より負担が少なくて、精度の高い検査法 肺がんの確定診断に威力を発揮するCTガイド下気管支鏡検査

監修:金子昌弘 国立がんセンター中央病院内視鏡部咽喉内視鏡室医長
取材・文:町口 充
発行:2007年4月
更新:2013年4月

有効性についての検討結果

では、この検査の有効性はどうか。

国立がん研究センターでは、CTガイド下気管支鏡検査の有効性について調べる検査が行われている。95年12月から00年3月までの190例、206病変が対象。男性118人、女性72人で、年齢は23~84歳、平均45歳。病変の長径は0.5~6.0センチで平均1.66センチ。気管支鏡の挿入から内腔の観察、生検などのあと、気管支鏡の抜去までに要した時間は平均約45分だった。

検査で得られた悪性診断は、肺腺がん77例、肺扁平上皮がん6例、他臓器がんの転移8例、その他のがん4例で合わせて95例。

ほかに結核などの疾患が12例で、病変に到達できなかったのは11例だった。

これらの結果を、手術や5年以上の経過観察期間などで判定したところ、最終的にがんと診断されたのは121例であり、78.5パーセント(95例)がCTガイド下気管支鏡検査によって診断できたことになる。

X線透視下で位置の確定ができない末梢肺病変の確定診断のため、CTガイド下気管支鏡検査を行った10例10病変(平均腫瘍径1.2×0.9ミリ)についても、同センターで有効性の検討が行われている。

それによると、10例のうち5例ではCTのみ、5例ではX線透視の補助にCTを用い、生検器具を誘導した。この結果、CTのみで誘導した0.7×0.7ミリの1病変では組織を採取する鉗子を病変に到達させられなかったが、残りの病変には到達でき、その生検部位はCTによって明確に確認することができた。

5例で肺腺がん、1例で肺扁平上皮がん、1例で異型腺腫様過形成、2例で炎症性疾患の診断が得られている。

分析にあたった金子さんはこう語る。

「患者さんは、検査に十分耐えられていますし、検査の中止や、特筆すべき合併症も認められませんでした。この結果からも、CTガイド下気管支鏡検査は末梢肺微小病変の確定診断に有効な検査で、標本採取部位が明確に確認できるため、良性��患の診断にも信頼性の高い検査と考えられます」

治療法の選択や予後にもプラス

CT検査で小さな病巣が発見され、さらにCTガイド下気管支鏡検査により迅速に確定診断が行われるようになれば、早期発見・早期診断につながるだけでなく、その後の治療や予後にもプラス面が大きい。

現在のところ、1~2期の肺がん手術の標準的な方法は、肋骨を切るなどして胸を大きく開け、肺葉単位での切除と、リンパ節を広く切除するリンパ節郭清。しかし、CT検診などでかなり小さながんが発見されるようになってからは、肺の切除やリンパ節郭清の範囲を小さくする手術も行われるようになってきた。また、胸腔鏡を用いて、切開する傷を小さくし、切除する範囲も小さいタイプの手術を行うところも増えている。

CTガイド下気管支鏡検査による診断が普及していけば、小さながんが確実に診断される確率はますます高くなるだろうから、早期のうちに発見されてより負担の少ない治療で治癒するケースが増えていくに違いない。

また、小さながんが見つかるようになると、治療しなくてもすむ時代が到来するかもしれない。金子さんはこう話す。

「かりに5ミリとか1センチぐらいの影が見つかったとしても、そのようながんは、非常におとなしいタイプのがんであることが少なくありません。
もちろん、なかには成長して、転移など悪さをするがんもありますが、何ごともなく天寿を全うし、肺がんではなくて別の病気で亡くなるというケースが結構多い。すると、どれが危いがんで、どれが大丈夫ながんかの判別が必要になってくるわけですが、どうも、淡くてフワフワしたがんでは、2センチ以下の大きさなら、悪さをしないということがわかってきました。だとしたら、がんが見つかったからすぐ手術、というのではなく、定期的にCTなどで経過を観察し、少しでも大きくなるようだったら、手術すればいいことになります。CTなど検査装置の精度が高まり、検査技術が向上すれば、やがて定期的に検査を受けていれば、がんにならないような時代が来るかもしれません」

とくにCT技術は日進月歩。現在、CTガイド下気管支鏡検査に用いられているのはシングルヘリカルCTだが、今後、マルチスライスCTや、コンビームCTといった最新式のCTを用いられるようになれば、より正確で迅速な診断が行われるようになっていくだろう。 と金子さんは語る。

シングルヘリカルCT=X線管がらせん状に連続回転しながらX線を照射して撮影する装置
マルチスライスCT=コンピュータを使って身体の断層面を見る装置
コンビームCT=撮影部位がX線の影響を受けにくい頭部に限定される装置

[正面]
X線画像 正面
[側面]
X線画像 側面


気管支鏡から鉗子を出し病巣があると思われる部分に進め、正面、側面からX線透視と撮影で確認し、CTに移動する

[検査前のCT画像]
検査前のCT画像
[気管支鏡検査中のCT画像]
気管支鏡検査中のCT画像


気管内部に見えるのが、気管支鏡、病巣の中央部に白く見えるのが鉗子の突端。病巣の中央部から組織の採取が行われている

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