多発性骨髄腫―治療を諦めず、前向きに続けるために
[2024.12.1] 取材・文●「がんサポート」編集部

2024年11月15日ジョンソン・エンド・ジョンソン主催の「多発性骨髄腫メディアセミナー」が都内で開催されました。
日本赤十字社医療センター血液内科副部長、塚田信弘さんが「多発性骨髄腫―治療を諦めず、前向きに続けるために」というテーマで講演。さらに慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授岸博幸さんが、「治療も、やりたいことも諦めない生き方」というテーマで患者の立場からの話がありました。
多発性骨髄腫は60歳以上、とくに男性が

血液は脊髄の造血幹細胞でつくられます。造血幹細胞は骨髄系幹細胞とリンパ系幹細胞に分かれ、リンパ系幹細胞のなかでもB細胞から形質細胞がつくられ、形質細胞が腫瘍化すれば、多発性骨髄腫を発症します。
塚田さんは、正常な形質細胞の働きについて、以下のように述べます。
「免疫が機能する上で抗体が重要な役割をします。抗体は形質細胞からつくられます。一方、多発性骨髄腫の場合、正常な抗体はつくられず、一種の免疫グロブリン(Mタンパク)を過剰につくるため、体に異常が生じます。多発性骨髄腫になると、骨が弱くなり、貧血を起こしやすく、さらに腎臓の働きが悪くなり、カルシウム値が高くなっていきます」
多発性骨髄腫は60歳以上、とくに男性に罹患率が高く、年齢別の割合で言えば、88.2%という高い値です。
塚田さんは、さらに「多発性骨髄腫とフレイル」の関係について次のように述べました。
「フレイルとは、年齢やその他の要因によって、筋力を含む心身の活力が低下した状態です。
多発性骨髄腫は高齢の方に多い疾患ですから、骨髄腫による貧血、骨折、腎機能障害などによってもフレイルという状態になっていきます。また、多発性骨髄腫の治療によってもフレイルの状態が悪化してしまうケースもありえます」
多発性骨髄腫の進行は比較的ゆっくりですが、完治が得られにくいという特徴があり、進行が遅いとはいえ、継続して治療を続けることが必要となります。そのため、長期間にわたって付き合わなければならない疾患です。65歳以下で、重篤な合併症、臓器障害のない患者さんに対しては、自家末梢血幹細胞移植併用大量メルファラン療法を行うことで長期の奏効が得られます。
「患者さんとお話しするときには、『治ります』とは言えませんが、『一緒に治しましょう』と説明するようにしています」と塚田さん。
そして、移植非適応の患者さんの診療上のポイントについて、以下の3点をあげました。
①自家移植を行わない場合でも*MRD(微小残存病変)陰性に到達すれば、長期の無再発期間が得られる可能性がある
②高齢の患者さんに対しては、薬剤の適切な用量調整が必要であり、有効かつ安全な投与量を患者さん毎に検討する必要がある
③感染症やその他の合併症で長期臥床を余儀なくされると、筋力低下や認知機能の低下につながる可能性があるため、可能な患者さんには早期の退院を促すことも重要
MRD陰性獲得により、Functional Cure(機能的治癒)と呼べる状態をもたらすことが可能な時代になっているとのことです。
プロテアソーム阻害薬、免疫調節薬、抗CD38モノクロナル抗体薬の3種類による治療歴のある患者さんに対し、BCMAという表面抗原を標的とした免疫を介した治療法(抗BCMA/CD3二重特異性抗体)が開発・承認され、従来とは異なったモダリティの治療として注目されています。また、CAR-T細胞療法についても説明がありました。
そして、前向きに治療を継続するための取り組みについて以下の4つをあげました。
1. ご自分の病気を知ること
2. 担当医との信頼関係を築くこと
3. 治療中に困ったことがあれば我慢せずに聞くこと
4. 治療以外の時間を有意義に過ごすことを考える
最後に塚田さんは、「多発性骨髄腫は、移植適応、非適応にかかわらず、初期治療をしっかり継続することで5年以上の無進行生存期間が期待できる時代になっています。一方で、ハイリスクの要素をもつ患者さんの治療成績の向上は大きな課題として残されています。そして、微小残存病変(MRD)陰性が継続できた患者さんの中で無治療経過観察が可能な患者さん(Functional Cure)を見いだすためには、今後もデータの蓄積が必要です」
そして、再発後にも有効な治療法があり、「治療も患者さんの人生も両立するためには、患者さんと医師との信頼関係の構築が重要です。多発性骨髄腫は、治癒が期待できる時代になっています」と結びました。
最後のパネルディスカッションで、岸さんは「治療による副作用はかなりきつい時期もありましたが、あきらめず継続していきました。今後、もう少し副作用の少ない薬剤の開発をお願いしたい」と述べ、現在も治療を継続しているが、「今でも高額医療を申請していて、医療費はおよそ月20万円ほどかかり、負担になっています」と話しました。
*MRD(微小残存病変)陰性状態=リンパ球10,000 個中のCLL細胞(異常なBリンパ球)が1個未満と定義