ピンポイントでがんを狙い撃ち! 副作用が少ない治療「サイバーナイフ」

監修●井上洋 関東脳神経外科病院サイバーナイフセンターセンター長
取材・文●半沢裕子
発行:2012年12月
更新:2013年9月

肺と肝臓の治療にも保険が適応に

 現在、保険で治療が受けられるのは、まず、ガンマナイフと同じく、頭蓋内病変(悪性・良性の脳腫瘍、血管奇形)、でほかに頭頸部病変(悪性腫瘍、再発腫瘍、頸部リンパ節転移など)や脊髄血管奇形にも適応されている(機能的疾患、脊椎・脊髄腫瘍は保険外)(図5)。

■図5 サイバーナイフの疾患適応
1 頭蓋内病変、悪性脳腫瘍、良性脳腫瘍、血管奇形、機能的疾患
2 頭頸部病変、悪性腫瘍再発、頸部リンパ転移、良性腫瘍、血管腫(奇形)
3 脊髄、脊椎病変、悪性腫瘍、良性腫瘍、血管奇形
4 胸部病変、肺転移(大腸がん)、リンパ節転移
5 腹部病変、リンパ節転移
6 骨盤腔病変、リンパ節転移、骨転移
7 四肢、骨転移、血管奇形
体幹部(体の胴体部分)病変は基本的に保険外になる
■図6 関東脳神経外科病院でサイバーナイフ治療を受けられた患者さんの疾患別データ
疾患名 件数
転移性脳腫瘍 742
髄膜腫 195
神経膠腫 169
動静脈奇形 96
神経鞘腫 63
下垂体 43
頭頸部腫瘍 256
その他 436
合計 2000
2005年2月から2011年7月で2000例
(5560病変)を治療

動きを察知して治療位置を修正できること、ピンポイントだけでなく、数㎝の病巣にも対応できること、などの理由から、頭頸部・脊椎以外の病気でも保険診療が望まれてきたが、2009年、ついに体幹部の病変(肺、肝臓)で、腫瘍の大きさや個数など制限つきではあるが保険が適応された。

「1番手術数が多いのは転移性脳腫瘍、続いて、髄膜腫や神経膠腫、動静脈奇形など。頭頸部の腫瘍も多いです。このデータは当院の2000例までのもので、頭頸部腫瘍と体幹部病変の増加傾向はどこでも同じだと思います」(図6)

高額療養費制度で自己負担を軽減

サイバーナイフ治療は保険診療でおよそ60万円と、決して安い治療ではない。が、健康保険の3割負担で約18万円、さらに高額療養費制度を受ければ、自己負担は7万円で、残りはあとから返金される。この効果が7万円で得られ、治療は1回、痛みも傷もなくすむのなら、まずまずの負担だろう。これらの病気の患者さんは「サイバーナイフを選びたい!」と希望するかもしれないが、井上さんは言う。

「放射線治療にもデメリットはあります。たとえば、即効性がありません。治療4~6週間後、がんが小さくなるという治療です。脳の病変が進み、意識障害や麻痺が出ている場合、一刻も早く手術で腫瘍を除く必要があります。

ただ、サイバーナイフが出てきたことで、『危ない箇所は残して切る』ことが可能になりました。たとえば、その部分をとったら、視力がなくなる、手足が動かなくなるといった症例では、手術でとらずに残し、術後にサイバーナイフで治療するといった治療が行えます」

もちろん、がんの場合、再発の危険は常にある。しかし、サイバーナイフは、一定の範囲全体(照射野)に放射線をかける通常の放射線治療と違い、再発の治療もできるというメリットがあり、通常の治療後に再発した場合でも行えるのだ。

メリット、デメリットを知り、適切な治療を

■図7 サイバーナイフの副作用について
当日~数日 吐き気、嘔吐、けいれん、発熱
頸部、口腔、鼻腔の場合は皮膚粘膜の炎症
数週間後 脱毛(数カ月後に再生する)、病巣周囲の脳浮腫
数カ月~数年 遅発性放射線壊死、放射線誘発血管閉塞
放射線誘発腫瘍、神経障害、皮膚粘膜の潰瘍、壊死
これらの発症の可能性は、病変の部位・性質によって異なる

ほか、デメリットには次のようなものがある。

●DNAを損傷する治療なので、治療した周辺の正常細胞から、数年後にがんが出てくる可能性はゼロではない。

●1回、ないし少数回で治療するため、分割照射に比べ、1回の治療時間が数10分~1時間と長い。同じ姿勢を保てない患者さんに行うことはむずかしい。

「子どもさんには麻酔を使うこともありますが、高齢の方は麻酔が負担になることがあるので、状態の悪い方にはお勧めしません。また、胸水がたまり、同じ姿勢が苦しい方なども、残念ながらむずかしいと思います」

高線量の放射線治療だけに、「あたりどころ」によっては副作用もまれにある。治療直後に起こる副作用としては、吐き気、頭痛、めまい、脳のむくみ(浮腫)など。ほとんどは治療直後の一時的なもので、やがておさまるが、注意が必要なのは、治療後1カ月~2年くらいの間に起きる副作用(晩発性放射線障害)だ。放射線照射部分近くの脳細胞が壊死したり、血管や神経が損傷することがある。そのため、治療後は長期間、定期的に経過観察を行うことが大切だ(図7)。井上さんはいう。

「がん治療には今、手術、薬剤、放射線の3大治療があり、放射線にもさまざまな選択肢があります。サイバーナイフの登場で、もう1つ『飛び道具』が加わったといえるでしょう。便利な道具ですが、どんな優れた道具にも適応、限界、メリット、デメリットはあります。しっかり検討し、上手に治療を受けていただきたいと思います」

乳がん、前立腺がん、膵がんでも保険申請中

欧米では、すでに全身の腫瘍に対して治療が認められており、頭蓋内病変と同数以上の治療が行われているという。今後、日本でも保険診療がほかにも認可される可能性はある。事実、医療機器会社が乳がん、前立腺がん、膵がんに対しても保険が適用されるよう申請中といわれる。国内で治療が受けられる施設も、約30施設まで増えた。今後、ますます目の離せない治療ということができるだろう。

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