血糖値の異常でがんがわかる場合も 何がわかるの? 血液・尿検査

監修:前川真人 浜松医科大学臨床検査医学講座教授
取材・文:平出浩
発行:2009年1月
更新:2019年7月

鉄欠乏性貧血からがんが見つかることもある

以上の前提を踏まえた上で、血液検査や尿検査、あるいは便潜血検査などとがんの関係を見ていきたい。

ただし前川さんによると、「腫瘍マーカー以外では、血液や尿の検査とがんとの間に特異性はあまり見られない」という。つまり、“この項目の測定値が高いから胃がんの可能性が高い”といったような関連性はさほど高くないということだ。

とはいえ、何らかのヒントはある。特に血液は「全身を巡っているため、すべてのがんに関係する」(前川さん)ためだ。 たとえば、貧血の症状から子宮がんや大腸がんが発見されることもあるし、便や尿に血液が混じることで、大腸がんや膀胱がんが見つかることもある。

便や尿の中に血液が混じっていたとする。この場合は当然、体内から血液が排出されている。すると、体内の血液は減り、この状態が続けば、貧血になる。

血液の中には赤血球があって、その中には酸素を運ぶ役割を担っているヘモグロビンがある。そのヘモグロビンは鉄を含んでいる。となると、鉄が不足して、鉄欠乏性の貧血になり、がんが発見されることがある。

「鉄欠乏性の貧血で特に考えられるのは大腸がんなどの消化器系のがんです。女性の場合では、子宮がんなど、婦人科系のがんも多く見られます。特に閉経期以降の女性が鉄欠乏性の貧血になった場合には注意を要します」(前川さん)

もちろん、貧血が起こるのはがんに限らない。偏食や体内への鉄の吸収が悪いことなどの原因もある。むしろ、これらの原因のほうが多いだろう。しかし、がんが貧血を引き起こすこともあるし、便や尿から血液が排出されることで、がんが発見されることもある。こうしたことがあることは覚えておきたい。

赤血球、白血球、血小板の数値変動の裏にがんの疑いも

貧血によって、白血病や悪性リンパ腫といった血液のがんが見つかることもある。

血液は骨髄で作られるが、加齢とともに、骨髄は脂肪に変化していく。そのため、血液を作る能力は年齢を重ねるごとに減少していく。

ところが年齢不相応に血液を産生する能力が減少することがある。たとえば、がんが骨に転移した場合である。この場合、血液を産生する場が少なくなるため、赤血球や白血球、血小板が減少し��貧血や出血、感染しやすくなるなどの症状が現れることがある。

血液細胞のがん化の代表例は白血病である。このとき、白血球数が異常に増加することがあるが、異常な細胞(白血病細胞)ばかりが増え、正常細胞は減少する。その結果、正常な白血球の機能である免疫機能は低下し、感染症にかかりやすくなる。また、血小板が十分に作られなくなると出血しやすくなるといった症状も現れる。

白血病は白血球のがんばかりでなく、血小板血症という血小板が増加するタイプもある。異常な血小板ばかりが増え、出血しやすくなる。ただし「通常の白血病よりはかなり少ない」(前川さん)。

赤血球、白血球、血小板のいずれも異常に多くなる真性多血症という病気もある。

[加齢との関係でみた検査データ]

加齢による変動 検査項目
ほとんど変動しない 図:ほとんど変動しない 白血球数、AST、拡張期血圧
加齢とともに低下 図:加齢とともに低下 総タンパク、総ビリルビン、赤血球、ヘモグロビン、ヘマトクリット
加齢とともに上昇 図:加齢とともに上昇 収縮期血圧、γGTP、尿素窒素、LDH
加齢とともに上昇し、
高齢では一定
図:加齢とともに上昇し、高齢では一定 総コレステロール
加齢とともに上昇するが、
高齢では低下
図:加齢とともに上昇するが、高齢では低下 尿酸、空腹時血糖、白血球、ALP、ALT

肝機能の低下にがんが関係していることもある

がんになって、細胞が破壊されると、さまざまなタンパクが放出される。その中には、体にとって好ましくないものもある。そうしたタンパクなどが“悪さ”をするのを防ぐために、プロテアーゼ阻害タンパクなどの急性相反応タンパクが血液や尿の中に増えてくる。「血液中などの急性相反応タンパクの量を測定することで、炎症やがんなどが起きていることを推測することも可能」(前川さん)だ。

CRPというタンパクも急性相反応タンパクの一種で、がんになると、血液中に増加する傾向がある。ただし「感染症やリウマチなどの炎症性の疾患になった場合のほうが、より顕著に増加する」(前川さん)ことも覚えておきたい。

また、細胞に傷がついたり、細胞が壊れたりすると、AST(GOT:アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ)やALT(GPT:アラニンアミノトランスフェラーゼ)、LDH(乳酸脱水素酵素)といった酵素タンパクが血中に増えてくる。

「アルカリフォスファターゼ(ALP)とγGTPは、原発性および転移性の肝臓がんになった場合、血液中に増加する傾向があります。反対に、肝細胞で作られるアルブミンやコリンエステラーゼは、肝臓の機能が低下したり、栄養状態が悪化したりすると、血液中の値が下がってきます。肝臓の機能低下には、がんが原因になっている場合もあります」(前川さん)

急に糖尿病の症状が出た場合、膵臓がんの可能性も

血糖値もがんと関係する場合がある。血糖値といえば、一般的には糖尿病との関連が思い浮かぶ。だが、それだけではなく、「膵臓がんの発見に結びつくこともある」(前川さん)という。

膵臓は肝臓とともに「沈黙の臓器」といわれるが、膵臓がんの初期症状には糖尿病が見られることがある。発見が遅れがちで、予後が非常に厳しいがんだけに、「急に糖尿病の症状が出たり、すでに罹っている糖尿病が急激に悪化したりした場合などは膵臓がんに要注意」と前川さんは話す。

また、尿検査からは、膀胱、尿道、腎臓、尿管などの泌尿器系のがんがわかることがある。「特に尿中に潜血反応が出た場合は、尿路結石や腎臓・泌尿器系の炎症のほか、がんがあることもあるから、さらなる検査が必要」(前川さん)ということだ。

前川さんが言うように、血液や尿検査とがんとの間には、腫瘍マーカー以外、特異性はあまり見られない。ただし、毎年健康診断を受け、自身の「基準範囲」を知ること、興味をもってみることは、健康管理、ひいてはがんの早期発見にも役立つことは確かと言えるだろう。

[がんによる病態変化をとらえるための検査]

1 血液検査 貧血、白血球増加もしくは減少、血沈亢進など
2 組繊破壊に伴う炎症マーカーの変化 急性相反応タンパクの増加
3 血清酵素の検査 腫瘍産生酵素:ALP、amvlase、aldolase、γGTP、NSE、PAPなど腫瘍が増殖する際に生じる細胞障害、酵素誘導:LD、AST、ALT、ALPなど
4 免疫能の低下 抗体価の低下
ツベルクリン反応など遅延型皮膚過敏反応の低下
5 内分泌検査 ホルモン産生腫瘍
高カルシウム血症をひきおこすホルモン様作用
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