子宮頸がんはアバスチンを加えた3薬剤、子宮体がんではダヴィンチ、卵巣がんには新薬リムパーザが

監修●石川光也 国立がん研究センター中央病院婦人科腫瘍科
取材・文●伊波達也
発行:2018年9月
更新:2018年9月


<卵巣がん>新薬で治療選択が増える

次に卵巣がんについて聞いた。卵巣がんは腹腔内に浮いた形である卵巣や卵管にできる臓器で、自覚症状に乏しく、進行がんで発見されるケースが多いがんだ。

年間罹患数は9,804人(国立がん研究センターがん統計2016年データ)と子宮頸がん・体がんと比べると少ないが、年間死亡数は4,758人(同2013年データ)と多く、それだけ難治(なんち)性のがんと言える。

治療の基本は、手術と化学療法の組み合わせだ。

「卵巣がんの手術は、拡大手術で徹底的に周囲の臓器も含めていかに取り切れるかが予後(よご)に関わってきます。現在のところ縮小手術が模索できるのは『早期卵巣がんに対する妊孕性温存治療の有用性を検討する試験(JCOG1203試験)』が現在登録中で、将来的に、その結果が注目されています」

進行がんの薬物療法については、子宮頸がん同様、アバスチンが使えるようになって以来、治療効果が高まっている。さらに、今年(2018年)、元々BRCA遺伝性の乳がんに適応されていたリムパーザというPARP(ポリADPリボースポリメラーゼを選択的に阻害)阻害薬の経口分子標的薬が、プラチナ製剤感受性再発卵巣がんへ適応拡大され、治療の選択肢が増え、延命効果にも貢献している。これらの治療薬も、将来初回治療に使えるようになることが期待される(表4)。

本号「新薬登場で再発卵巣がんに長期生存の希望が見えてきた」参照)

<早期発見の重要性>早期に見つけるためには

最後に一般の女性からの立場で、少しでも早期でがんを見つけるためにはどうすればいいかを聞いた。

「子宮頸がんは、とにかく若いうちからリスクがありますから、20代から定期的に検診を受けてください。本来は、予防ワクチンとの両輪でいくと理想的なのですが、現時点ではなかなか難しい状況ですので、検診は必須です。子��体がんについては、検診の有効性が証明されていません。若い方、閉経後の方いずれも腟からの不正な出血があった場合には、すぐに婦人科を受診するべきです」

そして卵巣がんはさらに早期発見が難しいという。

「卵巣がんも検診での発見は非現実的です。他の病気の超音波検査で、たまたまステージⅠの卵巣がんが見つかるといったケースが多く、その超音波での検査で、卵巣がんが見つからなくても、次年での検査ではすでに進行したがんがみつかるということもあり、なかなか早期発見が難しいのです。進行して腹部に水が溜まると、ウエストまわりが太ったようになるという症状があります」

日常的に自分の体の変化に対して注意を払うべきだと石川さんは繰り返し強調し、最後にこうアドバイスをくれた。

「女性特有のがんは、20代から70~80代まで、年齢ごとの体の変化やホルモン分泌の変化と関わっています。いつもと違う変調だと感じたときには、婦人科の医師にできるだけ早く相談して、自分の体は自分で守るという気持ちが大切です」

リムパーザ=一般名オラパリブ

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