腫瘍内科医のひとりごと 77 「先生! 歩けたよ!」
2017年5月
ささき つねお 1945年山形県出身。青森県立中央病院、国立がんセンターを経て75年都立駒込病院化学療法科。現在、がん・感染症センター都立駒込病院名誉院長。著書に『がんを生きる』(講談社現代新書)など多数 「先生、今日はいい知らせがあります」F病院のS医師が、にこにこして私の診察室に来ました。「先月ご相談したTさん(65歳)が歩けるようになって、K病院を退院されるそうです。肺がんで脊椎(せきつい)...
腫瘍内科医のひとりごと
2017年5月
ささき つねお 1945年山形県出身。青森県立中央病院、国立がんセンターを経て75年都立駒込病院化学療法科。現在、がん・感染症センター都立駒込病院名誉院長。著書に『がんを生きる』(講談社現代新書)など多数 「先生、今日はいい知らせがあります」F病院のS医師が、にこにこして私の診察室に来ました。「先月ご相談したTさん(65歳)が歩けるようになって、K病院を退院されるそうです。肺がんで脊椎(せきつい)...
2017年4月
ささき つねお 1945年山形県出身。青森県立中央病院、国立がんセンターを経て75年都立駒込病院化学療法科。現在、がん・感染症センター都立駒込病院名誉院長。著書に『がんを生きる』(講談社現代新書)など多数 Aさん(85歳男性)は6年前に肝臓がんの手術を受け、その後ひとり暮らしでした。今回は食事が摂れなくなり、ある病院に入院しました。超音波の検査で肝臓に大きな腫瘍が見つかりましたが、本人は「それ以上...
2017年3月
ささき つねお 1945年山形県出身。青森県立中央病院、国立がんセンターを経て75年都立駒込病院化学療法科。現在、がん・感染症センター都立駒込病院名誉院長。著書に『がんを生きる』(講談社現代新書)など多数 Oさん(80歳男性、元肉屋さん)はお酒が飲めない体質でしたが、たばことコーラが大好きでした。若いころから、「一生懸命働いて、いっぱい食べて、短命でいい。食べて満腹になっているのが幸せだ」「俺は太...
2017年2月
ささき つねお 1945年山形県出身。青森県立中央病院、国立がんセンターを経て75年都立駒込病院化学療法科。現在、がん・感染症センター都立駒込病院名誉院長。著書に『がんを生きる』(講談社現代新書)など多数 Aさん(53歳男性)は、ある病院で内視鏡検査後、説明を受けました。「食道にがんがあります。小さい初期のようにみえます。しかし、食道がんの場合は、このように小さくても遠くに転移していることがありま...
2017年1月
ささき つねお 1945年山形県出身。青森県立中央病院、国立がんセンターを経て75年都立駒込病院化学療法科。現在、がん・感染症センター都立駒込病院名誉院長。著書に『がんを生きる』(講談社現代新書)など多数 Aさん(当時48歳/男性)はある鉄道会社に20年以上勤務し、健康で病院に行くことはありませんでした。1カ月ほど前から下痢、便秘、腹痛などの症状を繰り返し、B病院を受診し、検査の結果、大腸がんで肝...
2016年12月
ささき つねお 1945年山形県出身。青森県立中央病院、国立がんセンターを経て75年都立駒込病院化学療法科。現在、がん・感染症センター都立駒込病院名誉院長。著書に『がんを生きる』(講談社現代新書)など多数 Kさん(肺がん・73歳女性)はある大学病院で肺の手術を受けた1年半後、がんは両肺に再発しました。分子標的薬の内服で、がんの影は小さくなり、咳などの症状は消えて元気になりました。その頃のKさんから...
2016年11月
ささき つねお 1945年山形県出身。青森県立中央病院、国立がんセンターを経て75年都立駒込病院化学療法科。現在、がん・感染症センター都立駒込病院名誉院長。著書に『がんを生きる』(講談社現代新書)など多数 ある日、A病院の外来廊下でのことです。点滴架台を引いた入院患者さんと思われるパジャマ姿の白髪の男性が、私に向かって片手を振って、大きな声で「先生、まだ生きていますよ!」と叫びました。近づくとくし...
2016年10月
ささき つねお 1945年山形県出身。青森県立中央病院、国立がんセンターを経て75年都立駒込病院化学療法科。現在、がん・感染症センター都立駒込病院名誉院長。著書に『がんを生きる』(講談社現代新書)など多数 ここ数年、「治療法はもうありません」「あと3カ月の命です」と告げられたたくさんの患者さんが相談に来られました。とてもつらい気持ちでおられる患者さんは、奈落からどうやって這い上がれるのか。私は「宗...
2016年9月
ささき つねお 1945年山形県出身。青森県立中央病院、国立がんセンターを経て75年都立駒込病院化学療法科。現在、がん・感染症センター都立駒込病院名誉院長。著書に『がんを生きる』(講談社現代新書)など多数 ある介護老人施設で、ほとんど認知症状のみられない104歳になるRさん(女性)を看取りました。やや大柄な顔立ちで、白い牡丹のような方でした。2月末になって水分だけで、ほとんど食事を摂らなくなりまし...
2016年8月
ささき つねお 1945年山形県出身。青森県立中央病院、国立がんセンターを経て75年都立駒込病院化学療法科。現在、がん・感染症センター都立駒込病院名誉院長。著書に『がんを生きる』(講談社現代新書)など多数 Oさんは会社の部下から「仕事では鬼のように怖い」と言われ、一方ではとても面倒見がよく、慕われていた方でした。定年後は、関連会社に勤め、料理と日本酒、和服が趣味。高校野球では、母校の部の先輩として...