検査の目的を知り、必要な検査を受けるために これだけは知っておきたい! がんの検査の基礎知識

監修:森山紀之 国立がんセンターがん予防・検診研究センター長
取材・文:黒木要
発行:2009年1月
更新:2019年7月

【5】精密検査の順序(流れ)はどうなるのか

がんの疑いが発生したらその後、どのような順序で検査を受けるか、肺がんを例に説明する。

肺がんの存在診断の1つに気管支鏡(内視鏡)検査による方法がある。口や鼻から挿入して観察するのだが、肺の末端は徐々に細くなり届きにくくなる。

「全体では70パーセントにしか使用できません」

CTによる存在診断もある。

「高解像度CTという1ミリ間隔の断層写真が得られる方法で撮影します。腫瘍の輪郭が鮮明に写り、ほとんどのケースで判定できます」

ただ、このような撮影ができる施設は限られているという。

存在診断を終えると腫瘍の質を調べる質的診断をする。通常は生検が1番確実な方法だが、身体に負担がかかるので肺がんではやりにくい面もある。

「大きな針を刺して組織を得る針生検では4分の1に肺から空気が洩れる気胸が生じるリスクがあります。そこで、小さな手術をして組織を採取する外科生検をする手もありますが、それなら最初から手術をしたほうがよいとも考えられます」

生検を行うかどうかは施設や医師によって左右される面が大きい。

「手慣れた医師だと気管支鏡や高解像度CTの映像や画像で、ほぼあたりをつけてしまいます」

質的診断によるがんの進展具合で治療を決める検査をする。

肺がんは、がんが肺の外に広がっているか、胸腔外に広がっているかが、手術適応の重要な指標となる。

たとえば近くのリンパ節や左右の肺を分けている縦隔のリンパ節への転移の有無を調べる。

「それらも存在診断で行うCT検査で兼ねることがほとんどです。新たにCT検査を追加することもあります」

縦隔へのリンパ節転移には、EBUS-TBNAという特殊な気管支超音波内視鏡を使う施設もある。

手術や放射線、抗がん剤の治療が開始されて一通り終了したら、治療効果を診る検査をする。再発のチェックも行っていく。

「それらの検査については、CTが一般的です。再発のチェックは腫瘍マーカーやPETによる検査を行うこともあります」

【6】 精密検査を受けるときに注意したいこと

最後に精密検査を受ける際の留意点を森山さんに尋ねた。

「がんの疑いが生じて要精密検査になっても受けない人がいま��。これは絶対避けて欲しいです。忙しくて少し先延ばしにするのはやむを得ませんが、なるべく早く検査を受けるべきです」

検査には身体負担を伴うものもある。

またすべての検査は100パーセント確実ではなくそれぞれ限界がある。なるべく安全に検査を受けたいものだが、施設選びの目安となる指標はないだろうか?

有名なブランド病院、検査機器が充実した病院、専門病院など、選択肢は多い。

「なかなか難しい問題で、現状では患者さんやその家族が判断をするのは難しいでしょう。しかし対策はあります。病院の実績や定評、症例数などが一応の目安にはなりますが、その際大事なのは、検査の目的をはっきりしておくべきです」と言う。

検診をしたいのか、検診で引っ掛かったので確認をしたいのか、セカンドオピニオンを受けたいのか、それによって自ずと施設選びのポイントは違ってくるという。

冒頭で森山さんが挙げた6つの検査目的のどれに該当するのかを確認して、精密検査を受ける施設選びをするとよいだろう。 「検診であれば何もがんセンターなどの専門病院でなくてもよいわけです。存在診断でも一定のレベルに達している施設であればよいのです」

施設選びをかかりつけ医に紹介してもらうという方法もある。

「詳しく調べる必要がある症例を見抜き、それぞれに定評のある施設へ紹介してくれる医師は、ある意味でがんの名医でもあるのです。そういう能力の高いかかりつけ医は各地に存在しますので、見つけて欲しいですね」

同じカテゴリーの最新記事