「起こる前のケア」と「早期発見」で、二重に予防! リンパ浮腫を起こさない予防策とセルフケア

監修:田沼明 静岡がんセンターリハビリテーション科部長
取材・文:池内加寿子
発行:2008年10月
更新:2013年8月

予防の第1歩は日常生活の注意から

ポイント1 スキンケア

1 肌の乾燥や角質化を防ぐ

皮膚が乾燥しているとバリア機能が衰えて、トラブルを招きやすく、リンパ浮腫発症のきっかけを作りやすいので、保湿を心がけましょう。
皮膚の乾燥予防として、香料や添加物の少ないクリームやワセリンなどを塗って、潤いを保ちます。ワセリンは、薬局で入手できます。
皮膚が角質化して硬くなっている場合は、尿素配合の軟膏を塗っておきます。

2 ケガ、虫刺され、日焼けに注意

皮膚の傷から細菌や真菌(カビの一種)が入ると感染を起こし、リンパ管炎や水虫などになりやすくなります。リンパ浮腫発症のきっかけになることがありますから、ケガや虫刺され、日焼けなどを起さないように注意します。
夏の外出や草取りなどのときは、防虫スプレーや日焼け止めクリームでガードするとよいでしょう。虫に刺されてしまったら、よく洗って清潔に保ちます。爪でかくと傷口から菌が入って感染の原因になりますから、かゆみ止め軟膏などを塗っておき、ひっかき傷をつくらないようにしましょう。

3 むくみのある腕は多毛症になりやすい

ムダ毛の処理をするときに、かみそりを使うと傷の原因になります。
また、むくみ始めると多毛になるものですが、こんな場合もかみそりは使わずに、皮膚の負担が軽い電気かみそりの使用をお勧めします。

ポイント2 衣類の選び方

1 ゆったりした衣類を選ぶ

からだを部分的に締め付け過ぎると、リンパ管の交通を妨げる原因になります。 ウエストなどがきつい衣類は避けましょう。

2 下着の肩ひもは太いものを

ブラジャーは、肩ひもが太くゆるめのものを選びましょう。

ポイント3 仕事や家事をするときは

1 重いものは小分けに

重いものを持つときは、左右両手に分けるか、小分けにして運びます。家族の手が借りられるなら、援助を求めましょう。

2 パソコン作業には肘枕を

長時間パソコンの操作をする場合は、肘枕などをして、腕に負担がかからないように気をつけます。

3 子どもを抱くときは

乳幼児を抱くときは、腕だけに荷重がかからないように、膝やクッションの上にのせて、体重を分散させるとよいでしょう。

4過労を避ける

からだが疲労すると、抵抗力、免疫力が低下して、細菌感染や炎症を起こしやすくなり、浮腫につながることもあります。家事や仕事、子育てをしながら、通院やセルフケアを続けるのは大変なもので���。疲れをためないように、なるべく睡眠と休息をとり、自分自身をいたわることも大切です。かぜなどの感染症にも注意してください。

ポイント4 食生活にも注意して

1 バランスのとれた食生活を

栄養のバランスに注意して、抵抗力の低下を防ぎましょう。

2 標準体重をキープ

肥満傾向があるとリンパ液の通行が妨げられやすくなります。標準体重を保つ(または近づける)ように心がけましょう。
標準体重は、身長(メートル)×身長(メートル)×22です。たとえば、身長160センチの人なら、1.6×1.6×22=56で、56キログラムです。

3 塩分は控えめに

塩分が多すぎると水分をひきつけ、むくみやすくなります。塩からいものは控えめにしましょう。

ポイント5 腕を上げる

1 心臓より高く

就寝時や休息時、テレビを観ているときなどは、手術した側の腕を心臓よりやや高く上げるようにします。重力を利用して、下のほうにたまった体液を心臓に戻りやすくして、循環を促す方法です。

2 10~15センチで十分

腕の挙上といっても、10~15センチ上げれば十分。枕やクッションにのせる程度でよいのです。

イラスト
手術した側の腕を心臓より上へ上げることがポイント

ポイント6 むくみを感じたら

1 発赤・炎症が起こったら

術側の腕や胸、背中などに、発赤、熱感、痛みなどが生じたら、リンパ管炎や蜂窩織炎など、感染症の懸念があります。感染をきっかけにリンパ浮腫を発症することもあります。感染症には抗生物質などによる治療が必要ですから、すみやかに受診してください。

写真:リハビリテーション室
リンパ浮腫の治療を行うリハビリテーション室

2 むくみなどの自覚症状を感じたら

リンパ浮腫の治療は、(1)スキンケア(前述)のほか、(2)リンパドレナージ(マッサージ)(3)圧迫(弾性包帯や弾性スリーブなどによる)(4)圧迫下での運動の4つが中心になります。リンパ浮腫が起こった場合は、専門家に相談して指導を受けましょう。
最近では、リンパ浮腫の専門外来も増えてきましたが、医療機関によって、「リハビリテーション科」が扱っているところ、「血管外科」が扱っているところなどまちまちです。主治医からリンパ浮腫に詳しい専門家を紹介してもらえれば1番よいでしょう。また、インターネットで「リンパ浮腫外来」などとキーワードとして検索することによって、最寄りの医療機関を調べるのもひとつの方法です。さらにリンパ浮腫に対応している治療院もありますので、そのようなところを探してもよいと思います。

(リンパマッサージについては、「悪化する前から行うのが大切。リンパ浮腫のセルフケア」をご参照ください)

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