「尾道方式」でアプローチ! 病診連携と超音波内視鏡を駆使して膵がん早期発見をめざす横浜

監修●窪田賢輔 横浜市立大学附属病院内視鏡センター教授
取材・文●「がんサポート」編集部
発行:2023年3月
更新:2023年3月


プロジェクトの目標は?

現在、膵がんの早期診断は非常に難しく、早期がんで見つかる患者さんは1%にも満たないのです。それは、膵がんは遺伝子レベルで早い段階から進行がんになり、早い時期に転移するからです。10㎜のがんを見つけても、すでに28%が転移の力を持っているという科学論文もあります。20~30㎜ではそれが73~94%にも達します。そして30㎜以上なら、手術ができたとしても1~2年後には転移してしまうのです。しかし、10㎜以下で見るけることができれば、その5年生存率は90%にアップするというデータもあります。

また、膵がんの発症年齢は60-64歳あたりから急に増えてきますので、50歳以降の方に注意を促し、早期で見つかる確率を少しでも上げたいと思っています(図5)。

しかし、実際に10㎜以下の膵がんを見つけるのは難しいため、まず、現実的には20㎜以下で手術可能な患者さんを増やしていきたいと考えています。

検査後のフォロー体制を重視

このプロジェクトのもう1つの大きな特徴は、検査後のフォロー体制にあります。

この2つの検査で膵がんが強く疑われる患者さんには、入院してより精密な検査を行います。その他の患者さんは、高リスク、中リスク、低リスクと3つのカテゴリーに分類します。そして高リスクの患者さんには4カ月、中リスクは6カ月、低リスクには1年毎にCT/MRIの検査を行い、5年間定期観察を行いながらフォローしていきます。そのために患者さんには、「わたしのカルテ」という小冊子を渡し、テーラーメイド的に受診・検査スケジュールを把握してもらうようにしています。

現在、市大病院では膵がんの手術ができる状態で見つかる患者さんは約3割ですが、このプロジェクトで5年後、10年後には4割、5割と上げていきたい。そして、10㎜以下の早期がんを1人でも多く見つけ、結果的に5年生存率を4、5、6割くらいに改善していきたいとの目標を掲げています。

そして、このプロジェクトを成功させ、他の政令指定都市のモデルとして普及することを期待して行っていきたいと思います。

このようなプロジェクトを行っていない地域の方でも、表2のような症状があれば、積極的に地域の中核施設を、是非受診して頂きたい。また、横浜の患者さんには、「YCU横浜早期膵癌診断プロジェクト」を知ってもらい、必要に応じ、次の行動に移して頂きたいと切に思っています。

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