プレアルブミン値が合併症発生の有力な予測因子に 胃切除手術前の栄養状態が術後合併症の発生に影響
チューブの改善で胃液の吸引も
この研究によって、胃切除手術の前にはプレアルブミン値を調べ、その値が15mg/dl未満だった場合には、栄養補給を行うとよいことが明らかになってきた。
「検査に関しては、血液検査の検査項目にプレアルブミンを追加するだけでよく、患者さんに身体的な負担をかけることはありません。ただ、経腸栄養剤を投与するため、10日間余り、鼻からチューブを入れたままの状態にするので、それは患者さんにとって決して楽ではないでしょう。術後合併症の影響について、栄養を投与する意義について、十分に理解してもらう必要があります」(井田)
術後合併症が起きた人は、予後が悪いことが明らかになっている。合併症の治療のために入院期間が長くなるのはもちろんだが、それだけでなく、生存期間や生存率にも影響することが明らかになっているのである。
「手術後に合併症が起きると、生命予後が悪化することがわかっています。つまり手術が5年後、10年後の患者さんの人生に影響を与えてしまうことがあるのです。だからこそ、できるだけ術後合併症を減らすことが大切なのです。」(井田)
鼻にチューブを入れたままにするのは大変だが、最近はW-EDチューブという二重構造のチューブがよく使われるようになっている(図3)。内側のチューブは栄養剤を送り込むためのもの。外側のチューブには小さな孔がたくさんあいていて、溜まった胃液を抜くために使われる。

「幽門狭窄が起きると胃液が溜まってしまい、それを抜くために、チューブをもう1本鼻から入れることもありました。これは患者さんにとって苦痛でしたが、最近は二重構造のチューブが開発されたことで、栄養補給をしながら胃液を抜くことが可能になりました。こうした進歩によって、患者さんの辛さが多少軽減されるようになっています��(井田)
栄養補給が苦痛なく行えるように、さらなる技術の進歩を期待したい。
同じカテゴリーの最新記事
- 腹部からアプローチする究極の低侵襲手術 肺がんのロボット手術がここまで進化!
- ヒト由来の人工皮膚使用で1次1期乳房再建が可能に! ダビンチSPで日本初の乳頭乳輪温存皮下乳腺全切除術
- 日本発〝触覚〟のある手術支援ロボットが登場 前立腺がんで初の手術、広がる可能性
- 薬物療法が奏効して根治切除できれば長期生存が望める ステージⅣ胃がんに対するコンバージョン手術
- 肛門温存の期待高まる最新手術 下部直腸がんTaTME(経肛門的直腸間膜切除術)とは
- 術後合併症を半減させたロボット支援下手術の実力 胃がん保険適用から3年 国産ロボット「hinotori」も登場
- 患者さんによりやさしいロボット手術も登場 新しくなった大腸がんの手術と薬物療法
- ガイドライン作成で内科的治療がようやく整理される コンセンサスがなかった食道胃接合部の食道腺がん
- 手術や術後化学療法を受ける前に知っておきたいこと 大腸がん術後の副作用を軽減する