放っておいても治らない。自宅でできるケアで予防する 悪化する前から行うのが大切。リンパ浮腫のセルフケア

文:佐藤佳代子 後藤学園付属施設リンパ浮腫研究所所長
発行:2008年4月
更新:2014年12月

スキンケア、マッサージなど「4本柱」のケアを行う

[セルフケアのコツ]

  • 「1日に朝晩2回、30分ずつ」テレビを見ながらスキンケア、お風呂の中でマッサージなど、「ながら」が長くつづくコツ

では、「早めに対応する」といっても、具体的に何をすればいいのでしょうか。リンパ浮腫のケアは、次の「4本柱」で行うのが基本となります。

1.スキンケア

2.医療用リンパドレナージ(マッサージ)

3.弾性包帯・弾性着衣などによる圧迫療法

4.圧迫した状態での運動療法

このうち、1の「スキンケア」は症状が出ている方にも、出ていない方にも行っていただきたいケアです。皮膚が乾燥すると細菌が侵入しやすく、炎症を起こすことがあります。そして、それらが原因でリンパ浮腫が発症し、重症化する可能性があります。皮膚がみずみずしく潤った状態で保たれるよう、日常的に行ってほしいと思います。

また、毎日のスキンケアにより、皮膚の変化に早めに気がつきやすくなります。リンパ浮腫のむくみの状態は日々変化しやすく、静脈の見え方や皮膚のやわらかさなどが皮膚状態を知るうえでサインの1つになります。

2の「医療用リンパドレナージ(マッサージ)」は、もみこむような強めのマッサージや指圧とはまったく違う、循環系のしくみに基づいた独特のマッサージ療法です。リンパ液の流れをよくすることや皮膚の硬さを改善することが目的となるため、指先で局所的に強く押したりせず、手のひらを密着させるようにやわらかく触れるようにします。

いわゆる「渋滞を解消するように」、段階的に、腕や脚のつけ根のほうから指先にかけて、つけ根のほうから順にリンパ液を上方に向けて誘導するように行うのも特徴です。たとえば、腕のリンパ浮腫の改善のためには、指先ではなく肩先のほうからマッサージをはじめ、手幅分の間隔で、患肢に触れながら指先のほうまで移動させます。この過程のなかで手掌をどの部位に置いていても、肩先の方向にリンパ液を流すようにすすめていきます。

医療用リンパドレナージ図解
腕のケア
脚のケア

個別対応の必要なリンパ浮腫まずは専門家に相談を

図:わきの下のリンパ節
『リンパ浮腫治療のセルフケア』
(佐藤佳代子著 文光堂刊)

ここでは、ご自宅でセルフケアができるよう、医療用��ンパドレナージを図解(腕のケア脚のケア)しましたが、実際に始める前に注意してほしいことがあります。それは、身体状態を把握しないで行うマッサージ、自己判断で症状に合わないマッサージなどをすることです。症状が改善するどころか、かえって悪化させてしまう可能性があります。ですので、事前にぜひ医師やセラピストに相談するようにしてください。

それは、3の「圧迫療法」と4の「圧迫した状態での運動療法」についても同様です。

圧迫療法とは、患肢を独特の締めつけ感のある包帯(弾性包帯)で巻いたり、弾性着衣(弾性スリーブ・ストッキング)を着用したりすることで、リンパ液の流れを改善し、とどこおらないようにするケアです。そして、こうした弾性包帯や弾性着衣を使用して、圧迫した状態で運動を行うことにより、さらにリンパ液の流れを改善させます。

このとき行う運動は、決して難しいものではなく、筋ポンプ作用を活かす動きが中心となります。後で筋肉痛を起こしたり、疲労したりするような運動を避け、日常生活のなかで応用できるような、手首を回したり、膝の屈伸運動などから始めましょう。

なお、セルフケアは「1日に朝晩2回、30分ずつ」が理想とされますが、時間や回数にこだわらず、テレビを見ながらスキンケア、お風呂で身体を洗うときにマッサージ手順を取り入れてみるなど、日常生活に組み入れるように行っていただくのが、長続きする方法の1つです。セルフケアをすすめていくなかで、症状に応じたケアができているかを定期的に確認したり、いつもとは違う異変を感じたときは、医師やセラピストに相談しましょう。

リンパ浮腫は診療報酬改定によりこの4月から、病院内での術前後のセルフケア指導が保険診療となり、弾性着衣も保険申請(療養費払い)の対象となります。今までは「医師に相談しても、なかなか理解してもらえない」といった訴えが少なくありませんでした。

今後は医療機関においても早期からのケアが徐々に普及されてくると思います。あきらめず、ご自分の状態に応じたケア方法を基に、取り組んでいただきたいと思います。

(構成/半沢裕子)

リンパ浮腫治療ができる医療機関

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