫として、最近では幽門狭窄症例に対しては胃内の減圧とENを同時に行える二重管(W-EDチューブ®)を透視下に留置し、胃内の減圧およびENでの栄養管理を積極的に行っています。プレアルブミン10以下

「幽門狭窄が起きると胃液が溜まってしまい、それを抜くために、チューブをもう1本鼻から入れることもありました。これは患者さんにとって苦痛でしたが、最近は二重構造のチューブが開発されたことで、栄養補給をしながら胃液を抜くことが可能になりました。こうした進歩によって、患者さんの辛さが多少軽減されるようになっています��(井田)

栄養補給が苦痛なく行えるように、さらなる技術の進歩を期待したい。

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