ハイクオリティ・ローコストの先端型ミニマム創内視鏡下無阻血腎部分切除術
仮性動脈瘤の心配がない安全な手術
同科では、腎部分切除もロボサージャン手術で行っている。特徴は、阻血せずに切除を行い、切除後に腎臓の縫合を行わない点だ。この手術方法を可能にしているのが、ソフト凝固鉗子である。
「適度に熱を加えることで、通常の電気メスのように表面だけでなく、少し深い部分まで熱を伝えて組織を凝固させることができます。そのため、阻血しなくても、出血を止めながら切っていくことができるのです」
手術は次のような手順で行われる。まず超音波凝固デバイスを使い、腫瘍のまわりに溝を作る(図5)。次にソフト凝固鉗子で溝を深くしてから腫瘍に糸をかけてつり上げるようにし(図6)、最後にソフト凝固鉗子で底部を凝固させながら切っていく(図7)。切除した断面は凝固しているので、縫合する必要はない。
この方法による腎部分切除の手術成績が、同科から報告されている。277人の患者に対して、計15人の医師が手術を行った結果だ(図8)。
「277例の手術で、仮性動脈瘤が0、後出血も0でした。これらは命に関わる合併症ですから、それが起きなかったのは、誇るべき成績だと考えています。腎機能を表すeGFR(推算糸球体濾過量)の術後の変化は、-5.5%で、わずかな低下に抑えられていました。無阻血で手術し、さらに切除部分を縫合しないことによって、腎機能が低下しにくいのだと考えられます」
主な合併症は尿瘻だった。
「7%の患者さんに尿管ステント留置を要する尿瘻が起きていました。なお尿瘻は全員が回復しステントも抜去済みです。現在は手技の改良で尿瘻は減少しましたが、今後さらなる改善を目指しています」
以上のようなデータからも、ロボサージャン手術が低侵襲であることが明らかになっている。また、超高齢化が進み、今後ますます医療費が増加していく日本、そして世界では、こうしたハイクオリティ・ローコストの医療技術こそが必要となると考えられている。






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