主治医からもう治療法はないと言われて 肝細胞がん新たな治療を受けるための努力をしたい
治療法がなくてもあきらめない

これ以上、肝がんの治療法はないと告げられた格好になった内田さんは、他に何か治療法はないのか、知人を頼って東京慈恵医科大学第三病院消化器・肝臓内科准教授の木下晃吉さんのセカンドオピニオンを受けた。
それは木下さんが「がんサポート」2021年2月号の記事で紹介していた2020年11月に承認されたマルチキナーゼ阻害薬カボメティクス(一般名カボザンチニブ)の使用はできないか、またその他の治療法はないのかを訊ねるためだった。
しかし、セカンドオピニオンを受けた木下さんからも「肝臓の数値が悪く、いまの体の状態では別の抗がん薬治療に耐えられるものではない」と告げられたのだった。
頼りにしてきた主治医から「もう治療法はありません」と告げられ、セカンドオピニオンを受けた医師からも「治療は難しい」と言われた内田さんは今こう考えている。
「救急車で搬送された病院の医師から1年と言われた命が現在、4年半も生かしてもらっています。思えばありがたい話です。しかも今のところ全く痛みはありません。強いて言えば、少し疲れやすいかなといった程度です。
がんを抱えながらも活躍された囲碁の藤沢秀行さん、女優の樹木希林さんは全身にがんを抱えながらも活躍され、また何度も手術をしながら現在も活躍されている世界的建築家の安藤忠雄さんなどの存在を知れば、自分も体の動けるうちは仕事でもなんでもいいのでやっていきたい、と思っています」
そして、いままであまり感じることがなかった「死」についても考えるようになったという。
「がんに罹ったからというのではなく、自分が老齢化してきたこともあって、『死』というものを身近に感じるようにはなりました。それまではあまり『幸せ』とか『死』とかを考えることはありませんでしたが、それらのことを考えるようになりました」
そして最後にこう結んでくれた。
「私は東京医科歯科大学病院に4年半お世話になってきて、私の病状を一番ご存じなのはそこの主治医の先生です。その先生が私の肝臓の数値がもう少し良くなったら新しい治療をやりたいともおっしゃっているので、肝臓の値を良くする努力をしなければいけないな、というのがいまの私の正直な気持ちです。
食事もそうですが、肝臓の数値が改善するためには何がいいのかいろいろ調べているこころです。ただ、肝臓に何がいい、何が悪いと、そんなことばかり気にして生きてても仕方ないので、自分がおいしいと思うものは食べるようにしています。
そして夜、ぐっすり眠れ、朝スッキリ起き、排便がキチンとでき、食事がおいしく摂れる、それを毎日繰り返していければいいんじゃないかな、と思います。
近々、3人目の孫が生まれるの��、その顔を見るために生きていたいな、と思っています」
「治療法はもうない」と言われた内田さん。治らないなら治らないでもいま体は動けているこの状態をなるべく長く保つために、主治医からは「意味ない」と言われた丸山ワクチンも含め、自分に合った治療法を模索しているという。
現在、知り合いの中国人から紹介された漢方医の治療を受けて始めたところだ。
「3カ月経てば結果が出ると言われているので、楽しみにしています」
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