甲状腺がん 内視鏡下手術により治療効果と術後の整容面を両立

監修●五十嵐健人 日本医科大学付属病院外科・内分泌外科准教授
取材・文●「がんサポート」編集部
発行:2016年8月
更新:2016年7月


飲食時の違和感もなし

術後は、意識が戻ったら一般病棟に戻り、6時間後から水分を取ることが可能になる。当日はベッドでの安静が必要だが、翌朝から歩行や食事が開始され、術後2~3日で退院となる。

日常生活に戻ると、少し胸の空いたシャツを着ても手術器具を入れた3~4cmの鎖骨下の傷痕は衣類に隠れる。内視鏡を挿入した5mmほどの首筋の傷はよく見なければわからないほど目立たなくなる。また、首に傷がないために、首を動かしたときの引き連れ感や、飲食のときの皮膚の動きに違和感をもたないで済む。

安全性に支えられた整容性を

図2 内視鏡下甲状腺切除術(VANS法)経験と手術時間の関係

上級者は100例以上の手術経験者。“斜線のバー”は初回から30例までの平均手術時間で、“塗りつぶしのバー”は31例から100例まで、中級者は38例経験、初心者は17例、それぞれの平均手術時間を示す(日医大医会誌 2012; 8 (1))

デメリットとしては、先進医療は保険が効かないため患者負担は約28万円と高額になることと、医師側からみると神経に近いところでの操作に高い技術が必要となることだ。

五十嵐さんは、「安全性と治療効果を証明していくことが大事です。承認されたからといってすぐに飛びついても出来るような方法ではないので、技術の習得と熟練が必要です(図2)。内視鏡下手術は日常生活の支障を大きく軽減する治療法ですが、それには治療成績が前提。正しい治療技術の普及に期待したい」と話している。

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