がんの検査・治療の急速な進展に制度が追いつかない

[2025.3.1] 取材・文●「がんサポート」編集部

2025年2月13日、第22回日本臨床腫瘍学会のプレスセミナーが都内で開催されました。本年の日本臨床腫瘍学会は神戸で、3月6日から3日間開催される予定です。会長は、徳島⼤学⼤学院医⻭薬学研究部消化器内科学分野教授の⾼⼭哲治さんで、プレスセミナーでは、第22回日本臨床腫瘍学会の主な内容とトピックスが紹介されました。

質の⾼いがん医療を実践

はじめに⽇本臨床腫瘍学会理事⻑で神⼾⼤学⼤学院医学研究科腫瘍・⾎液内科教授の南博信さんから、学会のミッション、組織、事業計画などについての話しがありました。

「本学会の演題数は、コロナ禍で少し減少したものの、2024年は海外からの演題も増加し、国内と合わせると1,258題になっています。さらに、がん薬物療法専門医数は、2006年の立ち上げから順調に増加し、2024年には1,758人となりました」

毎年、さまざまながん治療薬が発売されており、「現在、がんゲノム医療の普及とともに臓器横断的にがん薬物療法を修得した上で、患者さんの病態や社会背景にも配慮した質の⾼いがん医療を実践する方針になっています」

国際化を目指す日本臨床腫瘍学会

今回会長を務める⾼⼭哲治さんは、学術集会について以下のように述べました。

「今後のJSMOの目指す学術集会について、アジアの臨床腫瘍学領域のプラクティスを変えるような学術集会を⽬指します。注⽬される⼤規模臨床試験の最初の論文発表を誘致することで、世界からの参加者を増やし、国内のみならず、海外、とくにアジアから積極的に多くの演題が登録されるような学術集会にして、国際化を目指します」

そして、これまでのシンポジウム偏重から⼀般公募演題重視の学術集会にして、現地開催を中⼼にWEBと融合した参加者に優しい学術集会を⽬指すことや学術集会基本戦略の継続性とその実現などを上げました。

主な会長企画セッションやシンポジウムについての演題は下記の通りです。

●特別企画
・腫瘍循環器学の重要性と実態:⼩室班研究を踏まえて
●シンポジウム
・ctDNAに基づくがん治療
・ゲノム医療で推奨された保険適応外薬をどのように使うか︖
・全ゲノムシークエンスの臨床実装
・希少がんの遺伝性腫瘍
・⼤腸がんに対する新たな分⼦標的治療薬
・がん遺伝⼦パネル検査は1次治療開始前に実施するべきか︖
・激論!『条件付き承認制度』の活⽤はドラッグ・ロス対策に有⽤か!

がん遺伝⼦パネル検査の課題と今後の⽅向性

京都⼤学⼤学院医学研究科腫瘍内科学講座教授の武藤学さんは、「がん遺伝⼦パネル検査(ゲノム医療)の課題と今後の⽅向性」と題し、がん遺伝⼦パネル検査の普及について述べました。

「2019年6⽉の保険適⽤以来、5年半で約94,000⼈が検査を受けました。しかし、がん治療につながるのはそのうちのわずか10%以下。この検査の普及によって顕在化した課題としては、稀な変異に対し治験や臨床試験を実施するのは困難であり、わが国では治療ができないのが現状です。専⾨家によるエキスパートパネルで適応外薬剤の使⽤を提案しても、医療制度上使⽤は困難な問題もあります」

現在は標準治療終了後にがん遺伝⼦パネル検査を行うことになっているため、検査の結果をもとにエキスパートパネルで治療法が推奨されても、全⾝状態または臓器機能の低下で治療を受けられない患者さんが11~33%もいると報告されています。

そのため、検査の実施タイミングについて、国内外のガイドラインでは、効果の期待出来る薬剤を選択するために、抗がん薬治療の対象になれば早期に実施することが推奨されています。

今後のパネル検査について武藤さんは、「がん遺伝⼦パネル検査が普及していますが、まだまだ解決すべき課題が⼭積しています。本学術集会において、最新の情報をもとにそれらを理解し、改善できるよう皆さんで取り組んで⾏きましょう」と結びました。

次に、「AIを応⽤したがん研究・がん診療」について、岡⼭⼤学⼤学院医⻭薬学域 AI⼈材育成産学連携プロジェクト准教授の⾕岡真樹さんが、「プログラム医療機器の市場拡⼤は、医療従事者の負担軽減、医療機関等のコスト低減も含めた⾰新的価値の創出が可能である」と述べました。

ドラッグロス対策について

国⽴がん研究センター中央病院腫瘍内科科⻑の⽶盛勧さんは、「激論!『条件付き承認制度』の活⽤はドラッグ・ロス対策に有⽤か!」と題して、近年の新薬開発動向とドラッグロスに関した⽇本の状況について、「近年、オンコロジー(がん)分野でのドラッグロスの進⾏が著しい」と訴えました。

昨年の第21回学術集会で、『新規薬剤開発における新しいドラッグロス』と題して、新たなドラッグロス・ラグについて危機感を共有して、課題や取り組みについて話しましたが、その後の1年間で何が大きく変わったのかについて、「医薬品開発・薬事行政のリニューアルが実行されつつあるが、新時代へ突入している現状では、①過去の経験や過去の手法が必ずしも役立つとは言えない②新しいサイエンスや医薬品開発への対応力が求められる③規制当局やアカデミアや製薬企業の対話は重要になる」と訴えました。