早期乳がんのサインである微小石灰化がこんなに鮮明に見えるとは!? 乳がんの超早期発見をもたらす最新マンモグラフィの威力
デジタルとアナログの利点・欠点
- 超微粒子による高解像度
- 高コントラスト
- 装置が比較的安価
[デジタルマンモグラフィの長所]
- 画像処理で見たいところを見やすくできる
- 複製が容易
- 画像データの転送・保管が容易
ところで、この最新マンモグラフィはデジタル型であるが、マンモグラフィはもともとアナログのフィルム式から始まっている。これを最先端の画像テクノロジーやITによってデジタル化しようとの動きが起こり、その発端を作ったのは富士フイルムだった。ただ、当時のデジタル型はアナログに比べて解像度の点で落ち、評価が低かった。そのデジタル型の性能が向上し、アナログ型に匹敵するようになったのは4、5年前から。医療機関での装置の普及具合を見ても、現在、アナログ型が39パーセントに対し、デジタル型は61パーセントとすでにデジタルがアナログを凌駕している。
「解像度の点では、アナログ型のほうがまだ1日の長があります。上手に撮ればアナログ型の画像は非常にきれいです。ただし、写真は1枚しか撮れず、また厚みのある乳房などには弱い面がある。
これに対してデジタル型は、収集した情報を個々の乳房に合わせ、診断しやすい最適な画像を作るなど、分析目的に合わせた画像の加工が可能なのに加えて、データの管理が効率的で、複製もしやすい。ただ、アナログ型に比べて、使用する道具がたくさん必要で、高価なのが��点です」
しかし、解像度、画質の点でアナログ型に匹敵するようになると、将来的にはデジタル型に移行していくのは当然の帰結といえよう。
しこりになる前の超早期発見
そしてこのデジタル型の最新マンモグラフィで見つかったのが、先に遠藤さんが見せてくれた微小石灰化の映った画像である。
「これは石灰化の形だけで判断すると、良性の可能性が高いものですが、この石灰化が小葉の中に密集しており、そこから乳管の中にもつながって見える、そういう分布から判断して、乳がんの可能性が高いと判断したのです。決して乳腺症などではない。しかし、乳がんが確定しても、全然慌てる必要はありません。しこりになるずっと以前の段階の超早期の発見ですから、治るがんです」
乳がんは、乳房の中の母乳を作るところ(小葉組織)や母乳を乳頭まで運ぶ管(乳管組織)の上皮から発生し乳腺に沿って広がっていくのが一般的なので、この石灰化はその発生形態にのっとっているというわけだ。
「小さなしこりを見つけるのも重要ですが、もっと安心なのは、この画像のようにもっと早い時期、超早期に見つけて適切な治療をすることです」 そうすれば、10年後の生存率は、限りなく100パーセントに近くなるのだという。
この乳がんの疑いが出た画像の本人は、最新マンモグラフィの治験に応募してきた68歳のボランティア女性である。治験に応募した女性は30人あまりいるが、乳がんの疑いが出たのはこの人1人だった。
超音波やMRIでもわからないものも見える

ところで、この最新マンモグラフィの性能などを調べる治験結果については、2008年9月に大阪市にある大阪国際会議場で開催された日本乳癌学会で遠藤さんが発表している。名古屋医療センターにおいて手術で切除された標本(26例)を用いて、最新のマンモグラフィと従来のそれとで映り方を比較検討したものである。がんや石灰化がどの程度見えるかを、いろいろ条件を変えて調べてみたところ、従来型では、線量が少ないとあまりよく見えないけれども、線量を多くすると見えるようになるのに対して、最新型では、線量が少なくても、従来装置の線量が多いのと同じ程度によく見えることがわかった。
「最新型は、X線をより有効に画像にする能力が高いことがわかりました。周囲の組織を引き込むような、ギザギザの形をしているのががんの特徴で、これをスピキュラと言いますが、これや腫瘤の縁の状態がどんなになっているかも、鮮明に、立体的に見えるのはすばらしいです。超音波やMRIでもわからなかったものもこの最新型では見えます。従来型とは見え方が全然違います」
こうしてみると、がんの検査の中でのマンモグラフィの位置づけも変わってこよう。
「マンモグラフィは、たくさんの人の中からがんを拾い上げるスクリーニングとしては優秀な画像診断であることは間違いありません。短時間で、正確に乳房を撮影し、安価にできる点で群を抜いています。しかし、それだけではない。超音波やMRIでもわからないものが見えるようになったマンモグラフィは、精密検査としても十分使用できるし、また使用する必要もあると思います」
この最新マンモグラフィの登場によって、どうやら乳がんは超早期発見の時代に進んでいく模様のようだ。
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