再発発見に驚異的力を発揮する画像診断、これを使わない手はない 納得して治療を受ける秘訣――画像診断はここまで進歩した!
進歩2 MRI
磁気で体内を見る
X線の吸収を利用して画像を作り出すCTに対し、磁石を利用して体の内部を見る方法がMRIである。例えば、体内に豊富にある水分子を構成する水素原子も、実は微小な磁石である。MRIは、体の外から強い磁力を与えたときに起こる水素原子の運動の変化を、センサーでキャッチすることによって体内の微細な構造を見ることができる。
「MRIは、一見してCTによく似た画像が得られるため、患者さんからは、『どちらが優れた方法なんですか』などと聞かれますが、実は方式も違えば得られる情報も違います。医師は目的に応じて使い分けるほか、両方で検査することもあります」と遠藤さんは話す。
その違いをよく表しているのが脳の画像だ。脳は全体が非常にやわらかい組織で、しかも硬い頭蓋骨で被われている。CTに用いられるX線は頭蓋骨で多くが吸収されてしまうので、内部の細かい部分をよく見るには、MRIに劣る。MRIはあらゆる組織が発する信号をキャッチするので、脳組織でも豊かな階調ではっきり撮影できる上、CTより高い解像度が得られるのである。それは、脳のヒダまでくっきりと見えるほどだ。脳、脊髄など骨内部の組織や関節、前立腺などCTの不得意な場所の検査にはMRIが欠かせない。
3テスラの強磁場も登場

「MRIの進歩は、よりはっきりした画像を得るために、与える磁場の強さを強くする方向にあります。最近では���超伝導電磁石を使用し、強磁場を発生させることで、画像を精細かつ高コントラストで構成できるものが登場しています。MRIが開発された当初は0.25テスラ(磁場の強さを示す値)が用いられていましたが、現在は1.5テスラから3テスラの製品も使われています」と遠藤さん。
例えば、1.5テスラのMRIで腎臓、肝臓を撮影したのが画像(5)である。臓器の様子が細部まで細やかに表現されている。また、最新のMRIでは造影剤を使わなくても脳血管をはっきり見ることができるため、脳梗塞の診断などにも威力を発揮している。
そして、画像(6)が最新鋭の3テスラのMRIで撮影した脳の組織だ。非常にクッキリと高精細な画像が得られていることが分かるだろう。今後、脳腫瘍などの診断と治療に威力を発揮することが期待されている。
このほか、MRIでも組織の機能を応用した画像診断手法の開発が進められている。例えば、血液中のヘモグロビンの動きによる磁気共鳴信号の変化をとらえることで、体内の血流量を画像化できるファンクショナルMRIの技術は、脳研究などに利用されるようになった。また肝臓のがん細胞を正常細胞と区別できる造影剤「超常磁性酸化鉄」を使った診断など、新たな造影剤の登場もMRIの診断的価値を高めている。


画像(5):1.5テスラのMRIで撮影した臓器。臓器の様子が細部まで細やかに見てとれる


画像(6):3テスラのMRIで撮影した脳組織。
1.5テスラのMRI画像よりさらに高精細。脳のヒダまでくっきり見えるほど
進歩3 エコー
身近な画像診断装置

一般的なエコー機器
エコーは、人々にとってもっとも身近な画像診断といえるだろう。装置が発した超音波が体内で反射してくるのをとらえて画像化する装置だ。いわば魚群探知機を医学に応用したものといってもいいだろう。他の画像診断装置と比較して、価格が安く小型化が進んでいるので、臨床の現場で広く用いられている。産婦人科の外来で、お腹のなかの赤ちゃんの様子を妊婦や家族が見ることができるのは誰もがご存じだろう。
「エコーが持つ、他の画像診断にない大きな特徴は、医師自身が操作し、リアルタイムで臓器を見ることができるというもの。心臓鼓動や消化器の動きも目で見えるので、最近では聴診器代わりに使う医師がいるほどです」と遠藤さんは言う。
このように、エコーは身近な画像診断ではあるが、がん医療にも不可欠である。とくにがんの診断の最初の段階では非常に重要だ。例えば、若い女性の乳がんは、乳腺組織が発達しているため、X線検査であるマンモグラフィで見落とすことがあるが、エコーを併用することで発見率を高めることができる。消化器のがんもエコーで早期に発見されることは少なくない。
エコーは、がん患者さんの診察にもよく使われる。外来で簡単に検査ができるので、腫瘍の大きさの変化を確かめたり、再発がないかなど、患者側の負担を最小限にしながら検査頻度を高めることもできる。また、がん医療を目的としたエコーの技術も進歩しており、がん細胞を発見しやすい造影剤を組み合わせる方法や、エコー画像をコンピュータによって立体画像にする3D技術なども登場している。
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