鎮痛薬の特性、長所、短所、使い方 がんの「痛み治療」に用いられる鎮痛薬全書

監修:武田文和 埼玉医科大学客員教授
取材・文:柄川昭彦
発行:2007年5月
更新:2013年4月

がんの痛み治療に使われる鎮痛薬

非オピオイド鎮痛薬

オピオイド鎮痛薬に比べると鎮痛効力が弱いため、比較的軽い痛みの治療に適している。「WHO方式がん疼痛治療法」の第1段階の治療では、この薬が用いられる。また、第2段階、第3段階の治療でオピオイド鎮痛薬と併用することもある。オピオイド鎮痛薬とは作用機序が異なるため、併用することで鎮痛効果が高まる

商品名 剤 形 一般名 特徴と使い方 長 所 短 所
アスピリン 末、錠剤 アスピリン 通常は、1回に500~1000 mgの範囲で、4~6時間ごとに内服する。投与開始量は、1回に500mgで、4~6時間ごと。有効限界量は、1回にほぼ1000mgである 古くから使われている鎮痛薬である。ただし長期間にわたる投与の比較対照試験資料に乏しい 繰り返し使うことで胃に障害を起こすことが多いが、その予防には制酸薬を併用する。また、血小板の凝集機能に影響を与えるので、血液が固まりにくいなど、血液凝固に異常があるときには使用しない
カロナール、
ピリナジン
顆粒、錠剤、
坐剤、シロップ
(以上カロナール)
原末
(ピリナジン)
アセトアミノフェン 通常は、1回に500~1000 mgの範囲で、4~6時間ごとに内服する。投与開始量は、1回に500mgで、4~6時間ごと。有効限界量は、1回にほぼ1000mgである 胃や血小板への作用がないので、制酸薬を併用する必要がない。血液凝固に異常がある人でも服用できる。他の鎮痛薬で胃が障害された場合には、この薬に切り替えるとよい 大量に繰り返し使うと肝臓に対する毒性があるので、肝機能をチェックしながら使う必要がある。肝機能に障害がある場合の使用には、とくに注意が必要
ナイキサン 錠剤 ナプロキセン 非ステロイド性消炎鎮痛薬に分類される薬。通常は、1回に200~500mgを12時間ごとに内服する。投与開始量は、1回に100~200mgで、8~12���間ごと。最大投与量は、1回に500mgを8~12時間ごと 効果の持続時間が比較的長く、1日に2回の服用で鎮痛効果を維持することができる アスピリンの類似薬で、胃に対する副作用や、血液凝固機能に対する副作用がある。ただし、その作用はアスピリンよりやや弱い
ボルタレン 錠剤、カプセル、
坐剤
ジクロフェナクナトリウム 非ステロイド性消炎鎮痛薬。投与開始量は、1回に25mgで、8時間ごと。最大投与量は、1回に50mgで、8時間ごとである 非ステロイド性消炎鎮痛薬のなかでも、とくに強力な消炎鎮痛効果がある。急性の痛み(抜歯後など)にもよく使われている 胃に対する障害作用に注意が必要。また、腎障害がある場合にも注意する。従来は頓服として使われてきた薬で、大量反復投与がほとんど行われていないため、長期投与についての使用指針が示されていない
インダシン、
インテバン
カプセル、
坐剤、SPカプセル(インテバンのみ)
インドメタシン 非ステロイド性消炎鎮痛薬に分類される薬。投与開始量は、1回に25mgで、6時間ごと。最大投与量は、日本では1日に75mgまでである。海外では1日200mg アスピリンと同じ方針で使うことができる 胃に対する障害作用がある。大量使用によって、乏尿(尿の量が少なくなる現象)が起きることがある

弱オピオイド鎮痛薬

オピオイド鎮痛薬のなかで、比較的鎮痛効力が弱い薬だが、非オピオイド鎮痛薬に比べるとはるかに強い鎮痛効力を持っている。軽度~中程度の強さの痛みに適している。「WHO方式がん疼痛治療法」の第2段階の治療で用いられる。ただし、非オピオイド鎮痛薬で十分な効果が得られなかった場合、弱オピオイド鎮痛薬を飛ばして強オピオイド鎮痛薬が用いられるケースが多い。そのため、実際に使われているケースはあまり多くはない

商品名 剤 形 一般名 特徴と使い方 長 所 短 所
リン酸コデイン 散剤、錠剤 リン酸コデイン 弱オピオイド鎮痛薬の代表薬で、モルヒネの12分の1の鎮痛効力がある。投与開始量は、1回に30mgで、4~6時間ごと。この量で効果が十分に得られなければ、1回量を60mg、90mg、120mgと増量していく。1回量を120mgまで増量しても効果が不十分なら、強オピオイド鎮痛薬に切り替える 咳止め作用が強く、従来から咳止め薬として知られていた 主な副作用は便秘で、緩下薬を併用することで防止できる。吐き気や嘔吐が現れることもあるが、程度は軽いし、制吐薬で防止できる
リン酸
ジヒドロコデイン
散剤 リン酸
ジヒドロコデイン
リン酸コデインの同類薬 リン酸コデインに比べ、鎮痛効果は1.3倍、鎮咳効果は2倍ある。呼吸器のがんなどによる難治性の咳の発作にも使われる 副作用はリン酸コデインと同じ。錠剤がない

強オピオイド鎮痛薬

オピオイド鎮痛薬のなかでは鎮痛効力が大きいので、中程度から高度の痛みの治療に適している。「WHO方式がん疼痛治療法」では、第3段階の治療で使われる。短時間で効果が現れる速放性製剤と、効果が現れるまでに時間がかかるが、効力が長時間持続する徐放性製剤とがある

モルヒネ

強オピオイド鎮痛薬のなかでは中心的な薬。塩酸モルヒネと硫酸モルヒネがあるが、同じ薬理作用を持ち、効力の強さも同じである。副作用として便秘と吐き気が起きるが、緩下薬と制吐薬の併用で抑えられる。過量投与では強い眠気が現れる

商品名 剤 形 一般名 特徴と使い方 長 所 短 所
塩酸モルヒネ 末、錠剤 塩酸モルヒネ モルヒネの速放性製剤。基本となるモルヒネ製剤である。1回に5~10mgを、4時間ごとに投与する。徐放製剤を用いる場合にも、実際に必要となる適量を決めるまでは、増減調整しやすい速放性製剤を使うのが普通である 効果が早く現れる。服用の数分後から効き始め、30~60分後に最大効果をあげる。モルヒネ治療中に突然痛みの増強が起きた場合、レスキュードーズ(臨時追加投与)としても使用される モルヒネ末は水に溶かすことができるが、非常に苦く、甘味による矯正が必要
オプソ 液剤 塩酸モルヒネ モルヒネの速放性製剤。1回に5mgか10mgを、4時間ごとに投与する 効果が早く現れる。服用の数分後から効き始め、30~60分後に最大効果をあげる。レスキュードーズとしても使用される。液剤なので服用時に水が必要なく、モルヒネの苦みも矯正されているので飲みやすい。アルミ包装で5mgか10mgの分包なので、携行に便利 大量の投与には適さない
アンペック 坐剤 塩酸モルヒネ モルヒネの坐剤。内服する場合の3分の2量で用いる。8時間ごとに投与 何らかの理由で経口投与できない場合に使う 10mg、20mg、30mgの坐剤があるが、通常1回に2~3個までしか使えないので、大量の投与には適さない。また、現実には、患者が自分で入れられないことが多い
塩酸モルヒネ注射液、プレペノン 注射剤 塩酸モルヒネ モルヒネの注射剤。1日の経口投与量の2分の1量を1日量として、皮下または静脈内に点滴で持続注入する。持続微量注入ポンプを用いる場合もある。塩酸モルヒネ注射液には1%液と4%液があるので区別に注意すること 使用量が大量になる場合や、週単位の持続投与も可能である 患者が自分で投与することがむずかしい
MSコンチン 錠剤 硫酸モルヒネ 世界初のモルヒネの徐放錠。がんの痛み治療における中心的なオピオイド鎮痛薬である。12時間ごとに服用する。有効限界はないので、痛みの消える量を適量とする 長時間効力が持続し、1日に2回(12時間ごと)の服用でよい。錠剤で服用しやすい レスキュードーズには適さないので、突発痛には速放性製剤が必要
モルペス 細粒 硫酸モルヒネ モルヒネの徐放性製剤。12時間ごとに服用する 長時間効力が持続し、1日2回(12時間ごと)の服用でよい。細粒なので、食事がとれない場合に、液体に混入してチューブから投与するのに適している レスキュードーズには適さないので、突発痛には速放性製剤が必要
MSツワイスロン カプセル 硫酸モルヒネ モルヒネの徐放性製剤。12時間ごとに服用する 長時間効力が持続し、1日2回(12時間ごと)の服用でよい レスキュードーズには適さないので、突発痛には速放性製剤が必要
カディアン カプセル、細粒 硫酸モルヒネ モルヒネの徐放性製剤。24時間ごとに服用する 長時間効力が持続し、1日1回(24時間ごと)の服用でよい レスキュードーズには適さないので、突発痛には速放性製剤が必要
ピーガード 錠剤 硫酸モルヒネ モルヒネの徐放性製剤。24時間ごとに服用する 長時間効力が持続し、1日1回(24時間ごと)の服用でよい レスキュードーズには適さないので、突発痛には速放性製剤が必要
パシーフ カプセル 塩酸モルヒネ モルヒネの徐放性製剤。24時間ごとに服用する 長時間効力が持続し、1日1回(24時間ごと)の服用でよい。徐放性粒と速放性粒を組み合わせてあり、効き始めるまでが早いとされる レスキュードーズには適さないので、突発痛には速放性製剤が必要

オキシコドン

アヘンから合成されたテバインを原料とする半合成のオピオイド鎮痛薬。強オピオイド鎮痛薬のなかでは近年使用頻度が飛躍的に増加している。副作用は便秘と吐き気だが、緩下薬と制吐薬の併用で防げる。過量投与では強い眠気が現れる

商品名 剤 形 一般名 特徴と使い方 長 所 短 所
オキシコンチン 錠剤 塩酸オキシコドン オキシコドンの徐放性製剤。12時間ごとに服用する。1回に5~10mgから投与を始める。有効限界はないので、痛みの消える量まで増量する。モルヒネの経口薬から切り替えるときには、モルヒネの3分の2量(mg)とする 長時間効力が持続し、1日2回の服用でよい。腎機能低下などでモルヒネが使えない患者でも使うことができる レスキュードーズには適さないので、突発痛には速放性製剤が必要
オキノーム 散剤 塩酸オキシコドン オキシコドンの速放性製剤。日本では2007年2月から使われている。6時間ごとに服用する オキシコンチンを使っている患者のレスキュードーズとして使える。アルミ包装で2.5mgか5mgの分包なので、携行に便利。ほのかな甘味で飲みやすい 大量の服薬時には水に溶かすなど工夫が必要

フェンタニル

合成されたオピオイド鎮痛薬。経口投与すると肝臓で分解されてしまうため、貼付剤や注射剤として使われる。副作用として便秘や吐き気がある。過量投与では強い眠気が現れる

商品名 剤 形 一般名 特徴と使い方 長 所 短 所
デュロテップ 皮膚貼付剤
(パッチ)
フェンタニル 皮膚に貼って、皮膚から薬を吸収させる。72時間ごとに健康な皮膚に貼る。貼り替えるときは、皮膚の場所を変えるようにする。モルヒネなど、強オピオイドからの切り替え薬として使われる 3日に1度貼り替えるだけでよい 高価である。使用の承認条件はモルヒネの先行使用があること。粗悪な貼り方や汗などで十分に薬が吸収されないことがある。μg(マイクログラム)単位で効果が現れる薬だが、皮膚から吸収させるため、パッチはmg(μgの1000倍)単位のフェンタニルを含有しているため、使用済みパッチを誤ってなめると、生命を脅かすような副作用が起こり得る
フェンタニル注 注射剤 フェンタニル もともと全身麻酔の補助薬として使われていた。すぐに効き、すぐさめるのが特徴。痛みには、レスキュードーズとして使われるほか、持続皮下注射、持続静脈注射としても使われる すぐに効果が現れるのでレスキュードーズに適している 持続注射についての使用経験がまだ少ない


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